砂漠の出会い
初投稿なので文章もストーリーも問題だらけです。
主人公も終始おちゃらけています。
どうぞ生暖かい目で見守って下さい。
「ああ!クソッ!動け!このポンコツ!!」
そんな聞くにたえない罵声を浴びせながら煙を上げる鉄のカタマリを蹴り続ける男
もとい僕の名前はレイブ・レイバース、聖霊巡り達成のため旅をしているごく普通の男の子だ。
そして今、煙を上げながら僕に蹴りを入れられている鉄のカタマリの名前はジプシー
40年前に製造されたごく普通の二輪車…だったのだがついさっきエンジンがオシャカになり、僕の中での認識がごく普通の二輪車からごく普通の鉄のカタマリに改まった物体だ。
「しかしこれからどうしたものか…」
ジプシーを蹴り続けていたせいで折れたのではないかと思うほど痛む右のスネをさすりながら僕は言った。
「ああ… でも本当にどうすればいいんだ…」
我が愛しのジプシーがブッ壊れたことで困ったことができた。
ひとつは旅のペースが大幅にダウンすることだ。徒歩は乗り物に比べて圧倒的にスピードが遅い。
徒歩と筏だけで聖霊巡りを達成した人もいるが、達成までに20年近くかけていると聞く。
僕はジプシーが壊れるまでに12カ所を巡礼したから残りは88カ所もある。残りをすべて徒歩で回ろうとすると自分の半生を捧げなくてはならない。
僕には色々と夢がある。だから旅だけに半生を捧げるなんてまっぴらごめんだ。この旅は夢を達成するための足がかりなのだ。
ちなみに僕は旅行をするときは2泊3日で済ますのが望ましいと考えている。それ以上長くなると僕の場合、軽いホームシックにかかってしまうからだ。つまり僕は今、尋常でないほどの懐郷病と戦いながら旅をしていることになる。(まあこれは冗談だが)
だがこの問題はどこかで新しい乗り物を買えば解決する。それほど深く考えることでもない。
だがしかし二つ目の問題は非常に重大なことだ。
二つ目の問題それは…
僕が今いる場所が世界一広い砂漠のド真ん中と言うことだ
正直これは相当マズイ。はっきり言って生命の危機だ。
世界一広い砂漠こと、ここビゴヅッツス砂漠は世界一を誇る広さと猛烈な暑さ、そして発音のしづらさでその名を知られる乾燥地帯だ。ひとたび迷えばあっという間に干物になってしまう、というのは近くの町の住人Aの談だ。
僕はこの住人Aの発言を正直あまり気にかけていなかった。
『あー今ビゴヅッツツって噛んだな』程度にしか考えていなかった。
しかし今思えばもっと真剣に聞いていればこんな事にはならなかったはずだ。なぜならその住人Aはバイク店をやっていたからだ。住人Aの勧め通りに新しいバイクを買っていれば僕は無事に砂漠を越えられたはずだったのだ。
そして住人Aはこんなことも言っていた
「ビゴヅッツス砂漠にオアシスは無い」
ちなみに僕の水筒の中身も無い。ついさっき飲み干してしまった。
そう、僕は今 完全に詰んでいる。この状態では死なない方がおかしい。そんな感じだ。
ああ…生まれてきてから今までの出来事が走馬灯のように…
軍人の家に生まれ、厳しい父の元に育ち、世界一の剣士を志し、聖霊巡りの旅に出て、そしてひとり寂しく砂漠で干からびて…
ピシピシピシピシッ
…とせっかく感傷に浸っているところなのに何かが顔に当たる感触がした。
「って砂嵐じゃん!!」
なんと走馬灯を見ている間に巨大な砂嵐が目前までせまっていた。干からびるより先に砂嵐に巻き込まれて死ぬことになるのか。まあ干からびるよりは苦しまずに済みそうだが。
「レイブ・レイバース 砂漠に死す、か…」
「なーにカッコつけちゃってんのよ、そこのあんた」
え?誰か来た?
「ほら、ボーっとしてたら死ぬわよ。早く乗って。」
「え?あ?はい」
僕は言われるがまま車とおぼしき物に乗り込んだ。これで何とか砂嵐で死ぬということは無くなったようだ。
「それじゃ飛ぶわよ。フロル、ルーク、浮遊石の準備して。」
「あいよー」
「えーまた飛ぶのー!?」
ん?なんか飛ぶとか浮遊石とか聞こえるんだけど…
「ほら、あんた何かに掴まってないと危ないわよ。」
ダメだ状況がまったく飲み込めない。だが他にどうすることも出来ないのでとりあえずさっきから命令しかしていない女の子の足に掴まってみる。
「っ! ふざけんな離れろ!!」
女の子はそう言いながら拳銃を眉間に突きつけてきた。
「撃ち殺す!!」
「うわっ!ごめんごめん!冗談だから冗談!」
ヤバイ、若気の至りでまたしても命の危機に晒されている。ていうか会って数分の人に殺す宣言されてしまった。
「はいはいお二人さんそれくらいにして。テイクオフするよー。ルークも覚悟決めて」
「うう…でも怖いものは怖いよぉ…」
「ほら、テイクオフとか言ってるから!早く何かに掴まらないと!」
「私の足以外でね。2度目は即射殺よ。わかったわね」
ここまで言われたら逆らいようがない。とりあえず近くにあった棒に掴まっておくとしよう。
「それではー ニーズヘッグ号テイクオーフ!」
運転席に座っている方の女の子の掛け声と同時に車は砂嵐に飲まれ強烈な風で舞いあげられた…
ってこれ落ちたら死ぬんじゃないか?さっきから水が無くなったり砂嵐に飲まれそうになったり初対面の女の子に射殺されそうになったりと死にそうな目にしかあっていない。もしかして神様は僕に死ねといっているのだろうか。
「さてさて、いい感じの高度まで上がりましたのでえ、お待ちかねの浮遊石はつどー!」
運転席の女の子がこちらの気も知らずハイテンションで掛け声をかける。
するとさっきまであった無重力感が消え、代わりに全身が不思議な感覚に包まれた。
「なにこれ…なにこの感覚…」
「あんた、浮遊魔法は初めてなの?確かにこの感覚は最初の内は不思議なものよね。窓を見てみなさい。」
逆らうと撃ち殺されそうだからとりあえず命令に従って窓を覗いてみる。すると…
「うわ…ほんとに飛んでるよ…すげぇ…」
眼下にはただただ広い砂漠が広がっていた。そして車の下を大きな砂嵐が通り過ていっている。空には無数の翼竜が飛び交い、地平線の遙か彼方には小さくキャラバンの姿が見える。
茶色だらけで色気がないと思っていた砂漠がこんなにも幻想的に見えるなんて…
この景色を一生忘れないだろう。僕は女の子のフトモモを見ながらそう思った。
ジャキ…
「うわあ!ごめんごめん!もう見ないから殺さないで!」
こうして僕と謎の一行を乗せた車は空を飛びビゴヅッツス砂漠を越えたのだった。
「砂漠も越えたし、もうあんたとはお別れね」
女の子は僕を冷たい視線で見ながら言った。どうやらフトモモを見つめたせいで完全に嫌われたらしい。だが僕は仲間になることを諦めない。移動手段とフトモモのために。
「せめて君たちの名前くらい教えてくれないかな。一応命の恩人なわけだし。」
「………私はリズ・メイネル。そっちのバカっぽいのはフロル・ケイニス、メガネかけてビクついてる方は
ルーク・フォングレイよ」
まさか本当に教えてくれるなんて思わなかった。僕が思ってるほど嫌われてないって事かな?
「私たちの名前を知ったからには死んでもらうしかないわね。」
普通に嫌われていた。
「あたしたちはー3人で聖霊巡りの旅をしてるんだー。」
「う うん。12カ所目まで回ったんだ…」
「ちょっと!あんた達何でこんな奴に教えちゃうのよ!」
! まさか目的も達成率も一緒だとは…
もしかしたらこれは運命かもしれないな。ということでアタックをかけてみよう。
「実は僕も聖霊巡りの最中で君たちと同じで12カ所目まで回ったんだ。」
「おーそーなのかー。じゃーあたし達と仲間だなー」
「そう。だから僕も君たちの仲間にして欲しいなーと思って。バイク壊れちゃったし。」
それにもっとリズちゃんのフトモモを見ておきたいし。
「ね ねえ、旅は人数が多い方がいいし仲間にしない…?」
「イヤよ!こんな変態を仲間にするなんて!」
…やはりリズちゃんの目にはそう映っていたのか。
「リズーでもこいつ見たところ剣術使えそうだぞー対魔物要員としてじゃダメかー?」
フロルちゃんナイスフォローだ!あともう一押しすればいけるはずだ。
「もし魔物が襲ってきたら僕が全部相手するからさ。だから仲間にしてくれないかな?」
「なあリズー」
「リズちゃん…」
「わかったわよ。仕方ないわね。仲間にしてあげるわ。」
「! ありがとう!これで移動手段が確保できた!」
「ただし」
やはり条件付きか。まあそこら辺のことは想定内だ。ドンと来い!
「あらゆる肉体労働はあなたにやってもらうわ。当然ニーズヘッグ号の運転もね。」
ぐ…なかなかきつい条件だ… だが体力にはそこそこ自身がある。まだ何とかなるレベルだ。
「そしてもう一つ。絶対に私に触れないこと。一度でも勝手に触れたら即射殺。わかったわね。」
ぐはあ!その条件を飲んだら仲間になる意義のほとんどを失ってしまうじゃないか!
だが…背に腹は代えられない…!
「わかったよ。その条件で仲間になろう。…グス」
「それじゃあ早速食べられそうな魔物を獲ってきなさい。最低でも5匹獲ってこないと射殺するわよ。」
こうして少しおかしな僕と仲間の旅が始まったのだった…
続く、のか?