ユキの帰還。
此処は五人の男達が君臨する銀河系の主惑星。
育成の真似事を模索しつつ住人達と暮らすアットホームな組織である。代表者はF·テルカズ·キド。末尾はとある惑星の名残である。そして、作品全ての元締め的役割を押し付けられた苦労性の大黒柱でもある。
ーーー人生という名に関わる一つの旅をして、僕はまた我が家と定めた銀河系に戻ってきた。ーーー
関わった案件の内容は、外法と言う呪術を使う一族の家系が世界を意のままに操ろうと支配を目論んだ件。僕の役割は本家筋の末端に生まれた少年の入れ替わり…所謂【転移流転】的なものである。転生でないのは本人の意思かそうでないかで分かれるところである。赤ん坊からの再スタートではないという理由からもある。
ダイブしてみれば案件内容の危険度はかなり高く、新米が向かうには難易度が高かった。当主に因って掛けられた呪詛は余りにも重く、僕の役割は極めて重大な役割を担っていた。年齢有限種の齢十七年の縛りの中で、手術に因って埋め込まれた外法の封印、後……少年の魂の保護。外法は解除したが、少年の魂の保護は出来なかった。一族の怨嗟に絡め取られすぎたのだ。
その一族の目的は、僕の死に因って発動する外法。それを皮切りに政治・経済の闇に根を張り、国どころか惑星自体をも手中に収めんと画策、果ては全てのモノを乗っ取る算段だった。その行いに惑星の主神も手を焼いた為、Fに直々の依頼と相成ったのだ。
【・・・勝手な事を・・・人間等に要らぬ権限を与えるからだ。崩壊後の再構築する温情ぐらいは与えんでもないが、それ以上の便宜は図れんな。】バッサリ切られて泣き出したオジイチャンの泣き落としに等々折れたテル兄。僕はその時暇であったため志願した。ハンデ付きだったが見事、否、無難に…危なかったが何とかその世界の運命を揺らし、バトンをとある少年に託し仕事を終了させたのである。まぁ、初任務を受けたいだけで突っ走っただけの為、反省は今後に生かそうと考えている。
僕らの銀河系の死生観は大体人間と同じ。産声上げて、両親の祝福を受けて、幼児期と呼ばれる期間で自らの生きる側を決められる。惑星に直接関与する聖命使か、その補助を担う聖護使かだ。後者は個体同士の相性に比例するが、概ね特殊能力に秀でた人材に選ぶ権利が与えられている。【Lifeline,Voice(ライフバンク,ボイス)】・・・聖命使が役割の運命に抗えずに共に自滅する緊急時を察知した聖護使が命綱の能力で聖命使を呼び戻す。故に、別名を世話係とも言われていた。
小馬鹿にするその物言いは長い長い銀河歴史に語り継がれ、今では聖護使になりたい存在が半減している。それでも脳内にLifeline,Voice(ライフバンク,ボイス)、生命を繋ぐ声を行使できるのは彼等だけなので胸を張っていいと僕は思うのだ。世話係は任務時の事のみで私生活まで共にする必要はないが、何故か大半は男女でそのまま夫婦になる傾向にある。僕の遠い過去の両親もバディからの結婚である。此処には死の概念がない。一度誕生して死ぬと個体が眠りにつき、眠る間に傷をA様が構築した医療術で彼の部下達が癒やす。銀河系は幾つもあり僕らの住む星はその一つ。テル兄が支配するギャラクシー·キャッスルなので、この銀河系に生まれた存在は俗に言う不老不死に近い。青年期で一度固定されて両親が死の眠りに着いた後、身体が更に成長して女性なら子供を産める状態になる。男性の場合はお見合いしろと命じられる。
だからだろうか?相棒同士が何となしにくっつく傾向になるのだ。(生命の相性が良いから結婚前提になるんだよね。)何にせよ、僕の両親は未だ健在なのでこの話は保留にしたい。男同士、女同士も稀にあるが、その辺りの自由恋愛も認められているみたい。そういう時は医療術で遺伝子融合をするそうだけど、それには地道に稼いだ依頼ポイントが必要になる。そのポイントは生まれた日にA様から与えられた十字架の刻印に付与されて、その刻印がこの星の住人である証しとなる。所謂住民証的なもの。
【鎖十字(チェイン•クロイツ)】…別の銀河連で通過やポイントと言われる存在の総称で、この世界にはそれらの概念は存在しない。死さえもそのポイントで賄えるので、戦死したり自殺して眠りについた彼等の命の復活も可能だ。結果、復讐や欲深さが薄れ代わりに積極的に仕事を熟す意欲にプラスされる。この銀河系では命すらも対価の報酬なのだ。まぁ殆どがテル兄達を崇拝するアブナイ人達なので、使えることそのモノがご褒美なので裏切りとかはあまりない。
総合受付カウンターに向かった僕は、職員のお姉さんに尋ねた。「・・・お姉さん、見ない顔だね?新人?」「はい、この春から配属されましたユリと申します。所でご用事は何でしょうか?」僕は利き腕の手の甲を差し出した。「依頼熟したよ。結果の確認とポイントを付与してほしいんだけど。」そう言うと女性が手の甲に触れて宙に浮きでた依頼任務と報告書の内容を確認する。
「•••なるほど、辺境銀河系第三惑星の依頼ですね・・・確認しました。1000チェインの付与をしますね。」「ありがとう♪」ポイントの増減基準は【宿主や周囲の存在達と友好を結び円滑に解決に導けたか?】に焦点がおかれ、次に関わった銀河系の新旧も査定の一つになる。辺境の星は依頼ポイントが低いのだ。
今回のポイントの三割が銀河系への移動費で残りは依頼内容の報告結果である。10チェインで一番安い缶ジュースや栄養補給食と交換ができ、日用品は20前後、50でまともな安い食事が可能である。まぁ一族全員顔見知りだし、死生観から考えても飛び出て悪い事を企む存在は皆無に近い。家も水や電気的な物も何もかも支給されているし、本来ならば食事も大食堂というテル兄の館で食べればタダなのだが門限があり、過ぎると食堂が仕舞う為にポイントで購入するしかない。コンビニ的な扱いと考えて良いのかもしれない。
この銀河系に落ち延びる存在は稀でありそういう移民が定着するのも稀である。「・・・此処に君臨する五人の兄さん達が移民否定派だからね。」僕の相棒の聖護使が受け入れられた数少ない移民の一人。昔、僕の両親が任務帰りに連れてきた魂であり、移民は一度死なねばこの惑星に辿り着くことが出来ない。
しかし、依頼先の銀河惑星で死んだ魂を連れ帰る事例もある。そういう存在は定着して相方が死んだ存在や新人と運命的な出会いをする事がある。つまり、そういう少数が居着くのである。初回大サービスで無料復活とA様の洗礼を受けて永久機関不老の生身の肉体を得られる。人生に疲れた人、騙され虐げられた人…誰一人良い思いをしての移民はないが、この世界で生きて組んだ相手と幸せになるから人生はそうそう捨てたものではないのかもしれない。
ーーー僕も、両親が死の眠りについたあと兄貴代わりとして僕を育ててくれた相棒がいる。「・・・さぁ、ジュウゴのいる我が家に帰ろうか♪」僕は久々の任務で得たポイントで購入した食材を手に我が家に向かうのだった。(テル兄への挨拶は明日にしよう…きっと叱られるからジュウゴも連れていこう♪)ーーー
少年が生まれた日、世界は白い雪に包まれていた。生後すぐに両親が他界、孤独な赤ん坊を抱きしめ男は誓う。彼らが目覚めるまでの間、赤ん坊を護り導くことを…一人の聖護使の誕生の瞬間でもあった。




