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死への恐怖

たくさんの方に読んでいただけて光栄です。至らない点も多々あると思いますので、感想やご指摘お待ちしております。 荒屋上総

目の前に広がっていた光景は自分が地獄に堕ちたのではないかと思うほどのものだった。

修理中の艦艇があったドッグ、新型艦の建造途中だったドッグ、さっきまで自分たちの居た将校や技術士官の働く庁舎、それぞれ三か所からもくもくとどす黒い煙の柱が上がっている。なんなんだ何が起こったんだ。

「キャ――――」

女子の悲鳴で何処かに行っていた自分の思考が体に戻ってくる。戻ってきたばかりの思考を全力で巡らせる。“何が起こったのか”それはあの嫌な音で大方予想はつく。

「爆弾だ」

自分で出した結論に自分で驚く。

「爆弾だって?そんなことがあり得るのか?」

そんな言葉が集団の中から飛ぶ。自分だって信じられないと思う。だが目の前の光景がこの爆弾という結論を証明している。これ以上ないほどに・・・

「ボーっとしてんな!!逃げるぞ」

一人の兵士の方から怒号が飛ぶ。そうだこんなことをしている場合ではない。逃げなければ。そう思い足を一歩前に出す、しかし

ガッ

「うわ」

何かに足を取られた。当たり前だこんなに大勢が一気に動き出したんだから。そのまま抗えず地面に転がる。そのうえ皆逃げるのに必死で助けてくれないどころか、蹴り飛ばし踏んずけてくる。

「ッツ」

言葉にならない痛みが全身を駆け巡る。周りの人間が全員居なくなっても体の痛みのせいで上手く立てない。

「大洋!!」

凛が自分のことを呼んでいる。そうだ立たなければ殺される。恐怖がひどく痛む体をたたき起こす。きっと苦悶に満ちた表情だろう。だが立てた。このまま走るんだ。そう決意を固め、何とか一歩を踏み出す。だが・・・

ヴュウ―――――

またあの音だ。一気に全身が強張り固くなる。咄嗟に身をかがめ頭を守る。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。ただその言葉だけ頭の中を駆け巡る。

ドオォ―――――ン

さっきよりもさらに強い爆音と爆風が自分の目の前で炸裂した。その爆風の前では体重

はあまりにも無力だった。吹き飛ばされ自分の体が一瞬宙を舞ったのが分かった。



ドサッゴロゴロ

幸いそこまで吹き飛ばされず大きなけがもなさそうだ。何とかもう一度体を起こす。

目の前を見ると道に爆弾によってっできたであろうクレーターが残っていた。どうやら次は大和を狙って大きく外したらしい。とにかく怖くて仕方がない本来は皆を追った方がいいのだろうだが一度目の前に爆弾を落とされた方にもう一度走ることはできなかった。体が勝手にクレーターに対して背を向け走り出した。とはいってもこっちの方向に逃げれば助かるという保証も在りはしない。とにかく逃げ込める場所。防空壕のような場所があれば・・・

しばらく走ると本来は閉じられているであろう正方形の少し大きめなふたが開き地下通路のようなものが見えていた。普段ならこんなところに入るなんて選択は絶対にしなかったであろうが爆弾に対する恐怖はそんないつもの自分を完璧に消し飛ばしていた。

コンコンコンコン

降りてみるとさほど深い通路ではなかった。けれども中は真っ暗で右に向かってかなり長く続いているようだった。この通路は何かしらの施設につながっているはず、そこまでいけば逃げ切れるかもしれない。そう思い、歩き始めた。

しばらくして目の前に光が見え、徐々に周囲も明るくなってきた。そのままその光に向かって走る。

ダッダッダッダッダッダッダッダ

気持ちが逸る。早く安心を得たいと。死にたくないと。歩いている間にも何度も爆音が響いた。そのたびに心が鑢に削られたみたいに摩耗していった。こんな思いはもうしたくない。そんなことを思いながら歩いていると階段が見えてきた

「やった外だ」

そう言いながら階段を上る。初めの方はいきなりの強い光に目が慣れず視界が真っ白にとんだ。しかし時期になれる。そう思って何度か瞬きをすると周囲がよくわかるようになる。そうしてこの目に初めて映ったのは、暗い灰色の壁だった

「あれ?どうしたんだ?ここは外じゃあ・・・」

そう言って上下左右を見渡すとこれがただの壁ではないことが分かった。上の方に明らかに普通の壁にはついていないような円筒状のものが見えたからだ。そうこの壁だと思っていたものは一隻の大きな戦艦だった。

「大きい。大和と比べても見劣りしない」

今までの恐怖が余りの驚きにすべて消し飛んでしまった。日本はまたこんな艦を造っていたのか。だがおかしいこんなに目立つ船は世間からも注目されるはずだ。なのに少なくとも自分はこんな艦があるのだという報道や記事を見たためしがない。何か理由があるのだろうか・・・



ドオォォォン

そんなことを考えていると再び爆弾の轟音が響いた。この艦を見て打ち消されていた恐怖が再び湧き上がってくる。しかも今度のはまた近いようで地面が揺れた。再びの恐怖に自分は思考を放棄して地べたにうずくまる。怖い怖い怖い死にたくない!!そんな自身を丸ごと包み込むそうな恐怖の中で、ある一つの考えが浮かぶ。この艦の中に隠れればいいんじゃないか?本来なら絶対にしてはいけない少なくともここにいる時点でお縄にかかって豚箱行だ。でも一度浮かんだ安心への道を死の恐怖を前に手放すことなどできなかった。

周囲を見渡すと甲板へ繋がっている階段を見つけた。急いでその階段を駆け上がり、甲板へと上がるそんな時にどこからか声が響く

「誰だ君は。今すぐその艦から離れなさい。危険だ!!」

そんな声と同時にその艦の機銃が一斉にこちらを向いた。

「その船乙女は誰も受け入れない。今までも何人もの将校が乗り込もうとしたが拒絶され、酷いときには機銃をぶっ放された。そいつは誰の命令も聞かん!!」

まずい本当にまずいそんなにやばい艦だったなんて。そこでさっきの疑問にも答えが出る。こいつが誰にも知られていない理由。それは単純に誰もこいつを動かせないからだ。

行く先々で毎回死の恐怖にぶつかる。なんで俺の人生はいつもこんなに近くに死があるんだ!!俺はただ、もう死ぬ恐怖を味わいたくないし、誰の死も見たくないのに・・・

「頼む!!俺を乗せてくれ!!俺はまだ死にたくない。俺は・・・俺はそれ以上に人が死ぬのを見たくない!!」

なぜかそんな言葉を叫ぶ。逃げればいいのに、なぜかそれができなかった。足が動かなかった。いや、違う。ここで逃げたらだめだと思った。こんなにも死が眼前に迫っているというのに、こんなにも恐ろしいのに、俺は人のために何かしたいと思った。そうか、最初っから俺のやりたかったことは・・・

プシューッガン

何か音がしたと思ったら艦橋の横の扉が開いていた。気が付けば自分の方を向いている機銃はもう一門もなかった。乗ってもいいということなのだろうか?いいということなのだろう。そう自分の中でそう結論付けて急いでその扉の中へと入る。そうすると真っ暗な艦内に明かりが一部ついた。まるでこっちだといわんばかりに・・・

導かれるのに従って下の方へと降りていくそうするとやがて一つの操縦席であろうものを見つけた。というかそれ以外には何もなかった。二つの操縦桿のついたかなり近未来的なものだった。

「ふう」

息を整える。おそらくこの後起こるであろう戦闘に対してわずかな時間ながらか迷いが生まれる。だがしたいこと、やるべきことは決まっている。そう覚悟を決めて俺は操縦席に乗り込んだ。



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