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始まりの戦火

一九四一年一二月八日大日本帝国が米国に対し宣戦布告を行ったことにより始まった太平洋戦争は予想以上の泥沼化を見せ、日米ともに多くの損失を出した。

この状況を重く見た日米両政府は一九四六年八月十四日ハワイ島にて行われた日米休戦協定によって五年にも及んだ戦争は一旦の終結を迎えたが、日米の勢力圏境界ではなおも睨み合いが続いた。

だが、その後本格的に戦闘が行われることなく一九五〇年にソ連立会いの下両国で

モスクワ講和条約が結ばれ日米間の戦争は完全に終結したかに思われた。

しかし二〇一〇年に入り再び力を取り戻した米国が日本国に宣戦布告、両国は再びの戦争状態に入った・・・・・・と

「はあぁ、やっぱり歴史の勉強は嫌だな」

「でも受験では必須科目だし早めから勉強しておかないと」

「まあそうなんだけどさ」

とはいってもやっぱり歴史は面倒くさい。昔の出来事から教訓を得ることが大切なのもよくわかる。すごくよくわかるでも、それ以上に重要なことがある気がしてならないのだ。

ふと窓の外を見る今日はあいにくの雨こんな天気では勉強に対するやる気も下がるというものだ。

「お茶でも飲むか」

「じゃあ私も」

「へいへい」

そう言って席を立ち台所へ向かう。

熱めにお湯を沸かしつつ茶葉を準備する。この国はさっきの歴史の教科書の通り米国と戦争状態にある。とは言いつつも今現在この国の国民は今までと変わらない平和な生活を維持していた。前線では兵隊さん達が血を流して戦っているだろうが、兵士ではない一介の学生である自分には関係のない話である。

ピュゥゥゥゥゥ

そんなことを考えているうちにお湯が沸いたらしい。薬缶から沸きたてのお湯を茶葉の入った急須にそそぐ。少しおいてから二つの湯飲みにお茶を入れる。

ガチャ

「ありがとう」

「どういたしまして」

彼女、幼馴染の海瀬凛うみせりんにお茶を出して自分も座って湯呑を取りお茶をすする。

やはりお茶はおいしい。体が温まって心も緩んでくる。

「そういえば大洋は来週の工廠見学の支度した?」

「あっやべ」

そういえばそんなのあった気がしたなと思いつつ、その支度が何も済んでいないことに気が付く。一気に体が冷めた気がした。


凛との勉強会から一週間がたった。

あの後何とか見学への支度を整えて今からバスに乗り込むところである。大半の生徒はこの行事に目を輝かせ、各々がこれから行く場所への興奮を口にしている。

「はぁ」

「どうしたの?あまり元気がなさそうだけど?」

「元気がないんじゃなくて、一向に興味がわかないんだよ」

「どうして?みんなもすごくたのしみにしているようだよ?」

どうして、と聞かれても困る。自分が今回の行事に興味がないのはただ単に自分に目指すものがないからである。目指すものに近しいものであればおのずと興味がわくものだが生憎自分にはそれがない。この学校の生徒というのは基本的に誰もが軍関係の仕事に就き、何年かに一度は軍の出世街道にのる人間も出るという県でも指折りの学校である。ただ自分はそういったことに興味はない。進路に困らないという利点を見てここを選んだからだ

「ただ気分が乗ってこないだけだよ。」

凛にはそう言ってごまかしておく。でも少し凛に本心を隠すのは好きじゃない。この子の性格がとても明るいからだろうか、だましているような気がしてすこしきまずくなってしまう。

何はともあれとりあえずバスに乗り込む。窓側の席だから外の景色がよく見える。

自分は移動中に外を眺めながらこれからの自分たちの目的地を頭の中でおさらいする。自分たちがこれから向かうのは広島にある呉海軍工廠である。日米の最初の戦争時、この工廠の建造した“大和型戦艦”が米国相手に多大な戦果を残したためにこの工廠は艦の建造を志すものならば憧れの地だ。さらには伝説の一番艦大和が記念艦として保存されているということもあってみんな浮足立っている。現に今の自分の周りも基本的にその話しか指定なし。そろそろ大和という名を聞き飽きたと思っていると、段々睡魔が襲ってきた。まあ広島までまだあるし少し位寝てもいいだろうと自分は睡魔に身をゆだねた。


ガタン

眠ってからどの位たっただろう。バスの揺れで自分は目を覚ました。寝ぼけていてあまり周囲の状況が良くわからないが取り敢えず目的地に着いたらしい。周りの人間がそそくさと荷物をまとめて席を立つのを見て、自分も荷物をまとめる一番後にバスから降りると。

引率の教師が生徒を並べていた。自分、海上大洋うみがみたいようは列の前の方なので少し急ぐ。

自分が列に並び終わるとほかの生徒も大方並び終わったらしく、人数確認の後、教師引率の元大会議室に移動し、担当の方に工廠の歴史などを聞く。

「皆さん知っての通り、我が国が米国との国力の差に拮抗することができたのは、ここ呉海軍工廠をはじめとした造船所の高い造船技術と、何よりも“船乙女”《ふなおとめ》の存在が大きいのです。」

担当の方が慣れている様子で淡々と歴史の説明を始める。

船乙女、それは一種の神のような存在、古来より日本で信じられてきた万物に神が宿るという考えを体現するもの。彼女たちは船が完成したその時にはそこにいた。そして自身の気に入った者のいうことしか聞かない。だが気に入られていなくとも船は動かせる。ただし、そんな状態でまともな戦闘ができるなんてことはない。そして船乙女は日本に限らず世界各国の船にも存在するしかしその大半は自身の信じる宗教を否定できず、まやかしだと言って彼女らを拒絶した。それは米国も変わらない。存在を受け入れ共存する日本と、まやかしと言って拒絶する米国、海上の戦闘においてどちらが優位かは自明の理である。

説明が終わり、自分たちは外に出ていた。するとすぐに見えてくるものがある。戦艦大和である。

「うわーすごい。」

「大きいな」

生徒たちが次々に声を上げる。これには“興味がない”なんて言っていた自分も息をのむ。

あまりにも大きく無骨。そしてその体躯が纏う威厳。まさに最強と呼ぶにふさわしいものだ。しかし、竣工から半世紀以上過ぎているというのにこの艦は未だに次の戦場に備えているようかのように感じられるのは気のせいだろうか・・・

「何か風切り音がしないか?」

ヒュー・・・

確かに聞こえる何だ?

「風が吹く音じゃないか?」

ヴュウ―――――

いや違うどんどん大きくなっているこれは何かがものすごい速さで落ちてきている音だ!

ドオォォォン

直後とんでもない轟音が響き爆風が吹き抜けた。

一体何が起こったんだ。立っているのがやっとで周りの状況が良くわからない。爆風が止んだ後で目を開け、辺りを見た自分はその光景にただ茫然と立ち尽くすしかなかった。


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