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グランプリ

作者: 水守中也

 いよいよあす、お笑い界の頂点を決めるグランプリが開催される。


 別にこれが最後というわけじゃない。このグランプリが終わっても、僕らはお笑い界でまた競い合う。けれど、このグランプリは一生に一度しか出られない。名誉ある大会なんだ。


 僕は自分で言うのもなんだが「お笑い界の華麗なる一族」と呼ばれる、この世界ではそこそこ名の知れた軍団に所属し、デビュー時から注目されていた。

 そして僕は新人大会から、負けなしで優勝し続けて、若手ナンバー1を決める大会でも優勝した。

 実は華麗なる一族と呼ばれていても、いわゆる引き立て役ばかりで、主役を張れる先輩たちは今までいなかったんだ。だから僕の優勝は、マスコミに大いに取り上げられ、もてはやされた。


 僕のお笑い人生は、成功を約束されたかに思われた。


 けれど僕は自分でも気付かないうちに驕っていたのかもしれない。気付くと同期のライバルに追いつかれていた。


 今となっては懐かしい新人大会の日。前述の通り、僕が優勝したんだけど、実は前評判が高かったのは、準優勝した勝利かつとしという、主人公のような名前をしたやつの方だった。

 彼は僕に負けたのが悔しかったのだろう。その後、相方のどんなボケにも対応して、実力をどんどん付けて行ったんだ。その後は出る大会負けなしで勝ち進んで、気づけば、実力も人気も僕より上になっていた。

 この前の大きな大会では、直前に優秀な相方を事故で欠いて、急きょ別の相方と組んだというのに、僕を圧倒して優勝したんだ。


 ――そう、僕は負けたんだ。

 その大会だけじゃない。その一個前の大会でも優勝できなかった。自分でもわかっている。ネタが浮かばないんだ。若い時に比べ、どんどん力が落ちてきているような、そんな錯覚さえ、覚えてしまう。


 そんなスランプの中、明日日本一を決めるグランプリが、関東で行われる。


 いわゆるお笑い界の本場といわれる関西だけじゃなく、関東にもすごいやつがいる。有名大手プロダクションに所属しているやつ。あのマラドーナをネタにしたサッカー漫才で、グランプリの出場権をかけたトライアル大会で、他を寄せ付けずに圧倒したんだ。彼らはいまだ負け知らず。まだ僕や勝利のように大舞台には立っていない。けれど関東の秘密兵器――ってそんなレベルじゃない。もはや秘密でも何でもないんだ。いまやその人気実力は、グランプリの最有力候補、勝利かつとしと、二分している。


 注目されているのは彼ら二組だけじゃない。

 その彼らが出場した別々の大会にいずれも出場し、いずれも準優勝に終わった直江ってやつ。派手さはないけれど、ファンのみんなはちゃんと見ている。グランプリの前評判は、僕を押しのけ、堂々の三番手だ。


 お笑い一族といったら、僕よりすごいやつもいる。統治者なんて偉そうな芸名を付けたやつ。バラエティにちょくちょく出る程度の僕の一族に比べ、彼の母親はバラエティ界の大御所。人気も実力も格が違う。そして彼女の娘や息子(つまり姉や兄)もまた、この世界で活躍している。彼自身も、出場権をかけた別のトライアル大会を、大会記録の高得点で圧勝している。現在の人気は、残念だけど僕より上だ。


 このグランプリは実力だけじゃない。運もなくては優勝できないと言われているんだ。

 その証拠に、身体を張ったボケで、会場を興奮の渦に巻き込み、別の大きな大会で優勝したフランスの地名をなぞった芸名をつけた粋なやつら。彼らも、グランプリで有力候補になるはずだった。

 けれど、身体を張ったボケの代償で、体調を崩して無念のリタイア。ライバルが一人減ったわけだけど、明日は我が身、素直に喜べない。

 他にも、サッカー漫才といったらもう一組。半袖の似合うやつらは、グランプリが行われる東京の大会場を得意にしている。

 相方に実力派、外国人タレントのオーストラリア人を迎えた風雲児。彼にも僕は一度負けている。強敵だ。


 そんな豪華なグランプリの中、僕の注目度は低い。特に専門家からの評価は悲惨だ。このままだと「あの人は今」ぐらいしか出番が無くなってしまう。


 けれど大丈夫。まだまだ僕を支持してくれるファンの方はたくさんいる。


 かっての勝利かつとしのように、僕もまた相方がへまして出場停止になって急きょ新しい相方とコンビを組むことになっているけど、練習中に画びょうを踏んで足をけがしているけど、大丈夫!

 明日はきっと、優勝してみせる。

 一族のためじゃない。僕自身のために。


ネタを思いつき、一時間半で書き上げました。

思いっきり時事ネタだけに、自己最速です。

もう少し時間をかければ、もっと面白くできたでしょうけど。


またまた一部の人しかわからない作品になってしまいましたが、これを機にこの世界に、はまってくだされば幸いです。

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