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それでも僕は帰りたい~スキル【異世界転移】を持って異世界に転移!?~  作者: うどん米
第一章・始まりの一歩目、最初の世界ワァヘド
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第4話・魔法の属性



「生活魔法!!何だか、すごい見覚えがありますね」

「そうじゃろう、お前が普通に生きていたら大体は見て来とるはずじゃからな、家電で」

「…ですよね」


 一応弁明しておこう、不満があるわけじゃない。だが、なんか思ったのと違う――だって、僕の異世界と言えばなんか竜巻を作ったり、炎の竜とか、巨大なゴーレムで戦っているような、そんなイメージがあるのだ。


「そう不満そうにするな。便利じゃろ?」

「そうですね、便利ですね。まるで、家に一台は欲しいくらいは便利ですね」

「ほっほっほ!そりゃそうじゃの、最近なんて家電魔法と呼ばれる始末だからの……だが、舐めるでないぞ例えば最初に見せた火だろうと魔力を込めれば大火にすることも出来る、放火だってやりたい放題じゃ」


 確かにたとえ小さな火であろうと木造の家に燃え移れば大火事になるかもしれない、水だって家が水浸しになったら発狂しそうだし、風も使い方を間違えればスカートの中を除くのにも使われるかもしれない。



「でも、これ本当に学ぶ必要あるんですか?この世界にはガスコンロありますし、水道ひねれば水は出ますし、扇風機もありますよね。むしろ、覚えるのって危険じゃないんですか?うっかり発動したりして」

「そうじゃの、だから今の時代の人間はそもそも魔法を覚えないのじゃ……戦争が終わり、魔法の発展が止まり、そして科学が尊ばれるようになった…その影響で、魔法の基礎である生活魔法も学ぶものもいなくなった」

「師匠……」


 考えてみればそりゃそうだ、魔法は僕のように鍛錬をしない限り扱えない。

 だが、科学は誰でもそれを使えるようにした。火の魔法をガスコンロで、水の魔法を水道で、風の魔法を扇風機などで扱えるようになる。


 戦争ですら、熟練の魔法使いを育成するよりも爆弾の一つや二つを製造して落とした方が有益だし、進化した科学は魔法と変わらないと、誰かが言ったがそれは本当のことなんだろう。ましてや、魔法と科学が存在するこの世界ではなおさらだ。



「なに、悲観しているわけじゃない。むしろ、誰でも魔法を扱えるようになったような物じゃからな、素晴らしい事じゃ。ただ、魔法の楽しさを理解してくれる人がおらんようになっての…この齢になると話し相手が欲しくなるんじゃ」

「僕がいるじゃないですか…それとも、まだ初心者だから駄目ですか?」


 そう言うと鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、本当の僕のおじいちゃんのように微笑みかけながらそっと僕の頭の上に手を乗せた。


「そうじゃの、儂の話し相手になりたいならもっとコントロールの特訓をする必要があるの」

「げっ、や、やっぱなしで!!し、師匠、それよりも魔法を教えてくださいよ!」

「調子のいい奴め…まあ、よい始めるぞ」



 魔法、それはこの世界に存在する超常的な力。

 師匠曰く、発動させるためには相応の魔力とイメージ、つまりは想像力が必要になるらしい。


「でも、必要なのがそれだけなら【火の魔法】とか【水の魔法】とかって言わなくていいんじゃないんですか?」

「そうじゃ、だがのイメージと言うのは頭だけで考えるには不十分になることが多い。だから、そのイメージを肉付けするために呼ぶんじゃ」

「詠唱ってことですね…でも、それならサイクロン!とか、アースクエイク!とか、インフェルノ!とか技の名前も言った方がイメージしやすいんじゃないんですか?」


 師匠の言う通り魔法がイメージから生み出されるとすれば異世界物やラノベのお約束で魔法には詠唱が必要だったり、少なくとも技の名前くらいは叫べばどういう魔法を使うのかイメージがさらに強固になるのではないのか。



「うむ、過去にはそう言っていた者もいたと聞く。だが、多様化する魔法と多すぎる魔法の名前……要するに魔法が多すぎて名前を憶えていられなくなったのじゃ」

「えぇ!?そ、そんな理由で?」

「だが、大問題じゃ。そもそも、戦闘中では急に技名を忘れるなんてこともあるからの。だから、属性の名前を呼んで魔法を扱うのじゃ」


 確かに言われてみれば、魔法の名前を叫ぶということはそれを常に覚えている必要があるということだ。

 僕の場合、もしあのヒグマともう一回会えば最悪気絶して、よくても魔法の名前なんてすぐに忘れてしまうだろう。


 ゲームでもよっぽどやり込んだものでも全ての魔法を記憶しているはずもなく、現実ならなおさらな上にバカ長い詠唱なんて宿題で寿限無を覚えてくるようなものだ。


「わかりました。そ、それじゃあやってみます」

「そう緊張するな、ゲロを吐いたあの時を思い出すのじゃ!」

「なんか嫌になってきた…行きます!!」


 嫌は嫌だが、確かに吐いた瞬間が一番魔力を感じ取れたため見当違いなことを言っているわけじゃない。

 とはいっても、いい気分でもないのだが――


 心臓の辺りにある暖かいもの、魔力と言う湖から一杯の水を掬って指先に移動させる。そこから、ガスコンロをイメージにして魔力と言うガスに点火するイメージで――


「【火の魔法!】」


 イメージが固まった瞬間、渾身の力を絞って叫ぶ。すると、かなり強く叫んだこととは裏腹に指先にはちょうど僕の親指くらいのサイズの火が燃えていた。

 だが、指先に感じていた魔力が無くなるとついていた火も一緒に消えてしまった。


「‥‥あの、師匠」

「なんじゃ?」

「なんで、指先に火がついても全然熱くないんですか?」

「いい質問じゃな、魔法を発動している時には同時に魔力も噴出している。その魔力が肉体を守ってくれるのじゃ」

「なるほど、それじゃあ他の魔法も試してみますね」


 火をつけた後に気づいたことだが、気にしなくていいと知ってほっと胸を撫でおろした。その後も、師匠がやった通りに【水の魔法】と【風の魔法】を圧倒的に規模は小さいものの成功させて見せた。


 やはり、生活魔法と言うだけ簡単に発動できるようだ。

 しかし、師匠の見せた生活魔法と比べれば練度が圧倒的に違うのは目に見えてわかる。簡単なものだからこそ、使い手によって差がわかりやすいという事だろう。



「ほお、意外に早く習得できたの。これなら、次の段階の説明も初めてよさそうじゃの」

「そ、そうなんですか…めちゃくちゃ規模が小さいんですけど、これって成功って言えるんですか?」

「出とるんだから成功じゃ、後は練習あるのみじゃ」


 そう言うと、立派に生えた白いひげを少し触りながら眼光鋭く僕を見た。

 何だか、昨日にバケツを見た時と同じ嫌な予感を感じ取った僕は思わず、二歩三歩その場から後ずさりする。


「安心せい、別に命がけの特訓をするというわけではないぞ。ただ、お前はどういった魔法を扱うのかと思っとったんじゃ」

「どういった魔法を使う?何か、適性とかあるんじゃないんですか?」

「ない」

「ないって…それって、僕に魔法の適性がないのと、この世界には魔法の適性なんて存在しないのどっちですか?」

「前者じゃの」


 ガクッと効果音でも出そうなくらい思わず肩を落とした。

 クソッたれ女神から転移させられてもらったものは【異世界転移】と言うスキルだけ、何となくは気づいていたが僕には適性なんて持っていないらしい。



「それで、結局のところ僕は何の魔法を扱えるんですか?」

「ふむ、正直に言うと大体何でもできるのじゃ。魔法はイメージだからの、人間が想像できるものは大体実現できるんじゃよ」


 火を出すときはガスコンロ、水を出すときは水道の蛇口、風を出すときは扇風機など魔法を発動させるときにはとにかくイメージが大切だ。


 この法則がすべてに当てはまるというなら、例えば土の壁を作りたいなら地面を持ち上げるイメージとか、魔力を土に変えるイメージとかがあれば発動できるということになる、必要魔力は考えないとして。



「あの、それだったら全部の属性をまんべんなく扱えるようになればいいんじゃないんですか?」

「当然の疑問じゃな、しかしそれをすると簡単に言えば器用貧乏で終わるのじゃよ」

「それは……イメージの発展がしにくいからですか?」

「魔法についてわかってきたようじゃの、そうじゃ。人間の想像と言うのはいい加減なものでな何でもかんでもやろうとすると知識が足りなくなるのじゃ」


 例えば、火、水、風、土の魔法を学ぶとしよう。簡単な、いわゆる生活魔法と呼ばれる魔法は今まで生きてきた中での基礎的なイメージで扱うことができる。


 だが、それを攻撃的にとか極めようとするとより緻密なイメージが必要になる。すなわち、練度が足りなくなるそんなことをするくらいなら一つの魔法属性を極めた方が良いとのことらしい。


「もしやれるとすればよっぽどの天才くらいじゃの。だがの、一つの属性を極めると言っても補助的に他の属性の練度を上げる場合もあるから一概には言えんのじゃ」

「なるほど……それで、僕が中心的に学ぶ魔法属性を考えるってことですね」

「うむ、それでどうする?ちなみに儂は【風の魔法】じゃよ」



 魔法の属性と言うのは思ったより深い、僕たちが生きていくうえでよく触れている火、水、風、土は使用者が最も多く、基本的な属性と呼ばれているらしい。


 だが、頭を悩ませるのはこれからでイメージが魔法となる。

 つまり、魔力を変換させるイメージする属性には数多の種類と可能性があるのだ、例えば光や闇はもちろん、剣や槍の魔法属性も存在する、中には時計属性を発明して、全く時間の合わない時計を作った奴もいるらしい。



「僕の魔法……これって、本当に何でもいいんですよね?」

「そうじゃよ、だがあまり奇をてらったものはおすすめせんよ。基本的な属性はもちろん、そこから派生した氷や岩は使用者が多い分そのノウハウが蓄積されとる」

「じゃあ、電車の魔法とか車の魔法とかは難しいという事ですね」


 さっき例として出した時計もどうやって時間が進むかイメージできていないから時間が合わない時計ができた。

 電車や車はどうやって動くか、どういう物で構成するかイメージしていないと魔法は成立しないのだ。


「うーん……」


 悩ましい、とても悩ましい。ノウハウと師匠の属性から考えるになるべく風の属性かその派生系統で行きたい。

 人間が作り出した発明品などはイメージが固まらないのでなるべく避けるべきだ。



「これは、時間がかかりそうじゃの‥‥‥もういい時間じゃからのまた明日聞くのじゃ」

「はい、師匠」

「魔法の属性は大切なものじゃ、しっかり考えることじゃぞ。大切なのはお前が何をしたいか、それを忘れることないようにな」


 こうして、今日の訓練は終わった。その後、ご飯を一緒に作って一人考えるため早々にベッドに入ることにした。

 もちろん、題材は何の魔法を学ぶかである。


 もし、ここでいい加減に考えれば試練に失敗し今度こそ完全に成仏することになるだろう。だが、苦痛ある死はまっぴらごめんなので出来るだけ抗いたい。


 そして、家に帰りたい。

 一応、師匠の話を聞いて何個か候補は立ててある


 まず、一つ目に風の魔法

 師匠が使っている分、ノウハウが蓄積されているというのもあるが、一度風の魔法を見せてもらった時に刃となって木を切っていたり、遠隔の物を動かせるというのは他の属性には難しいと思ったからだ。


 次に、空気の魔法

 単純に空気を敵の周辺から失くしたら強くね?と思っただけである。一応、系統的には風の魔法に属すると思われるので師匠からある程度は教えてもらえるだろう。

 しかし、空気のイメージなんてできるのかが不明である。


 そして、気体の魔法

 これは、風魔法より範囲の広いイメージの魔法属性だと聞いている。そして、これを選ぶなら操る気体を絞った方がいいということも聞いている。

 例えば、毒の霧と煙をどちらも学ぶのではなく片方にするということだ。なお、毒の霧を使った場合、体全身を魔力で守らないと死ぬらしい。


 魔法はイメージ、つまり漠然とした魔法の属性では発動は難しい。


 風は外にいれば吹いてくるし、扇風機からでも感じられるほど身近な分イメージは定まりやすい。


 空気はそこら中にあるけれど、実際に目視できるわけじゃなし風とは違ってそこにあると認識しにくい。


 気体はそもそも範囲が広いし、生み出す気体を限定してイメージしないとそもそも発動しない。変な気体をまき散らせば自分が死にかねない。



「‥‥‥大切なのは僕が何をしたいか」



 家に帰りたい。これに尽きる、だからこそ家に帰るためにはどの魔法が一番最善かよく考えなければいけない。


 まず、第一として死にたくない。意地でも死にたくない、理由は家に帰れなくなるのと単純明快で痛いのが嫌だからだ。

 第二として相手を傷つけたくない、なぜなら肉を切る感触とか誰かを殴るとかもあまり好きじゃない。試練なんてなければさっさと敵前逃亡したい。


「……はぁ」


 思わず自己嫌悪で嫌になる。それでも、僕は帰りたいというのに相手を傷つけたくないだの、死にたくないだの覚悟と言う覚悟が全く足りていない。

 要するに甘ちゃんなのだ、日本生まれ日本育ちの身としては普通なのかもしれないが異世界では通用しない。



「だからと言ってもな……」


 布団に蹲りながらうなる。

 たとえ、甘ちゃんだろうと覚悟がないと自覚しようとも無いものはないのだ。ないものねだり以上に不毛なものはない、だから僕が選ぶべきはなるべく相手を傷つけず、自分の身を守れるような魔法属性だ。


 しかし、あくまで殺傷能力が少ない手段を取れると言うだけで殺せない魔法を選ぶ気はない。



「……決めた」


 自分がどういう戦いをするのか、どうやって帰るのか、その方向性をちゃんと認知することができた気がした。

 そこでやっと頭が楽になったのか悩むこともなくあっさりと僕は深い眠りに落ちていった。




完結を目指しているので、かなり足早に進みます。

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