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それでも僕は帰りたい~スキル【異世界転移】を持って異世界に転生!?~  作者: うどん米
第二章・偉大なる二歩目、冒険の世界イスナーン
38/40

第36話・漏らすは恥だが役に立つ

前回のあらすじ

ホヨルが勝った





 それは、2、3mほどもありそうな巨大な蛇の魔物であった。


『【剛健】…とうぉりゃぁぁぁ!!』」


 それを、ミスリルの大剣をもち振るう男はその一撃を相手の脳天に浴びせ、さらには大剣に仕込まれた魔道具を起動させ刃先を伸ばし串刺しにしてトドメを刺した。



『…もう大丈夫だ。怪我はない?』

『……はっ、はい!』


 そう、彼の背中にはまだ年端も行かない少女がへたり込んでいたのだ。

 そして、僕はその救われた少女の顔に見覚えがあった。


 間違いなく、彼女は冒険者ギルドの受付嬢のアールさんだ。

 そういえば、スタンピードで彼女は当時Bランク冒険者であったこの世界の僕に救われている。



『……その、ありがとうございます!』



 無邪気な笑顔が僕には大変眩しく見える。

 だけれど、少し気がかりなのはその笑顔が見つめる先が僕――いや、この世界の自分だとは思えなかったことだ。




 ***




 混濁した意識は晴れ、ゆっくり瞼を持ち上げる。


(…夢、だよね)


 なぜ、急にあの夢を見たのかはわからないが、スキルを継承したことと何か関係があるのかもしれない。


 意識を失う間際に聞こえたあの声は、僕が発したものではなく、おそらくスキルが自発的に発動して体を守ったのだ。

 この出来事はただの自己防衛本能が働いて無意識に起動させただけかもしれないが、僕にはこのスキルを託したこの世界の自分が助けてくれたように思えた。


 上体を起こし、辺りを見渡すと窓の外は真っ暗でどうやらここは『カクシ亭』の僕の部屋らしい。


「おぉ!起きたか、アポロ」


 ちょうど、背伸びをしていたタイミングで扉を開けてツヴォーさんが心配そうな表情で入って来た。



「ツヴォーさん!無事で何よりです……!!」

「意外と元気じゃねぇか。まったく、こっちはもう目を覚まさねぇんじゃないかって冷や冷やしてたってのに」

「本当に、心配おかけしました。そうだ、ホヨルさんにあのカーアって人はどうなりましたか?」

「おう、それがな……」


 あの後、倒れてしまった僕を必死にホヨルさんが癒してくれたが毒は未知のものだったため一向に直すことができず、そのまま意識を失いここに担ぎ込まれた。


 そして、医者に診てもらっている最中に急にスキル【剛健】が起動し僕の毒を癒してくれたのだ。



 ホヨルさんやツヴォーさんたちに怪我もなく、襲ってきた殺し屋であるカーアは無事に憲兵に連行されていったらしい。



「…それにしても、あの、僕の聞き間違え出なければ……」

「ああ、わかってる。ホヨルは、間違いなくお前の……いや、この世界のアポロの娘だ」


 正直、毒入りダガーを食らってからは意識が混濁していたため聞き間違いかなと思っていたが、ツヴォーさんが断言するなら間違いないのだろう。


 話しを聞くとそもそもこの世界の自分が幼いころのホヨルさんをツヴォーさんに会わせていたらしく散々自慢していたらしい。

 友人に引き渡された後も度々会っていたらしくそのたびにこの世界の自分のことを話していたようだ。



「結構前に店主…アイツの親代わりの奴が倒れたって聞いてこっちにやって来たんだがな。そしたら、こんなことになるとはな」

「…………何で、ホヨルさんは気づいたんですかね」

「そいつは知らないが…あるんじゃねぇか親子の縁ってやつが」

「単純に黒髪が珍しいからじゃ?」

「そんな、ロマンのねぇ話をすんじゃねぇよ!」


 と言うか、それ以外に僕とホヨルさんに似ている所なんてない気がするがと思い振り返ってみると、気合いで増援に向かってきた際に彼女が『とうぉりゃぁぁぁ!!』と叫んでいた気がする。


 言われてみれば、ここら辺も血筋で似ているのかもしれない。




 一応、僕が言うとややこしくなりそうだったり、グズグズ言わないことを察してかツヴォーさんがこの世界の自分と僕の違いを説明してくれたようだ。


 反応はまずまずと言ったところで、ツヴォーさんと同様にこの世界の自分の死は半信半疑らしい。


「あ、そうだホヨルにはバレてねぇと思うが……ま、情けだ何も言わねえよ」

「……はい」


 こうして、一通り話し終わったツヴォーさんは部屋を出て僕を一人にしてくれた。




「…あああああああああああ!!」


 パタンと扉が閉まった瞬間に毛布に包まり叫ぶ。

 確実に、確実にツヴォーさんにはバレていた。


 と言うのも、今の服は戦っていた時とは違う物でありおそらくツヴォーさんが着替えをやってくれたのだろうがその時に気づかれた。



 え、一体何に気づかれたんだって?



 もはや誰に言っているのかもわからないが、ともかくこうでもしないと自分が保てなくなりそうだった。



「…くっ、まさか高校生にもなって漏らすなんて……」


 そう、あの戦闘中一見するとすごく冷静に立ち回れていたと思うし僕にしては対人戦で死の恐怖に足が竦むこともなかったと思える。



 だが、実際は違う!!



 ぶっちゃけると、最初の方にレイピアを避けた時点で既にちびっていた。

 そして、『これ、ヤバいかも』と言い出した辺りでは完全にダムが決壊して漏らしていた。


 何やってんだよと思うかもしれないが、仕方ないと言えば仕方がないのだ。

 だって、僕はただの男子高校生だし生まれてこの方刃物の先端なんて向けられたことはない。


 怖いなんてもんじゃなかったし、正直ゲロ吐かなかっただけまだましだとすら考えている。




 だが、不幸中の幸いと言ってもいいのが漏らして全部出しきってしまった羞恥心と絶妙な緊張感が合わさって半ばヤケクソ状態になっていたおかげでカーアとの間に“戦闘”を継続させられた。


 加えて、漏らした羞恥心はアドレナリンを呼び起こし体中にできた細かい傷を気にしなくさせたのも勝因だろう。



 何なら、重ねてぶっちゃけると一撃目を避けた後にさっさと煙を撒いて逃げる気満々だった。

 確かにツヴォーさんを失うのは心苦しいが、あくまで交流があったのはこの世界に元からいた自分なので僕には関係ないと思っていたのだ。



「……やっぱり、そうなのかな」



 しかし、思考と裏腹に僕が選択したのはカーアを倒してツヴォーさんを救う、つまりは戦闘続行だった。

 勘弁して、死にたくないよ、と考えていても体はツヴォーさんを守れと叫び続けている。


 なら、その原因だと考え付くのは間違いなくスキル【剛健】だろう。



 もし、スキルの継承がスキルのみならず人格、魂もしくはそれに類するものも継承されるとするならば――

 考えてみれば、普通の男子高校生だったはずの僕は気づいたら戦闘に対してあまり抵抗感が薄くなってきた。


 それだけじゃない、狩猟も暴力だって最近は手の中に罪悪感が残らない。



「………最後は、人殺しかな」


 もしかしたらカーアの言う通りかもしれない、僕の果ては倫理なき殺人鬼なのかもしれない。



 今は、二つしか継承していないが三つ四つと増えていけば果たしてその時に“僕の人格”はそこに存在するのだろうか。



「…寝よ」


 もしもを考えても埒が明かないと思考を切り、漏らしたことを忘れられるようにと願って布団にくるまった。




「………」


 だが、眠ろうと思っても漏らしたことが頭の隅に残っているせいで眠くなるどころかむしろ意識がはっきりしてきた。

 そして、はっきりしたなり頭を使ってあの戦闘を振り返ると不可解な点があった。



『どうかしらね、もし依頼人さんのターゲットにアナタも含まれていないなら仲間に死体のだけれど……』



 テンションがおかしくなっていたためスルーしていたが、よく考えてみればカーアが言っていたそれには明らかな違和感があった。


「言ってたことが本当なら、僕とツヴォーさんがターゲットだった?それって、おかしいだろ」


 百歩譲って、鍛冶師として活躍していて評判のいいツヴォーさんがどこかで恨みを買っているというのはまだわかる。

 だが、つい最近来たばかりで金どころか盗るものない僕が狙われる理由なんてあるのだろうか。



「あのスキンヘッド…いや、それでもわざわざツヴォーさんと同時に殺そうなんて思うか…?」


 と言うか、狙いが同時と言うのも謎だ。

 まるで、今回の一連の流れが最初から仕組まれていたような、そもそも僕がツヴォーさんの店に行くタイミングがバレていたようだった。



「でも、僕がツヴォーさんの所に行くのを知っているのって……そんなにいたっけ…もしかして、ドライツェンさん?」


 言ってはいないが盗聴の魔道具を仕掛けてきているくらいだ、知られていてもおかしな話じゃない。

 だが、本当にドライツェンさんがあの暗殺者をけしかけて来たのなら自分でやらない理由が説明できない。



 だとすれば――



 思考がまとまる前に、扉がノックされる。

 返事をすると、入って来たのは元気そうなホヨルさんだった。


「おはよう、お父……じゃないんだよね、アポロ君」

「はい…なんか、ごめんなさい」

「い、いやその違うの……別にアポロ君で残念だったわけじゃなくて、十年以上会ってなかったからどうしても思い出しちゃうの」


 そう言われるとますますホヨルさんとあの自分を会わせることができなかったのが悔やまれる。

 でも、僕の予想通り娘さんはお前のことを引きずっていた。


 どうか、僕と言う存在とあの馬鹿野郎の死で一つ人生の決着をつけてくれることを祈るばかりだ。



「そうなんですか……なら、僕に教えてくれませんか。この世界で精一杯生きて戦った僕の話を」

「っ、うん!それじゃあ、どこから話そうかな……」


 たとえ、死んだとしても覚えてくれる誰かがいればその人の中で人は生き続けられる。

 英雄の話は英雄譚に、天才の話は書物にまとめられ、僕のような凡才は僕を愛してくれた人の中で生き続けられる。


 あの時、毒を食らい腹から出血してもホヨルさんを守るために僕の体は全く残っていない魔力と体力を絞り出して駆け出した。

 めちゃくちゃ辛かったけれど、正直逃げたいと心の中は叫んでいたけれど――



「私のお父さんの話をね!!」



 心の奥のさらに奥、魂が諦めるなと叫んでいた。

 この笑顔のためなら、血反吐の一つも吐いて見るのもいいと思った。



「…悪くないね」


 そう、思わず小声でつぶやきながらこの晩は自分自身が歩んだ旅を聞きながら眠りについた。





これにて、まあイスナーン編の第一編は終了って感じですね。

うーん、世界を渡るという設定をうまく扱えていない気がする。


次回からは……うん、まあ、うん………人が…うん、ちょっと……うん、残酷描写がね…増える……うん、かもしれないの……でも、第一編でね……うん、書いた伏線が回収される…うん…うん…うん、だから、ぜひ見てね!!


一応、予告

なぜ、僕とツヴォーさんは襲撃された?

その謎を追うため僕たちは………え!?なんやかんや、ダンジョンに行くの!?

現れる、この世界の試練!


……そう、やっぱりアナタだったんですね

次回、第二章・偉大なる二歩目、冒険の世界イスナーン

第二編:人の命を何とも思わない外道もいる……の始まり~始まり~!!

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