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それでも僕は帰りたい~スキル【異世界転移】を持って異世界に転生!?~  作者: うどん米
第二章・偉大なる二歩目、冒険の世界イスナーン
36/40

第34話・一歩、先へ……

前回のあらすじ

多分、【第六感】が無かったら100回は死んでた。




 馬鹿でも扱える武器と言うのは本当に存在するのだろうかと聞いたときは少し疑問に思っていた。

 だけれど、その正体が僕の手の中にあると多少だが納得できる。


 剣や槍は僕には論外だし、近接中心の戦い方しかやったことがないので弓やボウガンでもない。

 殴り合い用にメリケンサックかと思ったけど、ツヴォーさんが僕のことをよく知っているなら逃げ腰である程度距離を取った戦い方が好きなのも知っているだろう。



「そいつなら、刃で傷つける心配もない。ある程度距離を取って戦える、お前が使うハンマーの柄にも使える。まさに、アポロでも扱える武器だ」

「本当に助かります!」


 水色と言うよりは、陶器で使われるような青磁色をした物干し竿を握り込み構える。


「アポロ!それじゃ、こんな狭いところだと使いづらいだろ魔力を流せ!」

「は、はい……ッ!?」


 確かに、この物干し竿はここで振り回すには長すぎると思っていたが、言われた通りに魔力を流すと持っていた物干し竿が淡い光を放つ。



「そのまま、魔力を調節しな」

「魔力を……縮んだ、伸びた、また縮んだ!?」

「……どうやら、相当珍しい魔道具が組み込まれているみたいね。しかも、その特徴的な色素材はミスリルかしら?」


 魔力を普段魔法を使っている時のように調節すると物干し竿は僕の手の中で伸び縮みした。


「み、ミスリル!?」

「おうよ、元はどっかの馬鹿が持ってきた伸び縮みさせる魔道具とミスリルを組み合わせた大剣だった。そいつを改造して生み出したもんってことよ」

「ツヴォーさん……それって、もしかしなくても」


 記憶が正しければ、この世界の僕が使っていた大剣の素材もミスリルだったはずだ。

 だが、その大剣はそいつの亡き奥さんのために売り払ってしまったはずだ。



「ああ、お前が売ったミスリルの大剣だ」

「…ッ!!」

「売った?もしかして、武器を使わず私と張り合っていたのかしら‥‥‥だとしたら、面白いことになりそうね」


 正確には僕が売ったわけじゃない。

 当然、そんなことを知る由もないカーアにとっては、舐められていたと受け取られていても不思議じゃない。


 ここから、攻撃はさらに苛烈になるだろう。


 だけれど、不思議と恐怖はなかった。



 このミスリル製の物干し竿は不自然なくらい持っていると落ち着いた。

 きっと、僕の中にいる【剛健】に宿った僕に何か思うことがあるのだろう。


「いや、きっと楽しませることはないと思う。だけど、いつも通り精一杯抗わせてもらうよ」

「そう、ならやっぱり楽しくなりそう!」


 体は痛いし、細かい傷は毒が塗られているからか地味にひりひりする。

 魔力も、もう残り少ない。


 なのに、相手はまだ余裕そうで煙幕は吸われて意味をなさない。

 最高硬度の煙も易々と砕かれた。



「やってやらぁ!!スキル【剛健】」

「さぁ、私と一緒に踊りましょう!!」


 叫べ、弱虫な己を奮い立たせろ、それが出来なくても精一杯虚栄を張り続けろ。

 残りの魔力は煙の魔法じゃなくて【身体強化の魔法】に全て突っ込め。


 スキル【剛健】が始めってから終わるまでの、たった30秒間に――



「すべてを賭ける!!」


 真っすぐ直線的にとてつもないスピードで飛び出し、物干し竿を槍のように操り振るう。

 それに対し、先ほどと同様にレイピアとダガーの二刀流で迎え撃つ。


 だが、これまでとは圧倒的に違う速度によって放たれた刺突は彼女の反応を一瞬だけ上回り腹部に直撃する。


「くっ…!?」

(後ろに跳ばれて衝撃を逃がされた!このまま追撃を…)


 ぴくっと首元に【第六感】の反応がちらつく、目線の先にはこちらに向けられたレイピアの刃先。

 だが、以前とは違い躊躇なく僕は一歩踏み出した。


「一歩、踏み込んだわね!【エアストライク】」

「師匠、僕に力を貸してください」


 本来であれば、第六感の危機感知からすぐさま回避行動に移らなければ当たるのは確実。

 だが、一歩踏み込んでしまえば回避は間に合わない。


「なん、ですって!?」


 しかし、風の凶刃は僕の首を引き裂くことはなかった。

 寸前で体を屈め、下に潜り込ませることで【エアストライク】は文字通り空を切っていった。


 だが、これは本当にギリギリの芸当でもし回避行動が早ければカーアに再び標準を向けられるだけ、遅ければ当然回避できない。



 本当に絶妙なタイミングで回避して見せた。


(反射神経強化……【剛健】を合わせないと一瞬しか持たない。なんで、師匠はこんなもの使い続けられるんだ)


 そう、僕や師匠が戦闘時に使う身体強化の魔法の応用で反射神経を強化することによってその絶妙なタイミングを見極めて見せたのだ。


 だが、脳の構造を正確に理解しているわけでもないアポロが使おうとすれば余計な部分にも魔力が流れて頭痛を起こす。


 その姿を見てカーアはほくそ笑んでいた。



(私の【エアストライク】を避けたのは見事と言っていいけれど、回避の仕方が悪かった。あそこからは動けないし、あの距離からなら回避は間に会う…!)


 そう、その通りだ。

 この距離から物干し竿を突き出しても避けられるだろう。


 だが、それはリーチがこのままだったという話だ。


「伸びろ!」

「まずっ……!?」


 呼び声と共に物干し竿の魔力を調節し伸びていく、そのまま伸びたリーチで再び突きを放った。



「なんてね、さっき見たことを警戒しないわけじゃないじゃない」

「ッ‥」


 もらったと思って放った突きは最初から分かっていたと言わんばかりに左に避けられ、伸びた物干し竿の先端が掴まれた。

 やっと、一歩先を行ったと思ったら、その先にまだ奴はいる。



「なんてね、はこっちのセリフだよ」


 だけど、今回ばかりは僕が一歩先を行ったらしい。

 カーアが物干し竿を掴んだその瞬間、伸ばして伸ばして伸ばしまくり僕は手を放した。


 僕の手を離れた物干し竿はその身をカーアに預け、当然だがその重量も彼女が背負うことになる。

 そして、崩れた態勢から強化された肉体を無理やり動かし必殺の回し蹴りを彼女の脇腹めがけて打ち込んだ。



「ぐっ…あっ!」

「やっと、まともな一撃が入った」


 壁にまで吹っ飛んで叩きつけられ地面に落ちたカーアはすぐさま立ち上がった。

 けれども、強化回し蹴りは流石に堪えたのか鋭い視線はそのままによろよろとしている。



「はははははははっ!!面白い、面白いわ!!おそらく肉体強化系のスキルを使って私の攻撃を避けて、私に見せてしまった棒の機能もブラフとして使って見せた。……いいわ、いいわね!!」

「こっちは何もよくねぇよ!!」


 奴の笑みは消えない。

 殺気は未だに絶えず、発動した【剛健】が切れるまでもう時間がない。


 すぐさま、落ちた物干し竿を拾い縮め、壁まで叩きつけられたカーアの元に駆けだす。



「小細工はもう無理ね。なら、正面から叩き潰してあげる!」


 感じようとするまでもなく、僕に向けられているレイピアにこれまでとは比にもならないほどの魔力が集まっているのがわかる。



(くっそ、ここまで来て終わりかよ)



 放とうとしてるのはおそらく【エアインパクト】当然だけど、煙の壁ではあれを防げない。

 そもそも、発動するための魔力が足りない。


 身体強化の魔法を全力で発動させて、剛健と合わせて物干し竿を投擲しても足りないだろう。



「終わりよ!【エアインパ…「そのまま、突っ込めアポロ!!【剛力】」なんですって!?」

「はいっ!!」


 放たれる寸前、カウンターから飛び出したツヴォーさんはスキルを発動させ、ハンマーを振りかぶりレイピアの刃先をぶっ叩いた。

 ただでさえ、スキル【剛力】は僕の【身体強化の魔法】と【剛健】を合わせたパワーを上回るのだ。


 そこから一撃を放って、突っ込めと言われたら突っ込まないわけにはいかない。



「ま、待って!」


 目と目が合う、何を待てと言うのか僕の背後で暴発した【エアインパクト】が弾け風が背中を押したのを感じた。



「さっさと、店から出てけぇぇぇ!!」



 今度は、簡単に避けられないように突き刺しではなく薙ぎ払いが直撃しカーアは店の外に吹っ飛んでいく――はずだった。




「ええ、出てくわ。アナタも一緒にね」


 僕の攻撃は確実に彼女の脇腹に命中したが、その瞬間に物干し竿を彼女に掴まれ店の外に跳ばれる。

 そうなれば、反対側を握っている僕も当然店の外に放り出された。



「アポロ!!」


 それを見て、ツヴォーはすぐさま外に駆け出す。


 だが、外に出てそこにいたのは彼女がサブウェポンとして持っていたダガーが腹部に刺さり血を流し倒れているアポロと、それを目撃するホヨルであった。



「ふふふふふっ……はははははははっ!!残念、私も態勢が崩れる瞬間を狙っていたのよ。そう、今みたいにね」

「はっ、ぐっ…あ……」


 ピンチはチャンスとはよく言ったものだ、普通に戦おうとすればスキル【第六感】によって攻撃される位置がわかるアポロに攻撃を当てるのは至難の業だ。


 なので、物干し竿を掴んで共に店の外まで行った瞬間に態勢が崩れたアポロ目掛けてダガーを投擲したのだ。


 この戦い、アポロの敗北である。



***




 だが、その場に立ち合わせた戦士がアポロだけとは限らない。


「あら、ラッキーね。外に出ても目撃者が一人だけなんて」

「……アナタがやったの?」


 視線を倒れるアポロに落としながら、わなわなと震える拳をさらに強く握り闘志を絞り出す。


「そうよ、中々手こずったけど最後は戦闘経験の差が……」


 次の瞬間、言い終える前に、ホヨルの拳が彼女の顔面をぶち抜き後ずらせる。

 だが、唇の間から垂れる血を拭いながら未だに不敵な笑みは崩れない。



「…どこかで見たと思ったら、アナタ『カクシ亭』の看板娘さんじゃない。一度泊まったことがあるのよ。そういえば、元冒険者って言ってたわね」

「そうだよ、私もあなたのことを知ってるよ。冒険者にとって一番やってはいけない依頼主殺しをして追放された元Aランク冒険者さん」

「ふふっ、すっかり私も有名人ね」


 嬉しそうに笑みを浮かべるカーアと、ドライツェンに向けた時より恐ろしい鋭い眼差しを向けるホヨル。



「ホヨル、気を付けろ!アイツは魔道具のレイピアとダガーの二刀流だけじゃない。毒と風の魔法を得意としてる」


 そんな場面に現れたツヴォーは以外にもホヨルの戦いを止めるのではなく、むしろカーアの戦法を伝え戦いを促していた。



「うん、こっちは任せてツヴォーおじさん。その代わり、お父さんをお願いね」

「なっ、わかっていたのか……いや、今は何も言わん。頼んだぞ、ホヨル!」


 ホヨルは優しい瞳で、倒れたアポロを『お父さん』と呼びツヴォーに託す。



「消耗した私になら本当に勝てると思ってるのかしら?」



 挑発するように顔を上げ、笑みを浮かべた。



「勝てるよ。だって、私強いからね」



 それを、指を鳴らしながら大胆不敵にも笑みで返す。


「なら、私と踊って頂戴!」


 戦いの火蓋が再び切られた。



すみません、予想以上にアポロvsカーア戦が長引きました。

もし、戦闘シーンが長いとかわかりにくいわ!!などそういうのがあればなるべく改善しようと努めるので感想などでください。


それと、総合評価が現時点で142ptも行ってめちゃくちゃ驚いてます。

それに、ランキング?ってやつにも注目度で昨日7位に行きました。応援、ありがとうございます!!

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