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それでも僕は帰りたい~スキル【異世界転移】を持って異世界に転生!?~  作者: うどん米
第二章・偉大なる二歩目、冒険の世界イスナーン
34/40

第32話・目と目が合ったら!?

前回のあらすじ

アポロの精神がなんやかんや崩壊しかけた



 時間と言うのは案外早く進むようで、気づけばすぐにツヴォーさんとの約束の期日はすぐにきた。



「【煙の魔法.EVL2】とうぉりゃぁぁぁ!!」


 スカッ


 その間、僕はアールさんに紹介された北の森の中に入り取れなくなった薬草の代わりに魔物を狩っていた。

 しかし、巨大なハンマーは背が高い木が多いとは言え使いずらい。


 そのため、適当に長い棒を振るって戦っていたのだがこれがマジで当たらなかった。



「くっそ!逃げるなぁぁ、卑怯者ぉ!」


 Fランクモンスター『ドゥ・ラビット』こいつが曲者で、森の入り口辺りに出現する魔物だ。

 ほぼほぼ、姿は日本で見かける兎と大差ないのだが大きな特徴は二つ。


 一つは、その体躯に似合わない一本角でこれに刺されれば出血多量であの世行だろう。

 二つ目は、発達した後ろ脚により二足歩行が可能となり、逃げるときは四足歩行、攻撃の時は二足歩行と組み合わせてくる。


「ちっ、すばしっこすぎるな【煙の魔法】」


 弱点は、普通の兎と同じようで突然の環境変化に弱いのと、骨が軽くて脆いため当たれば一撃で倒せる。

 だとしても、僕ではスキルを併用しなければ逃げられる。


 なので、走りながら屋外なのでもったいないが煙幕を展開し奴の視界を塞ぐと同時に【煙の魔法.EVL2】によって進行方向の煙を固める。



「キュッキュッ!!」

「悪いけど……命もらってくね」


 その一言共に動けなくなったドゥ・ラビットに渾身の一撃を叩き込めばもう動くことはなかった。

 そして、早速買った解体ナイフで腐る前に色々剥いでいく。


 角はもちろん、肉も皮も金になる。

 心情的には慣れることはないが、師匠の元で学んだおかげか体は覚え始めてくれたので意外と手際よく解体を進めることができた。




 ***




「はい、全部で40,000イラですね。すごいじゃないですか!ドゥ・ラビットにドゥ・ボア、解体の出際もよかったので少し増額しておきました」

「本当ですか!!これで、しばらく食い扶持には困らなさそうです」


 薬草だけで稼いでいた時の二倍とまでは行かなかったが、それでも十分に嬉しい。

 血は生活魔法の蛇口程度の【水の魔法】で洗い落とし、気持ち悪いのを耐えながら肉を切り取り、皮を剥ぐなど相当に苦労した分喜びもひとしおだ。


「さーて、なんかお礼にお酒でも買って行こ」


 調べによればドワーフは想像通り、お酒を好むらしくせっかく武器を作ってもらうので持っていこうと思ったのだ。

 お酒は二十歳からが常識だが、この世界ではお酒の購買に年齢制限などは設けられておらずこれも文化の違いと言うやつだろう。


 と言っても、甘酒を飲んで酔っ払ってしまう僕が酒を飲むことはないだろう。




 ***



 だが、その前に宿屋に戻って宿泊費を払っておこうと戻ると、ドライツェンさんがホヨルさんに首根っこを掴まれ宙ぶらりんとしていた。



「あ、アポロ君。いいタイミングに来たね。ちょうど、この馬鹿をしばいていたの」

「はははっ……」



 幻覚でも見ているのかと目をこするが青い顔で首根っこを掴まれて動けないドライツェンさんがいるのは変わらず思わず乾いた笑いが漏れ出した。


 そして、どうやらこんなことになっているのは僕に無関係なわけではないらしい。



 話を聞くと、ドライツェンさんが僕を看病した際に貸してもらったマスターキーを魔道具で複製していたらしく僕の部屋への侵入を試みていた。

 その一部始終をホヨルさんが目撃して今に至るというわけだ。



「この馬鹿、どうやら君の部屋に入って盗聴の魔道具を仕掛けようとしていたみたいでね…ほら、これ」

「あっ!?そのボタン……!」


 ホヨルさんに見せられた魔道具はつい最近ベッドの裏や服についていたボタンであった。

 それが、盗聴の魔道具だとすればつけている間の会話は全て筒抜けと言うことになる。



「で、どうするアポロ君。ぶっちゃけ、宿から追い出すのは確定してるんだけど憲兵に突き出すこともできるから選んで」

「あ、アポロ…君。け、憲兵だけは……やめ「アンタは黙ってなさい!」…ぐぇ」


 今の所信用が地の底の底まで落ちているドライツェンさんが首を絞められながら何か言っているが言い終えることはなかった。


 正直、ストーカー紛いのことをされていたのは意外――と言うわけではなく突っ込むのが疲れていただけで思い当たる節は相当あった。



「…いや、憲兵には突き出さなくていいです」


 少し迷ったが、彼女が僕を心配してくれたのは本当のことだろうし、スキンヘッドから助けてくれた恩もある。

 完全に自己満足だが恩人を憲兵に突き出すような真似はしたくなかった。



「君がそう言うならそれでいいけど、もし何かされたらお姉ちゃんに言うんだよまたしばいてあげるから……ほら、アンタも謝りなさい!」

「ごめんなさい、アポロ君……」


 と言うことで、まるでニュースで見る犯人のように項垂れた表情のままドライツェンさんは宿屋を後にした。

 その後姿はどこか物悲しかったが、何だか闘志のようなものも感じられた。



「…悪は滅びたね」

「完全に滅びるといいんですけど……それにしても、ホヨルさんって強くないですか?Sランク冒険者をあんなにあっさりと」


 一部始終を全部見ていたわけではないが、首を強く締められていたからはちゃんと抵抗していたドライツェンさんに何もさせず制圧していた。



「ふふっ、これでも元Bランク冒険者だったからね。今は、お父さんが倒れちゃったから引退して看板娘やってるんだ!」

「Bランク冒険者…!ホヨルさんすごい!!」


 それなら、大いに納得できる。

 Bランク冒険者と言えばこの世界の僕と同じ程度だと一見大したことなさそうに聞こえるが、実際はそうではない。


 アールさん曰く、CとBランク冒険者では大きな境目があり死亡率も大きく変わる。

 Bランク冒険者たちは魔物との戦闘に慣れ、採取依頼から護衛依頼などなど冒険者として一人前として認められた人たちを指すのだ。



「ふっふ~ん!でしょ!……と言っても、私の場合はスキルのおかげかな」

「スキルですか?」

「うん、私のスキルは【強健】って言うんだけど、とにかく健康になるのとスキル名を言うと30秒間体が丈夫になるんだ」

「うん?」


 ホヨルさんがスキルを持っているのも驚いたものの、僕が引っかかったのはそのスキルの内容だった。

 この世界の僕の持っていたスキルが【剛健】でその能力が状態異常への耐性が上がり、同様にスキル名を言うと30秒間肉体が強化されるという物だった。


 丈夫になるということは、剛健のように力が強くなるというわけではなく単純に打たれ強くなるという事だろうが類似点が多いのが気になる。



 スキルが遺伝するなんて話は聞いたことがないが――そういえば、彼女の髪は僕と同じ黒髪だ。



(…いや、ホヨルさんに僕の遺伝子が入ってるならこんな美人になるわけないか)


 瞳の色は僕とは似ても似つかない紺碧だし、さっきお父さんと言っていたしたまたま似てしまったとかそんな所だろう。



「そうだ、ホヨルさん。宿泊期間の更新をお願いします」

「はーい、アポロ君」




 ***




 そんなこんなで色々ありながらも、何となくの目利きでよさそうな酒を買って一昨日ぶりにツヴォーさんの店に向かった。



「……ツヴォーさん、いますか?」


 店に入ると、客はだれ一人おらずカウンターにすらツヴォーさんの姿はなく静寂だけが辺りを包んでいた。

 思わず、ホラー展開が頭をよぎった僕は恐る恐る声を出すとカウンターの向こう側から足音が聞こえて来た。



「おう、来たなアポロ。ほら、さっさとそこに座りな。奥から持ってきてやるから」

「できたんですね、僕の武器が!!」


 戦いは嫌いだが、アニメや漫画を見ているものからすれば自分の武器が手に入るというのは興奮ものだ。

 そして、言われた通り椅子に座りのんびりしていると店の扉がゆっくりと開けられる。



「…あら?店主さんはいないのかしら」


 そう言いながら、胸元が大きく空いた服を着て灰色の髪をした女性が辺りを見渡しながら入って来た。



「今、店主さんなら店の奥に行ってるんです。もう少し経ったら来ると思いますよ」

「ありがとう……ちなみに、お客さんもアナタだけかしら?」

「そうなんですよね、この店僕から見てもすごい品質の武器が……」


 殺気、スキル【第六感】が警報を鳴らしている。

 反応はちょうど僕の首辺り、心臓が高く跳ねたのをすぐ感じ取った。


 だって――



「さようなら、注文は死体二人よ」


 彼女がいつの間にやら抜いていた刃が僕の首を、斬り開こうとしていたのだから。


 目にもとまらぬ抜刀からの躊躇の無い急所への一撃――ワァヘドからイスナーンに転移したばかりの僕ならこれで死んでいただろう。



「あっぶなぁ!」


【第六感】の反応に身を任せ、上体を逸らすと刃は鼻先を掠め空振り周囲にある武器を飛び散らせる。



「なんだなんだ!?…って、こいつは!」

「知っているの、ツヴォーさん」


 騒ぎを聞きつけ、カウンターの奥からツヴォーさんが現れると声を上げ。

 突然の襲撃者は薄気味悪い笑みをツヴォーさんに向ける。



「ああ、元Aランク冒険者のカーアだ。噂だと去年、問題行動を起こしてギルドを除名されたって聞いたが、良い仕事はしてねぇみたいだな」

「ふふっ、知ってもらっていて光栄ですわ。……仕事ですので、その命もらい受けますね」


 アールさん曰く、元Aランク冒険者と言うことはこの世界の僕よりも強く、戦うだけなら単体でダンジョン攻略可能とされるレベルだ。

 化け物と呼ばれるSランク冒険者たち一歩手前の僕にとっては正真正銘の怪物だ。



「ツヴォーさん、何かアイツの弱点とか知らないんですか!?」

「知らねぇよ!強いて言うなら、おっぱいがでかいのと武器はあのダガーとレイピアの二刀流だ気をつけろ!」

「見りゃわかりますよ!!【煙の魔法.EVL2】」

「面白い魔法を使うのね!!」


 ツヴォーさんから一目瞭然の情報を受け取りながら冷静に主装備と思われるレイピアの刺突を煙の塊が包むように受け止めるが、すぐさま粉砕されすぐさま後退することになる。



「だけど、耐久が足りないわね」

(くっそ、EVL2の耐久力は注いだ魔力依存とはいえこんな簡単に破ってくんのかよ!!)


 だが、決して不利な戦いと言うわけじゃない。

 スキル【第六感】によって相手の攻撃の狙う場所が何となくわかるのと、二刀流とのこともあって一撃一撃は両手と比べて弱い。


 煙の盾はやすやすと突破されるが、威力を減衰させ避ける時間を作ってくれる。



「そうやって、逃げてるだけじゃ勝てない…わよ!!」

「ッ、くっそ!【煙の魔法】【煙の魔法.EVL2】」


 ツヴォーさんの方には煙を流さず、奴の方に向かって煙幕を放出する。

 そして、ドゥ・ラビットにもやったように煙を固めて動きを阻害しようとする。


「ん……この程度の煙幕じゃ見え見えよ!」

(動きが早すぎて周囲を固めるのが間に合わない!)


 ドゥ・ラビットの時も急に目の前に壁を作るなどしていたが動いている相手の周囲の煙を固めるのは想像以上に難しい。

 その上、壁を作ったとしてもこいつの前じゃ障子紙を破るようにやすやすと突破される。


 こうなったら、こちらも巨大ハンマーで殴りかかりたいところだが小回りが利かないこの場所では僕がサンドバックになるだけだろう。

 なら、棒で殴りかかりたいところだがあれはドゥ・ラビットのような脆い敵だから意味があったが、実際に使おうと思えば魔力を圧縮して注がなければ十分な耐久は期待できない。


 そして、圧縮するために集中を裂けば、先に避けるのは僕の首と胴体だろう。



「…アポロ!あと少し耐えてろ!」

「は、はい!!……【煙の魔法.EVL2】」


 ツヴォーさんはそう言い残し、再びカウンターの奥にあるバックヤードに姿を消した。

 すると、得物を狙う狩人のような瞳で刃を迫らせる。


 それに対し、煙の魔法.EVL2を発動させた僕は足を引っかけさせるため足元の煙を固める。



「足元の煙を固めた。なるほど、なら……【エアサクション】」

「煙を吸った!?」


 どうやら、僕の魔法の種が割れたようで何か詠唱すると黒点のようなものが指先に出来上がりそこに僕が展開した煙が次々と吸われていく。


(この世界の魔法か…こんな、形で初対面とはね!)


 瞬時に煙を固めるのはあくまで最初に煙が展開されていることが前提なので、煙を吸われてはどうしてもタイムラグが生まれてしまう。

 そして、この戦いにおいてそれをされたら僕は相手への妨害手段を一つ失うことになる。



「……これ、ヤバいかも」


 この世界に来て初めての理不尽な死の恐怖が僕を襲うのだった。




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