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それでも僕は帰りたい~スキル【異世界転移】を持って異世界に転生!?~  作者: うどん米
第二章・偉大なる二歩目、冒険の世界イスナーン
27/40

第25話・13日の金曜日

前回のあらすじ

猪を倒して、今日の昼飯にした。




 日が落ち始めて少し後に、街に帰って来た僕は冒険者ギルドに向かい買取カウンターを書かれた受付に並んでいた。


「え…!?し、新人さん無事だったんですね!?」


 僕の順番になったと思ったら対応してくれたのは朝に冒険者登録をしてくれたお姉さんだった。

 彼女は僕を見るなりまるで幽霊を見たような反応で驚き目を丸くしている。


「ど、どういうことです?」

「あ、あの…実はですね……」


 その慌てように話を聞くと、彼女は僕がギルドを出発してからのことを話してくれた。

 要するに僕が行ったタイミングで『ドゥ・ボア』と言うDランクモンスターが北の森の外に出現したと報告が来たらしく。


 安全だと言って北の森を勧めた彼女にとってはやってしまったと頭を抱えていたというわけだ。



「ですが、無事でよかったです。薬草はどうでしたか?」

「…そうですね、結構調子よかったですよ。これで、お願いします。後、薬草以外にもこれがあって…」


 リュックの中から取り出した魔石をカウンターに置くと受付のお姉さんは目を丸くする。



「これ、魔石じゃないですか!?…もしかして、森の中に行ったんですか。あれほど、行かないでと言いましたよね」

「違います違います。森の外で、薬草を取ってたら猪の魔物が出て来てそれを倒し解体したら出て来たんです」


 予想とは反して、魔石を取ったことに驚かれるのではなく実際には入っていないが忠告を無視して森の中に入ったことに怒っているらしい。


「猪の魔物…?もしかして、ドゥ・ボアですか!?」


 当然だがこの世界に来たばかりの僕にモンスターの判別なんてできるはずもなく、ボアと言うのだからとりあえず猪なのはわかるが、倒したのがそれと同じかはわからない。


 なので、とりあえずこの魔石を買い取ってもらえないか聞こうとしたとき、ちょうど僕の後ろに並んでいた大剣を背負った大柄のスキンヘッドの男が声を上げる。


「はっ、こんなひょろいガキがドゥ・ボアを倒したなんて嘘に決まってんだろ!」

「あはは、そうかもしれませんね…とりあえず、この魔石を買い取ってもらえませんか?」


 第三者が勝手に言ってきているだけのいちゃもんだが、角を立てる気はなかったので適当にあしらいながら売れないかと聞く。


「舐めてんじゃねぇぞ!どうせ、その魔石もどっかから盗んできた物だろ!」


 すると、その反応が気に食わなかったのか僕の手を掴み引っ張り上げる。

 軽く振りほどくことはできそうだが、それをすればこのスキンヘッドは再び激昂し、面倒ごとになるのは間違いない。


 どうしようか考えていると買取カウンター中からギルドのお姉さんが駆けつけてくれた。



「やめてください、それ以上冒険者ギルドで問題を起こすようでしたらギルドカードに記録させていただきますよ」

「うっ…だがよ、アールちゃん」


 思わず、大柄の男はたじろいでしまう。

 僕も再三注意されたがギルドカードへの記録は相当に重い罰であり、最悪失効されれば冒険者だけで稼いでいるのであれば実質無職になってしまう。


 だが、その時スキンヘッドの視線が掴んでいた僕の手に付けられている宝石が付いた指輪に向かう。


「なんだこりゃあ、いい指輪着けてんじゃねぇか。お前みたいな小汚ねぇ奴がこんなの持ってるはずねぇだろ」

「………」


 確かに、今の僕はこの世界に来たばかりで無一文のため恰好が冒険者の物とは思えずこの場から相当浮いている。

 その上、薬草採取と先の戦闘によって足元は泥だらけだし、服も結構汚れている。


 だから、僕の手の中で輝いている指輪は一際アンバランスに見えるだろう。



「もしかしてよ、金持ちの爺さんから奪ったもんじゃねぇのかよ!」


 その指輪が分不相応なものなのはつけている僕が一番理解している。

 だが、それはそれとして指輪を抜こうとしながらそう言ったスキンヘッドは僕の地雷を踏みぬきながら邪悪な笑みを浮かべた。


「……いえ、今は亡き祖父から頂いた形見のようなものです」


 しかし、この場で問題を起こしてはいけないと最後に残った理性が僕を全力で止めている。



「はっ、そんな指輪をお前に渡すなんて、お前の爺さんは相当見る目がねぇ奴なんだな!」

「……すぞ」


 いくら僕を貶されようがどうだっていいが、師匠をバカにするのは許せない。

 頭に血が上ったまま、目の前のこのスキンヘッドに煙の魔法をぶつけてやろうと指輪に魔力を込めようとしたその時だった。



「待ちなさい」


 ギルドの出入り口辺りから声がかかる。

 そこまで大きな声ではないはずなのに、その透き通るような声はギルドに響き周囲の注目を集めた。


 僕も何事かと視線を向けると、そこには金色の長髪にワァヘドの森を思い出させる緑の瞳、背には2メートルほどの長弓を背負っている女性。

 そして人間とは違う尖った耳――その種族を僕は知っている。



「…エルフ?」

「えぇ、ここら辺では珍しいですから驚くのも無理ないですわ。…それよりも、アナタがドゥ・ボアと戦っている姿を拝見させていただきましたよ」

「あ、あなたはSランク冒険者のドライツェンさんじゃないですか!」


 急な出来事に頭に上っていた血が降りてくるのを感じながら冷静に状況を分析する。

 師匠をバカにしやがったスキンヘッドは、ドライツェンさんが登場すると借りてきた猫のように大人しくなり僕の手も放した。


「あの…本当なんですかい?こいつが、ドゥ・ボアを倒したって」

「はい、それとも私の言葉が信じられないのですか?」


 すっかり委縮してしまった男は彼女に問いかけるが、返って来たのは覇気の乗った一言だった。

 流石はSランク冒険者と言うべきか、放つ威圧感は師匠を思い起こさせ明確に勝てないと体に教え込まれる。



「そ、そんなはずないじゃないですか……じゃ、じゃあ俺はここら辺で…」


 その威圧感をまともに食らった男は僕を一瞬睨みつけた後足早にギルドを去って行った。



「…ありがとうございます。アナタのおかげで、ピンチを切り抜けることが出来ました」

「ふふっ、礼儀正しい子ですわね。気にしないで、そもそも助けたのはアナタではなく、今出ていった方ですから」

「ははっ、まさか……」


 表情は一切変わっていなかったはずだが僕があのスキンヘッドをぶち殺そうとしていたことがバレてしまっていたらしい。

 だが、過程はともかくドライツェンさんが助けてくれたおかげで無事に買取を行ってもらえそうだ。



「すみません、騒ぎを起こしちゃって……それじゃあ、買取を改めてお願いします」

「いえ、こちらこそ止められず申し訳ありません。あの人はまたギルドに来られた時にしっかり今日のことをカードに記録しておきます。それでは、買取ですね…少々お待ちください」


 リュックサックから制服を抜いて薬草だけにしたものを、お姉さんに渡す。

 一度、カウンターの奥に引っ込んだ後、数分程経過すると戻って来て空のリュックサックを渡してくれた。



「はい、全部問題なく買い取らせていただきます。計算の方は少々お待ちください。魔石の方も問題なく買い取らせていただくんですが、ドゥ・ボアの肉や牙、皮などはございますか?」

「いえ、道具もなかったので…やっぱり、お高いんですか?」

「そうなんですよ、この街には巨大なダンジョンがあるので魔石の方はたくさん手に入るんですけど、肉とかはダンジョンでは中々手に入らないのでかなりの収入になったと思いますよ」


 どうやら僕は相当もったいないことをしていたらしい。

 話を詳しく聞くとダンジョンでは想像通り宝箱や魔物を倒すと魔石をドロップし、場所によっては海がありそこで漁が出来たり、フルーツが生っている階層があったりもするらしい。


 だが、魔物の肉や牙、皮と言った物は宝箱から出ることもあるが、魔物本体からはドロップすることなくダンジョンに行く人が多いこの街にとっては珍しいのだ。



(でも、街の様子を見るに家畜とかはいるみたいだし、あくまで高いのは美味しい魔物の肉とかで全ての魔物が高いってわけじゃないだろうな~)


 この世界での試練の手がかりを知れたような気がするができればダンジョンなんていう危険が常にありそうな場所なんか行きたくない。


「はい、計算が終了しました。全部で13,666イラですね」


 僕の目の前に並べられたのは金貨一枚と銀貨三枚、後は銅貨など端数を埋めているであろう物たちであった。

 枚数的に金貨が一万で銀貨が千でそれ以下が日本で言うところの小銭たちであろう。


「もし、またドゥ・ボアに会った時は肉と牙、皮を持ってきてくださればもっと増額できます…と言っても、肉は肉屋に売った方がいいんですけど」

「そうなんですか、次は挑戦してみようと思います。そういえば、13,666イラって薬草採取と魔石だと多いんですか?」

「そうですね、僅か半日だけでこれだけ稼げる人はそういませんよ。また採取してきたら買い取りますのでお待ちしております」


 確かに、今日はドゥ・ボアとの戦闘もあって早めに切り上げてきたが実際はもっと長時間粘って採取は可能なためまだ収入が跳ね上がる可能性も高い。

 そうすれば、衣食住を手に入れこの世界で活動する基盤を早々に作れるだろう。



「ありがとうございます……えっと、アールさん」

「はい、頑張ってくださいね。アポロさん……そうだ、もしどこかに泊まるんでしたらギルドを出てすぐ右にある路地裏をまっすぐ行くとある『カクシ亭』って言う宿がおすすめですよ」


 初対面の時とは異なりどこか砕けた和やかさを含んだ声色で言ってくれるアールさん。


「そうなんですか、ありがとうございます。行ってみますね!」


 それに対して、実はさっきから内心びくびくだった僕は返事をして、僕を助けてくれたドライツェンさんにお辞儀をしながら足早にギルドを去って行った。


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