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閑話・ある男の日記



 1885年 9月1日


 今日から、日記を書くことにする。

 と言うのも、僕はいわゆる転生者?と言うやつで、16歳の時に学校に行こうとしてたら謎の黒ローブに殺されて女神に出会いこの世界に転生させられた。


 マジで許せん、日本に返すか成仏させてくださいって言っても強引に転生させやがったし…だが、スキル【第六感】をくれたのは行幸と言える。



 ともかく、転生した僕は優しい軍人さんに拾われて軍学校と言うところに通うことになった。

 明日からどうなるかわからないけど、この世界には魔法があるらしいのでそれが楽しみだ。


 それと、日本での本名はこの世界だと不自然なのでファーストと名乗ることになった。


 出来れば、帰る手立ても探したい。


 9月2日


 キツイ



 ***



 9月10日


 昨日まで無意識でキツイしか書いてなかったのを見て驚いた。


 何があったかと言うと、とにかく走ることになってその後はヘンテコな装置で魔力を探知する訓練をしたり…思い出したくない。


 とにかく、僕は【風の魔法】を習得することができた。

 周りからは覚えるのは早い方と言われたが、あの訓練の成果がちょっと風を起こすだけなのが割に合わないと感じた。


 ちなみに、意外と思ったのが男女共学で聞いた話によると魔法があるからあんまり男女差が無いらしい。

 なので、どちらも学校で学び戦争に駆り出されるようだ。


 9月11日


 今日から座学が始まった。


 高校時代から特に勉強で困ったことがない僕にとっては訓練のキツさとは雲泥の差で感動して泣きそうになっていた。


 ちなみに友達もできた。

 遅くね?と思うかもしれないが僕は昨日まで訓練で忙殺されておりまともに友人を作れるような状況じゃなかった。


 ちなみに、ここはワァヘドと言う国で一言で表現するならマジカル日本みたいな国だった。

 問題は、時代が現代ではないことくらいかな。



 ***



 1887年3月3日


 この日、僕は軍学校を卒業した。

【風の魔法】も鍛え上げられ、同世代から見れば上の中くらいの練度になった。


 親しい友達はたくさんできたけど、彼女はできなかったよ…しくしく……



 ***


 1888年4月1日


 僕を拾ってくれたエークさんから援助を受けて、軍大学校に入学することになった。

 何でこんなに良くしてくれるんですか?って聞いたら、気まぐれとしか答えてくれなかった。



 4月2日


 キツイ


 ***



 4月12日


 おかしいな、聞いた話だとここはエリート将校を育てる学校と聞いたのに…

 エリートって椅子でふんぞり返っているイメージがあったのに軍学校の100倍辛かった。


 同時に入学した同期たちも表情から生気が抜けててゾンビみたいだった。

 だが、僕の使う魔法は段々と成長してるし、体も心も日本にいた時とは比べ物にならないほど成長した。


 日本に帰った時が楽しみだ。



 ***



 1893年3月3日


 僕は軍大学校を卒業することができた。


 同期の仲間が途中で何人か減っていたり、女風呂を覗こうとした奴が退学になったり中々退屈しない4年間だった。

 それに、この4年間で苦楽を共に分かち合った仲間とは固い絆で結ばれたと思う。


 彼女はできなかった



 ***



 1894年7月25日


 戦争が始まった。隣国との、近くにある半島?を巡る対立が発端になった戦いらしい。

 当然だが、卒業した僕も駆り出され戦うことになった。


 聞いた話によるとワァヘドの艦隊が隣国の艦隊を撃破したらしい。



 ***



 8月20日


 わかった、よーくわかった。

 僕は、人が殺せない。



 8月21日


 上官から人を殺せない無能は下がれと言われた。

 でも、風の魔法を使えるため基地の防衛に配属された。


 同期の仲間が戦っているというのに情けない話だ。



 ***



 9月17日


 僕の身元引受人であり、ずっと援助してくれたエークさんが死んだと言われた。



 ***


 11月21日


 敵国の艦隊がワァヘドのすぐそこまで迫ってきていることが分かった。

 そこで、ワァヘドは艦隊を編成し迎え撃つことになったが、上官がそこには僕の同期がたくさん乗っていることを教えてもらった。

 今度は、後悔しないようにしろと言われた。



 11月22日


 僕は出る、僕は戦争に行く。

 エークさんを失った時のようにうじうじ蹲っているわけにはいかない。




 ***



 11月30日


 いっぱいころした





 ***



 12月31日


 あの日から、ずっと夢の中で殺した人たちの悲鳴が響き続けている。

 軍医からは心理的な病気だと言われた。


 なんでも、強烈な心の傷が原因で、過去の体験が何度も蘇り、生活に大きな影響を及ぼす精神的な障害らしい。




 1895年1月1日


 心配してくれる友人が訪ねてくるようになった。

 その中でも、俺が間一髪で救った同期のエナはあの戦いの後ずっと訪ねて来てくれたらしい。


 友人が来てくれるのは嬉しいが、その最中もずっと頭の中ではあの時の光景がフラッシュバックしていた。


 それよりも、おかしなことが起こった。

 俺が日本にいたころの記憶がほとんどない、どうやって死んだのかとかは日記を見ればわかるけど、思い出としてあったはずの物を失くしてしまった。


 …もう、日本に帰ることはできないかもしれない。


 ***



 11月30日


 あの戦いから俺は一回も出兵していない。

 そんな時にも同期達が戦ってくれているというのに体は動かない。


 しかし、今日にやっと戦争が終結したとエナから聞いた。

 これでもう、戦わなくてもよくなった。




 ***



 1896年4月1日


 突然ですが、結婚しました。

 えぇ、突然すぎて俺も驚いています。


 友人が言うには、今年で28歳になるのにくよくよしている俺と俺に好意を持っているエナをくっつけるために色々画策していたらしく、あれよあれよと結婚してました。


 ちなみにプロポーズはエナからで、強引にファーストキスを奪われて『あたしに、あんたを助けさせなさい!』と言われOKしました。




 ***



 5月5日


 一応、まだ軍人なので一通りの訓練を行って次の戦争に備えています。ないといいですけどね。


 戦争も終わり、始まった結婚生活はものすごく甘々でした。

 エナと二人きりの時にフラッシュバックが起こったら長いディープキスをされ、つらい経験が上書きしようとしてくれたり、本当に俺にはもったいない奥さんです。



 ***



 1904年2月8日


 案の定、戦争が始まりました。

 隣国との半島を巡る戦いに勝利して、それをよく思わなかった勢力がいるらしく戦争となりました。

 当然だけど、俺は戦争に駆り出されることになりました。


 心配だけど、本国で待つ妻と娘のために死ぬわけにはいかない。




 ***



 1905年9月5日


 戦争が終結した。

 幸いにも、俺は死なずに家に帰ることができた。


 いっぱい人を殺すのは辛かったけど、妻と娘の顔を思い出せば何とか覚悟を決めて殺ることができるようになった。

 そして、何だか俺が周りから『風の賢者』と呼ばれているらしい。何だかむず痒い



 ***



 1937年7月7日


 1905年の戦争から、何回も戦争が起こったがまた隣国との全面戦争となるとは思わなかった。

 娘も成長し、結婚してついに孫ができた。


 俺も相当年を取った。

 体は衰えたし、もう戦える体ではない…妻もすっかり老けていたが、未だに美人なことに変わりなし…と言ったら、ぶっ叩かれた。



 ***



 8月7日


 俺の元に弟子にしてくださいと青年が頼み込んできた。

 名前はアインツと言い、訳を聞くと現在17歳で軍学校に通っているらしいが才能の芽が出ず困っているらしい。


 何だか妙に昔の俺と重なる部分が多い気がするし、理由は気まぐれと言って弟子に取ることにした。


 ***



 10月1日


 予想以上に、アインツ君の才能は素晴らしいものだった。

 一度開花させてみれば教えたことはスポンジみたいに吸収していくし、面白いくらい魔法の腕が上がっていった。


 使う魔法は俺と同じ【風の魔法】で理由を聞いたら俺が使ってるからって言ってくれた、めっちゃ嬉しい!



 ***



 1939年4月1日


 アインツ君が軍学校を卒業して軍大学校に入学することになった。

 弟子になってから一年以上経過したけど、今の俺と比べても遜色のない魔法使いになっていた。


 そのせいか、あまり顔を見せなくなって最初は師匠と呼んでくれたのに今は“あんた”呼ばわりである、悲しいね。

 妻にも息子離れできない父親みたいねと言われた…



 ***



 9月1日


 この日、世界中の国が同時に宣戦布告を行った。

 つまり、何が起こったかと言えば日本で言うところの第二次世界大戦が始まった。


 もう、70歳を超えたのに心労が続く。義理の息子は娘を残して戦争に行ったらしい、久しぶりに娘が孫を連れて帰って来たのに喜べない。



 ***



 1943年10月2日


 文部省が学徒出陣を発表した。

 それまでは学生は徴兵を猶予されていたはずなのに、戦争の長期化による兵力不足が原因らしい。


 当然、軍大学校で学んでいるアインツもその対象だろう。


 その日のうちに俺も戦場に行きたいと妻と娘に相談した。

 娘からは猛反対を食らったが、妻は俺を一発思いっきりひっぱたいた後、了承してくれた。


 超痛かった。



 10月3日


 昔の伝手を借りて70代になった俺も戦場に向かうことができるようになった。


 幸いにも身体能力は【身体強化の魔法】で補えるし、魔法の腕は落ちていなかったので戦車や迫撃砲などなど現代の兵器とも互角に渡り合うことができた。


 久しぶりに会ったアインツは俺の脛を蹴飛ばしやがった。



 ***



 1944年11月24日


 妻と娘、孫が死んだ。


 原因は『アポロの徒』と名乗るテロ組織共がワァヘドに対して爆撃を行いそれに巻き込まれたと聞いた。

 俺とアインツも襲われたが敵じゃなかった。


 …しんどい、もしあの場に残っていれば守ることができたのかもしれない。



 11月25日


 弟子にめちゃくちゃ慰められた。



 ***



 1945年8月9日


『アポロの徒』の教祖を名乗る男が現れた。


 間一髪でアインツを逃がすことができたが、代償として左腕を失ってしまった。

 相手は別の世界の人間だと名乗り、見たことない魔法を使いだした。


 何だよ時間停止魔法って……妻と娘、孫を返せよ。



 8月10日


 覚悟を決めた、俺はこれから最後の戦いに向かう。

 その前に、何か残せるものはないかと言うことで自分の意識を巻物に転写しておくことにした。


 幸いにも『アポロの徒』の勢力はそこまで拡大していない。

 昔の伝手からその基地の居場所を割り出した……アインツには言わない、『風の賢者』と言われるまでに成長したしこれからのワァヘドに必要な人間だ。



 結局帰れなかったけど…案外、悪くなかったよ。




ちなみに、8月10日の最後に日記の後何が起こったか…

怒り狂った影山アポロは単身で『アポロの徒』の基地に向かい遠距離から奴らの基地を『風の魔法』で包み、真空状態を作り出し団員、捕虜、民間人関係なく抹殺した。

それを繰り返し続けたら、教祖に見つかって戦闘になり両足と残った右腕も失ったものの追い返すことに成功したが、狭く暗い洞窟の中で孤独に生涯を終えた。


最後の言葉『一人殺せば、俺はただの人殺しだった。だけど、数えきれないほど殺したら英雄になっていた』

その五日後、ワァヘドは他国と和平条約を結び原爆が落ちることなく8月15日終戦となった。

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