第9話
「さっ、何頼みます?」
「あっ、えぇっとねぇ⋯」
東京都内をブラブラと歩きながら行く所を考えていると、青乃さんが素敵な所を見つけたと言うので、2人でそこに行くことになった⋯所で一度確認するべきだった。それか、外観を見た時にでも聞けばよかった。
⋯まさか、こんな高いお店にくるとは思わないじゃん!!!!!
いや、コースの一番安いので一万って、どうなってんの!?いや、ていうかなぜ青乃さんはここを選んだ!?
え、もしかしてお嬢様?お嬢様なのか?それとも私のファンっていうのは嘘で、ほんとは自分より人気のない先輩に、自分人気あって金持ってますよアピールをしたかったのか!!?
いや、でもそんな子には見えないし⋯
そう思いながら正面に座っている青乃さんを見る。すごく笑顔だ。
そうしていると青乃さんが口を開いた。
「四宮さん、頼まないんですか?」
「いやぁ、っと⋯」
うっ、まぁ無難に一番安いコースを頼むか。⋯一万だけど。
「じゃあ、これで」
「?別に遠慮しなくていいですよ、今日は私の奢りなんですし。あ、これとか美味しそうじゃないですか!」
「え、奢り⋯?」
「そうですよ?」
えっ、奢りなのっ!?
⋯⋯いや、普通にそれは先輩としてどうなのか。でも今月ピンチだしなぁ。いや、けどやっぱ初対面の後輩に奢らせるというのは⋯
「奢らせてください!!私、四宮さんが大好きなんです!!!」
後輩に奢らせるということに私が抵抗を感じている事に気がついたのか、彼女は続けてそう言った。
少し頬を赤らめながら、元気にそう言う彼女は、なんか小動物みたいで可愛かった。
「奢る」とはっきり言われた私は、少し申し訳なくなりながらも、素直に奢られることにした。
しかし、メニューは私が決めるのではなく、彼女に決めてもらった。
彼女はもう食べるものを決めていたらしく、それを2人分注文した。
そして来たのは⋯
「こちら、アミューズのホタテのベニエになります。良い時間をお過ごしください。」
そう言い、それぞれの前に料理を置いていく。
アミューズがホタテのベニエってそれ、一番高いやつじゃない!?
なんかキャビアとか入ってた気もするし⋯え、5、6万くらいするよね?大丈夫なのか⋯!?
「うわぁ〜美味しそうですね!さ、食べましょ!」
「えっ、はい⋯⋯あ、うわっ、おいしっ!なんだこれ」
「あ、ほんとだ美味しいですね!」
やっぱり高いのには理由があるわけで、私はアミューズの時点で心を掴まれてしまった。
その後、次々と料理が運ばれてきて、それらをめちゃくちゃ堪能した私達は、次にくる食後のデザートを待つ間、別で頼んだワインを片手に会話をしていた。
「四宮さん、私はあなたのファンなんですよ」
青乃さんはお酒に弱いのか、全然飲んでいないにも関わらずもう顔が赤らんできている。
それになんかポワポワしてる。可愛い。
「知っています。でも未だに、あの青晴が私のファンって実感ないですよぉ」
かく言う私も、少し酔っているせいか、ついフランクな話し方をしてしまう。
「えぇ、ファンですよ、大ファンですよ。まぁ、これから分からせます」
赤らめた顔でニヤッとしながら言うので、私は思わず照れてしまった。
……いや、こんな可愛い子にそう言われると、普通照れるでしょ!!!
「こちら、食後のデザートになります、リンゴのムースです。」
そうこうしていると食後のデザートが運ばれてきた。
「んん〜、これもおいしっ!」
そうして私達の初めての食事は、幕を閉じた。