第7話
「はぁっ、はぁっ、お、遅れてすみません!!」
息を切らしながら会議室の扉を開ける。
顔を上げると、パソコンで作業をしていた桜見さんと目が合った。
「10分の遅刻とは、いい度胸ですね」
「はうっ、す、すみません⋯」
「冗談ですよ。まぁ今日はもう話すことも特にないんで別に⋯⋯って、何であなたがここにいるんですか」
「?桜見さん、どこ見てーー」
桜見さんがふいに私の背後に目線をやったので、つられて私も後ろを向いた。
「⋯えっ、なっなんで、青乃さん!!?」
そこには、先程帰ったと思っていた青乃さんが立っていた。
なにか言い忘れた事があったのかと考えていると、青乃さんは身を乗り出し、会議室に入ってきた。
「えっ、何で青乃さんが⋯!?」
「ん?あれ、言ってないのさくちゃん?あ、私のマネージャーも、さくちゃんなんですよ!」
そう暴露する青乃さんの後ろには、頭を抱え、顔を左右に振る桜見さんの姿があった。
⋯ていうか、えっ、桜見さんの抱えてるもう1人のVって、青晴だったの!!?
驚きすぎて言葉がでてこない。こんな偶然ってあるのか⋯っていうか今日、めっちゃ驚く事ばっかだな⋯
「⋯何で青乃さんがここにいるんですか。今日は特に呼び出しもしてないですけど」
桜見さんが、すっごくびっみょうな顔をしながら問いかける。
「?それはしのm」
「あっ!違う!!だめ!!!言うなっっ!!!!」
かと思えば、今度はすごく焦った顔をした。
桜見さんでもこんな顔するんだ!
あまり感情的になることが少ない桜見さんの新たな一面が見れて少し嬉しい。
ていうか青乃さん、何を言いかけたんだ⋯⋯
「…で、何を言いに来たんですか」
「あっ、そう!さくちゃん、私、四宮さんとコラボする事になった!」
「……は?」
桜見さんの動きが固まった。
確かに私も、青乃さん…いや、青晴とは雲泥の差だと思う。けどこのチャンス、逃すわけにはいかないっ!
そう思い、すかさずフォローする。
「そっ、そうなんです。青乃さん、前から私の事知ってくれてたみたいで、もし良かったら…みたいな……」
フォローになったか分からないけど、桜見さんがしぶしぶ「分かりました」ってOKをくれたので、深く考えるのはやめた。
「では…あと1時間、コラボについて話しましょうか」
と桜見さんが言う。
しかし、私は今またもや窮地に立たされていた。
「あっ、あのぉ、その前に…ト、トイレ行ってきていいですか…?」
休憩時間を青乃さんと過ごしていたので、トイレに行く暇がなかったのだ。いや、私のせいなんだけどね。
何も言われることはなく送り出してくれた2人に感謝をしつつ、私はトイレに向かった。
「…で、なんで来たんだ。この四宮信者が」
「ん?いやぁ、丁度ね、見ちゃったから♪」
「……」
ーーーーー次回に続く