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人気急上昇中の後輩VTuberになぜか好かれているんだが!?  作者: 柳田
第一章

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第50話

「あ〜嬉しい」


「い、いつまで言ってるの」


「もうずーっと、言い続けますよ?だって、初恋の人と付き合えたんですから」


「そっ、そっか⋯⋯⋯って、え、はっ、初恋!?」


「え、そうですよ?」


きょとんとした顔で首を傾げる奈緒さんに、私は質問する。


「そ、それっていつから、とかって⋯⋯」


「好きになったのは高校3年生のときです。最初はおもしろい人だなって思ってたんですけど、配信を追うに連れ、頑張って話を続けようとしてるところとか、苦手なアクションゲームを克服しようとひたむきに努力するところとか、愛しく感じるようになって。あぁ、好きだなって、思ったんです。⋯すぐにでも会いに行きたかったんですけど、親が大学は行っておけって、」


「そ、それで国立大の医学部に?」


「はい!一番家から近かったので!」


て、天才恐るべしだな⋯⋯


「そして卒業後、あなたに会うためにレオレインに入りました。あなたに見合ったVTuberになるために、頑張りました。でも思いの外人気が出ちゃって、あなたとコラボしたいのに、全然会えないから、一回さくちゃんに相談しようって、事務所に行ったんです。そしたらなんとですよ。晴さん、あなたがいたんです。そりゃもう驚きましたよ。急いで後を追いかけて一緒のエレベーターに乗ったはいいものの、早くなりすぎた鼓動を止めるのに必死で、晴さんが降りる前に声をかけられなかったし」


「えっ、って、てことは、あの息切れしてた女性って、もしかして奈緒さんのこと!!?」


「そうですよ、今更気づいたんですか?」


「だって、あの時はまだ会ったこともなかったから⋯⋯って、あれ、なんで奈緒さんは私だって気づいたんですか!!?」


「⋯あ」


動きを止め、先程までこちらを向いていた顔を気まずそうによそに向ける奈緒さんに、私はグンと距離を詰めて問いただした。そして、ゆっくりとこちらに視線を戻し、少し後ろめたそうにする奈緒さんは、しょんぼりした子犬のようで可愛かった。


「さ、先に謝っときます。ごめんなさい⋯⋯」


「えっ、そっ、そんなにやばいことなのか⋯!!?」


「いや、その⋯⋯あのっ、この際なんで、全部言ってもいいですか?」


ぜ、全部ってことは、私の姿を知っていた事の他にもなにか後ろめたいことがあるのか!?


「い、いいよ⋯?」


そうして口を開けた奈緒さんの横で、一体何をしでかしたのかと、膨らんだ妄想を払いのけて彼女が全て言うのを待った。


「じ、実はその、私の担当って晴さんと同じ、さくちゃ――桜見さんじゃないですか。それで、初顔合わせと私のVの詳細を決めようということで、事務所の一室を借りていろいろと話しをしてたんですけど―――」




「えっ、桜見さんって黒宮さんの担当なんですか!?」


「はい、青乃さんは、黒宮さんのファンなんですか?」


「はいっ!黒宮さんがいるからレオレインに入ったと言っても過言じゃありません!!」


「そ、そうですか⋯⋯あ、すみません。追加の資料を持ってくるのを忘れました。少し待っていてもらえますか?」


「はい、分かりました!」


そうしてゆっくりと立ち上がる桜見の手に、机の上に置かれていた彼女のファイルが触れる。その瞬間、ファイルは床に落ち、中に入っていた紙が散乱した。


「あっ、」


急いで拾おうとする彼女に、


「私が拾っておくので、桜見さんは資料、取りに行っててください!」


そう言う青乃は、彼女が資料を取りに出たと同時に、床に広がった紙を拾い集めた―――のだが、善意で引き受けた、紙を拾う作業の中で、彼女は偶然にも見てしまった。


「こ、これは⋯⋯」


“黒宮 怜 本名:四宮 晴”と書かれた一文。その隣には四宮晴と思われる人物の写真、その下には黒宮怜の好きなもの等、設定事項が事細かに書かれていた。幸い、その資料には四宮晴本人に関することは、名前と写真しか載っていなかったものの、黒宮怜ガチ恋ファンからしてみれば、その資料は何億円もの価値があるもの。その資料が目に入った瞬間、すぐに顔をそらした青乃も、資料の魅力に抗うことは到底不可能で、他の資料を披露傍ら、桜見が返ってくるまでの間その資料を熟読していた。

そして――


「拾ってくれてありがとうございました。」


「⋯あの、桜見さん」


「はい?なんですか」


「私のVの名前、今から変更できませんか⋯?」




⋯⋯えっと、つまり私の名前と写真が入った資料を見て、姿を知った+すでに決まっていたVの名前も変更したってこと、だよな⋯?


「って、後ろめたいことってそれ!!?」


「や、やっぱり嫌ですよね、姿のみならず名前まで変えるなんて。ちょっとでも晴さんに近づきたくて、その、勝手に変えちゃって、ご、ごめんなさ――」


「いやぁ、そっかぁ!!そういう経緯があったのか!!!だから最初“青宮晴”の名前見た時既視感ありまくりだったんだ!うわっ、ほんとだ!確かにめちゃくちゃ一緒だ!!」


「⋯え、今気づいたんですか?」


「うん!いやぁ、でもなんか嬉しいな」


「え?」


「だってそれってつまり、好きな人の名前の中に、私の名前が入ってるってことでしょ?それに、奈緒さんが私の姿を知らなかったら、あの時、休憩スペースで私に話しかけに来ることもなかったってことじゃん。私、そっちのほうが嫌だよ。だって、あの瞬間がなかったら、もしかしたら違う結果になってたかもしれないし」


あの時君が話しかけてくれたから。コラボをしようと持ちかけてくれたから。その出会いが、あったから。


「⋯晴さん!!」


少しの涙を滲ませ、私に抱きつく彼女の頭を撫でる。


「桜見さんに感謝しないとなぁ⋯」


「えへへっ、そうですね⋯⋯⋯あのっ、晴さん。」


「ん?」


「その、あなたのことが大好きで、名前まで使っちゃう。そんな私ですが、これからも一緒にいてくれますかっ!!!」


「⋯ふふっ、自分の名前を使われて、めちゃっくちゃに喜んでる私で良ければ、これからも一緒にいてください。」


顔を上げた彼女の額にそっとキスをする。


「まぁとりあえず、今度は私が青晴に見合ったVTuberになるため、頑張るかぁ」


「晴さんはそのままでもめちゃくちゃに素敵です!」


「ありがとう。でもこれは、私が最初に決めた目標だからちゃんと達成したいんだ。」


君と肩を、並べたい。


「目指せ、50万人!!!」


これから先、いろんな事が起こるだろう。それは必ずしもいいことばかりじゃないだろうし、一人だったら無理な場面だってあると思う。

けれど彼女となら、どんな壁だってきっと乗り越えられる。


そう、彼女と一緒なら、私はどこまでだっていけるんだ。


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