第44話
―――なんだろう、右半身がなんか重い⋯それでいて温かい⋯⋯
「――んん」
まだ、寝てもいいよな⋯でも、右が重い⋯⋯
態勢を変えて改めて寝ようと、いつの間にかうつ伏せになっている体を左に寄せると、隣から少し掠れた声が聞こえてきた。
「――ん?⋯あぁ、四宮さんだぁ〜」
そう言うと、彼女は寝た時同様、私を抱きかかえ、再び眠りについた。
⋯そっ、そうだった!い、一緒に寝たんだった!!
頭が動き始めた私がその事に気づいた時には、すでに両腕でがっちりホールドされており、身動きが取れなくなっていた。
まぁいっか、嬉しいし。
前起きた時はいなかった青乃さんが、今隣りにいる。ちゃんと、いる。
それがとても嬉しくて。
ふふっ、青乃さんの体温と、布団の温もりがすっごく心地いいなぁ―――
「四宮さん、今日デートしましょうよ」
朝ごはんの食パンを口いっぱい頬張っていると、正面に座っていた青乃さんがコーヒーを飲みながら言う。まだ少し苦かったのか、微妙な顔してるのも可愛い。
「⋯って、デート!!?」
「はい、晴れて両思いになりましたし、せっかくの休みなんです。デート、しましょ?」
顔をコテンと傾け、私のパジャマ、いわゆる彼シャツ的なものをしている彼女に敵うはずもなく、
「いっ、いいけど、その、どこ行くの?」
「ん〜、四宮さんどこか行きたいとこあります?」
「えっ、っと、デートっぽくないんだけど、私そろそろマイクを新調したくて」
「マイクって配信用のですよね、いいじゃないですか!私もちょうどマウスパッドを取り替えたいって思ってたんですよ!」
「なっ、なら、一緒に買いに行こう⋯!」
「はいっ!確かここの近くに家電屋ありましたよね、後で調べてみましょう!」
砂糖をマグカップに入れ、一口飲んだ青乃さんが、満面の笑みで言う。
「でっ、でも初デートが家電屋って、その、いいの?」
「四宮さん、私、あなたと一緒に入れるならどこでもいいんですよ」
そう、目を細め、温かい手で私の右手を掴む青乃さんに、私の胸は温かくなった。
朝ごはんを食べ終え、食器を片した私達は、デートに向かう準備を始めた。
スマホと財布が入ったいつものカバンを持ってきたのは良かったものの、その他は皆無な青乃さんに私の服を見繕う。早くも二回目の彼シャツに嬉しさを覚えつつ、彼女に似合う服を一生懸命考える。
「それじゃ、いってきます」
「いってきまーす!」
そう言い、私達は玄関を出た。その後、鍵を閉めた私は、青乃さんに連れられるがまま、家電量販店へと向かった。




