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第43話

「――ぷはっ」


やっと解放された⋯⋯

にしても息苦しい⋯こっ、こんなにもキスって体力使うっけ!?それとも私の体力がなさすぎるのかな??

なかなか治まらない息切れをどうにかして抑え込もうと大きく息を吸う。

その間、彼女――青乃さんは、顔を上げ、ただただじっと私の顔を見つめていた。

一体何を思っているんだろうか⋯⋯さっきから全然喋んないし、も、もしかしてこれが俗に言う暴走状態ってやつ!?


息切れも治まった私は、改めて彼女の顔を見た。

すると彼女は、いきなり覆いかぶさっていた体を起こしたかと思えば、今度はまたがる態勢をとった。

そして細長い指で私の胸間をそっと、上から下へなぞってみせた。

パジャマ越しに伝わる指の感覚に、意図せず体が跳ねてしまった私は、その恥ずかしさから顔を横へと逸らす。


またどっか触られるかも⋯!


少しの興奮と、恥ずかしさと緊張を合わせ持った私は、目を閉じ、彼女の次の行動を待つことにした。


―――って、いつ手を出すんだ!!!


しばらくしても次の行動を示さない彼女に内心そう申していると、私の腰の上にまたがる彼女が、何らかの動作をしているのが伝わってきた。

目を開け、正面を向く。

すると彼女は、私の貸したパジャマのボタンを上から順番に外していた。


「⋯へ⋯⋯?」


そうして徐々に肌をあらわにする彼女は、顔を近づけ、


「四宮さん、この後、どうします?」


と顔を軽く傾け、上目遣いと涙目のダブルコンボで私に問いかけた。


「え、っと⋯」


この後どうするって⋯⋯えっ、もしかしてさささ、最後までやるのか!?!??

いやいやいや、流石にそれは早すぎるというか心の準備がまだまだというか⋯⋯

じゃ、じゃあなんて言えばいいんだろう⋯えっと、少し照れ気味に、「今日はここまで」って言う?それとも、大人のお姉さんっぽく、「また今度」って妖美な感じで言う?


そうして頭を悩ませ続けている私に、彼女は口を開け、再びディープキスしようと、身を乗り出した。

えっ、もう一回するの!?ちょっ、ディープキスでも、流石に二回は恥ずいってぇ!!!


「ちょっ、ちょっと今日はも、もう寝よ?そっ、その、まだ早いといいますか、心の準備が終わってないといいますか⋯⋯」


想像してたのとは違う慌ただしい言い方になってしまったものの、それを聞いた彼女は、少し間を開けて、「分かりました」と素直に聞き入れてくれた。


しょ、しょうがないでしょ!こっ、恋人ができたのも始めてなんだし、その、だから、そういう事するのも始めてなわけで⋯!!!

ていうか、女同士ってどうやるんだ⋯???


体を起こしつつ、考える。

足元にいった布団を取っていると、横に移動した彼女が「着せて」と、先ほど脱いだパジャマを私にぐいっと渡してきた。

こういうところは、子供っぽいというか、年下っぽいというか。

さっきまでの暴走状態、色気マシマシとは反対に、可愛さを感じさせ、母性をくすぐる彼女に、そうお願いされては断れない。パジャマを受け取り、ボタンを一つずつ付けていく。


「⋯ねぇ、四宮さん」


「ん?」


「最後に寝る前に、キスしていい⋯?」


「⋯えっ!?だっ、だめだよ!!?」


いっ、いきなり何を言うんだ!!?

ふ、普通のキスならいいけど、君の言ってるキスは、あの激しいやつだろ!?


「ちぇ、だめかぁ」


悲しそうに、シュンとした表情を見せる彼女に、私の母性がまたもや刺激された。


「⋯⋯か、軽くなら、いい、です」


「ほんとですか!」


さっきのとは打って変わって、喜び全開の声を出す彼女に、萌えを抑えきれない私がいた。


「じゃあ⋯」


そう言って彼女は私の唇に、軽く、チュッとキスをした。

そして耳元で


「おやすみなさい」


そう優しく囁き、微笑む彼女に、またもや胸がキュンとする。

ほんと、何回キュンとすればいいんだ!!!

これから先、何十、何百。いや何千回とキュンとさせられるのか⋯⋯

わ、私の心臓は、はたして持ち続けてくれるのか⋯


部屋の明かりを消し、二人並んで一つのベッドに寝転ぶ。

私を抱きかかえるようにして眠る青乃さんを後ろに、その温もりを全身で感じながら、私は深い眠りに入った。

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