第42話
その日の夜はやけに寝付きが良かった。
とりあえず夜遅かったので、青乃さんは私の家に泊まることになり、少しの談笑と、映画鑑賞。途中二人でコンビニに行き、お菓子を大量に買ったりもした。
互いに浮かれすぎたのか、大量に買ってしまったお菓子を消費しきれないまま、私達は同じベッドに入った。内心緊張しつつも、私のすぐ隣りにいる青乃さんの温もりが伝わってきて、私を安心させてくれた。
これで一緒に寝たのも、人を泊めたのも、二回目。一回目も、二回目も青乃さん。
その事がなんだか誇らしくて、嬉しくて。
薄暗くした部屋で、そう一人布団でうずくまり、口元を緩めていると、一緒に入っていた青乃さんが突然布団を引っ剥がし、私の上に覆いかぶさってきた。
「えっ、ちょちょちょっ⋯!!?」
驚く私をただ見つめるだけのその顔は妙に火照っていて、その瞳は私を捕らえて離さなかった。
そして私もまた、そんな彼女から目を逸らせなかった。
長いまつ毛、魅力的に染まった頬、柔らかい唇⋯⋯その全てがどうしようもなく好きだと思ってしまうくらいには、私は彼女の虜になっているようだった。
青乃さんも、同じ気持ちなら良いんだけどなぁ⋯⋯
ふいに彼女に触れたくなった私は、手を伸ばし、真正面にある彼女の顔に触れる。
うわぁ、すべすべだぁ⋯!!!
私と同じく、風呂から上がって、歯磨きをして、すぐベッド!だったはずなのに、なんでこんなにモチモチすべすべしてるんだろうか。いいなぁ、若さ⋯⋯
髪もそうだ。私の手の隙間をするりとすり抜けるその髪は若さだけじゃない、元の性質、みたいなのもあるんだろう。羨ましい。
⋯⋯ていうか、あれ、なんかやけに大人しいな―――私がそう思った瞬間、彼女は私が触れていた手を掴み、有無を言わさぬ早さで、唇を重ねてきた。
「んんっ!!?!?」
私の頭が追いついてないのを良いことに、彼女は私の、もう片方の手も掴んで動けなくした。
体感10秒ほどの長い長いキスは、実際はもっと早かったのかもしれない。それでも、これがファーストキスである私にとっては、初めてのキスは、とても長く感じた。
「四宮さん――」
私の名前を呟いた彼女は、再び私の唇にそっとキスをした。
2、3、4⋯⋯そう秒数を数えるたびに、心臓の鼓動は飛び跳ね、体温は上がっていく。
緊張と恥ずかしさから早く終わってほしいと思う気持ちと、好きな人と触れ合う事の喜びを知った私、それぞれが混ざり合い、どんどん複雑になっていった。
すると突然、彼女の舌が私の口内に入ってきた。
「!!?!?」
流石にまだそれはレベルが高すぎる!!!と、抵抗しようと思ったのもつかの間。両手を掴まれ、動かすこともできないし、先程のキスで完全に口の力が抜けてしまったしで、私はただただ彼女の侵入を受け入れることしかできなかった。
段々と熱を帯びていく口内では、互いの舌が絡み合っていた。その感触は初めてのもので、とても不思議な感覚がした。
その他にも舌を甘噛されたり、吸われたり。歯を舌でなぞっては、口内全体を舐め回したり。
初めてのディープキスは、私では到底できそうにもなくて、ただされるがままだった。
少しの息苦しさを感じつつ、彼女との甘く、熱い、濃厚なキスは、この先もずっと、忘れることはないだろう。




