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第36話

「――っち、四宮っち!」


やっと私が頼んだチョコケーキが届いた頃。お皿に乗っていたフォークで切込みを入れ、一口サイズにカットされたケーキを私は一心不乱に食べ始めた。何かすることで、内にある不安をどうにかかき消そうと必死なのだ。

そうして次々とケーキを口に運んでいると、正面から私を呼ぶ声に気が付いた。


「あっ、すみません!えっと、な、なんですか?」


そう聞き返すと、秋咲さん、いや、優さんは自身の左手の甲に頬を乗せ、右手を左手の二の腕に乗せた後、表情を崩して言った。


「うちね、思うんだ。青っちって四宮っちのこと好きでしょ?ならさ、別にそんな不安にならなくても大丈夫だと思うよ」


どうやら話の路線は青乃さんの方に戻ってきていたみたいだ。


「⋯そうですかね。でも、最近、レインですら会話が減ってきてて⋯」


「うーん、なにか理由があるんじゃないかな?少なくとも君への青っちの感情は、ちょっとやそっとじゃ揺るがないと思うけど」


「そうですかね、、」


「そうだよ!」


確かに、青乃さんは簡単に狙ったものを手放す人じゃないと思う。

自分で言うのもなんだけど、狙われる身になっている私が、一番それを知っている。

自分の狙ったもののためにあんな表情するんだもん。真剣だったり、はちゃめちゃな笑顔だったりさぁ。

そして、相手が気を許したところで一気に落とす。そんな人だと思う。だって距離の詰め方半端なかったし。


「⋯⋯確かに、なにか理由があるのかもしれませんね、」


そう優さんに言った言葉を、自身に何度も言い聞かせても、あんなに猛アタックしてきた子と全然話さなくなったという事実がそれらのプラスの考えをどんどん侵食していった。

私、なにかしちゃった?嫌われたかな。嫌だな、絶対。両思いだったはずなのに。いや、もう違うのかも⋯

マイナスの考えばかりが頭の中で広がる。

でも分かってる。結局答えなんて出ないんだ。自分たちで考えてる間は。


「⋯私、青乃さんに理由を聞いてきます」


「うん、やっぱそれが一番だよ」


優さんが立ち上がりながら言う。

いつの間にか食べていたはずのチョコレートケーキが無くなっていたことに気がつく。

無意識の内に全て食べていたらしい。まぁ、それどころじゃなかったからなぁ⋯


「ほら、お会計行こ!早く青ちゃんと話さないと!」


「⋯あの、優さんは私のことが好き⋯なんですよね?なぜ青乃さんとの恋を、その⋯」


「『応援するか』って?私、四宮っちのことが好きって言ったでしょ。好きな人には幸せになってほしいじゃん。君にはもう振られちゃったし、青ちゃんって想い人がいるんだから、もうそれ、応援するしかないでしょ」


今まで見て聞いてきた恋愛は、好きな人に想い人ができても、諦めないっていう人が多かったけど、その恋を応援する人もいるのだと学んだ。そう言う優さんの心境は優さん自身にしか分からないけど、少なくとも私は、その言葉が嬉しかった。


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