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第31話

「⋯よろしくね、黒宮っち!」


「は、はい!」


今の間はなんだったんだ⋯?

まぁいいや。とりあえず秋咲さんも来たことだし、そろそろ配信の準備始めよ。

と、ソファから降り、ドア近くに置いておいたカバンのところへ向かう。


「えっと、パソコン、マイク、それとコントローラーも⋯⋯」


これらは皆、事務所から借りることもできるできるけど、ほら、こういうのは自分のを使いたいじゃん。と、謎のプライドが私の中に仁王立ちしていた。

けどこれがまぁ、重くて重くて。うん、今度からは借りよう。そうしよう。

そう心に決めた私は、それらの機材を持って再びソファへと向かった。


ソファに座り、前にある机の上に機材を並べる。すると、秋咲さんもソファに座り、機材を並べ始めた。秋咲さんは、事務所から借りたものを使うみたいだ。

私の持ってきたものとは段違いの綺麗さを誇る機材たちに、先程の決心がより強まったのを感じた。


そうして、横にいる秋咲さんの手元を見ていたからか。前を見ていなかった私は、設置し終えたマイクの所にコントローラーを置いてしまった。互いに接触し、金属の、使い古されたマイクが床に落ちる―――のをキャッチしたのは秋咲さんだった。


「あっぶなぁ、」


すんでのところでマイクを掴んだ秋咲さんは、ゆっくりと机に戻しながらそう言った。


「すっ、すみません!!!」


かくいう私は、大先輩に手を煩わせてしまったことへの焦りから頭が真っ白になっていた。

すると秋咲さんが、細くするりと長い人差し指で、サラサラと流れる髪を耳にかけた。


「大丈夫だよ、黒宮っち。君に怪我がなくてよかった。」


相手を包容するような優しい笑顔で、そして落ち着いた優しい口調で言うので、ついドキッとしてしまう。

いつもの秋咲さんとは違う、少しおとなしめの、そう、大人な感じだ。


あ、なるほど、この人もしかして、大人の余裕で落とすタイプか?

ま、待ってくれ!わっ、私、大人の魅力に弱いんだよ⋯!

正直言って普段のはっちゃけた元気な感じと、この大人の感じがギャップ萌えなんだが!!?


「あ、接続完了!黒宮っちは接続できた?」


ギャップ萌えをくらった私に気づいていないのか、それともこれもギャップ萌えという作戦の一部なのかよく分からないが、秋咲さんはいつもの秋咲さんに戻っていた。

⋯まぁ、ただ単に心配していたからああいう雰囲気になっただけかもしれないし。

秋咲さんのことを完全に知り終えるにはどのくらいの時間が必要なのだろうか。底しれないんだよなぁ⋯と思いながら自分もパソコンを見る。そこには“接続完了”の文字が表示されていた。


「あ、接続完了しました⋯!」


「ん、じゃあもう待機曲かけちゃおっか」


「はっ、はい⋯!!」


つっ、ついにあああ、秋咲さんとのコラボ⋯!!!

いや、まさか二度目のコラボが大先輩とすることになるとは。


⋯⋯⋯あれ、にしても、もう始まるんだよな?

⋯やばい、やばいやばい!そう考えると緊張してきた⋯!

ど、どうしよう!一回目の時みたいに気絶しちゃったら!今回はホラー要素はないけど万が一のことがあるかもしれないし⋯!

例えば、ほら!えっと、私だけ下手で、コメント欄でめちゃくちゃに言われた時は、私そうとう凹むよ!?もしかしたら逃げちゃうかもしれないし!え、あれ、それって気絶以上にやばいことじゃ⋯⋯!


そう考えている間にも、待機曲が流れ、コメントが動いている。


はっ、始まる⋯!?どどどっ、どうしようー!!!

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