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第30話

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ⋯」


これが日頃運動していない代償か。

運動しようと決めても、翌日にはお菓子をバリボリ食べる私には、計画的な運動なんて到底無理な話なんだろう。

でして、今私は何をしているのか。

それは―――


「つ、ついたーーー!!!」


今日はなんと、秋咲さんとのコラボ当日!

ということで私は今レオレインの7階にある休憩スペースにいます!!

ここの自販機にあるカフェオレがこれまた美味いんだよなぁ〜


レオレイン7階は、ほとんどの部屋が配信スペースとなっていて、主に個人や少人数で使用している。

テレビ付き、充電ケーブル&充電器付き、マイクも完備という配信者にとって天国のような部屋が何個もあるんだ。さすが事務所!太っ腹!!


「えっと、確かG32室だったはず⋯⋯あ、こっ、これだ⋯!!」


自販機でカフェオレを買った後、桜見さんが送ってくれた7階の地図を参考に、7階を歩き回っていると、『秋咲薫殿 黒宮 怜殿』と書かれた紙が、ドアに貼られているのを発見した。

中に入ると、一番乗りのようで、誰かがいたような痕跡はなかった。


「まぁ確かに、遅れるのが怖くて早く来ちゃったからなぁ⋯」


ドア付近に置かれていたパイプ椅子に荷物を乗せる。

前回行った会議室とは違い、この部屋は、小さな一人部屋のようだった。

薄いオレンジ色の壁紙に、ほのかに赤いソファ。それらは、暖色系のあたたかな感じを帯びている。

荷物を置いた私は、さっそくテレビの前に置かれているソファに座ってみた。

ふ、ふかふかだぁ〜!!!

正直言ってこういう事務所の、しかも多分他の部屋にも置かれてるであろうソファはあまり期待していなかったため、想像以上のふかふか具合で驚く。流石レオレイン!素晴らしい!!

しばらくソファで一人、ボスンボスンと立っては座り、立っては座りを繰り返していると、部屋の扉が開く音が聞こえた。

後ろを振り返るとそこには、黒の大きなリュックを背負った、一人の女性が立っていた。

背丈は157くらいかな?黒髪ボブで、毛先を金髪に染めた彼女は、近くにあったもう一つのパイプ椅子にリュックを置き、私の方に歩み寄ってきた。

⋯は、はしゃいでるの見られた⋯⋯!!!

かくいう私は、子供っぽいところを見られた恥ずかしさで、頭がいっぱいになっていた。


「あの、黒宮っち?」


背もたれ側に向きを変え、腕を置いた私よりも少し高い位置から声をかけられた。

人を引き付けるはっきりとした声色は、私の知っている人のものだった。


「―――あ、秋咲さん!!?」


「そうそう、秋咲薫!君、黒宮っちだよね!?」


「はっ、はい、そ、そうでございます」


初めて実際に会ったにも関わらず、一気に距離を詰められ、ついたどたどしく答えてしまう。


「あの、レイン交換しませんか!」


⋯陽キャ、怖い!

青乃さんもそうだけど、なんで陽キャはこんなにも人との距離が近いのか。自分が持っていないその特性に、嫉妬と尊敬が心の中で入り混じる。

そんな事はお構い無しに、期待の眼差しをビシビシと伝えてくる彼女に圧倒された私は、ポケットの中に入れていたスマホを取り出した。


「よっしゃー!黒宮っちのレインゲット!!」


「よ、よろしくお願いします⋯!」


「よろしく!って、あ、黒宮っちって何歳なの?」


「に、26です⋯」


「ならうちの3歳下かぁ、なるほど、年下ねぇ」


「⋯あの、どうかしたんですか?」


そう言いながら不敵な笑みを浮かべる彼女に対して、素直な感情を口にする。

にしても3歳差ってことは、29かぁ。もうすぐ30じゃん。

⋯凄いなぁ、そんなにV続けてるって尊敬だよ。いまだに人気も凄いし。

私も頑張らないと⋯!!

そう思っていると、ふとあることを思い出した。


そういえばこの人、私のこと好きだったよな⋯?


普通に先輩Vとして話してたけど、そうじゃん!そうだった!!

しかもバンバン落としに行くって言ってたし!

そうだ、そうだった⋯!

今は青乃さんの事で手一杯。なのに秋咲さんまで私が好きという状況に今一度頭を悩ませる私であった。


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