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第3話

配信用のパソコンに張り付き、彼女の配信動画を探す。

急上昇中というタグが貼られたサムネイルをクリックすると、30秒ほどの広告が入った。

その間にマウス横にあったマイクを別の位置に移動させる。よし、準備は整った!

広告が終わり、配信画面が表示される。

配信画面の右上には今回の配信でのスケジュールが表示されており、今は雑談タイムだ。

青晴はどうやらラーメンが好きらしく、今はラーメンの話をしているけれど、コメントにはまだ、「告白」「好きな人」という文字がちらほら見える。

⋯にしても、すごい投げ銭の数だな⋯これ私、投げ銭額も抜かされてないか!?


「くぅぅ⋯」


下唇を軽く噛みながら配信を聞く。


「いやぁ、ねぇ、私はやっぱり豚骨ラーメンが好きなのよ。分かる?ん?異世界にもラーメンはあったかって?いやいやぁ、ラーメンはこの世界だけだよ。もう私向こう戻りたくないわ〜」


〈コメント欄〉

「戻らないで!」

「青晴はラーメン好き、メモメモ」

「告白っていつした?リスナーたち、解答求む」


なんかいろんなコメントが混み合っていてカオスだな。

ていうか青晴、なんかいつもよりゆったりしてるような⋯いや、いつも通りか?

⋯⋯あ、そっか!浮かれてるのか!浮かれてこうなってるのか!なるほど、なるほど。

にしてもラーメン好きとは。これはなかなか気が合いますな⋯⋯


青晴—いや、青宮 晴はこれまで、「先輩」「後輩」「他事務所」「個人」などなど、特定の枠を超えて、いろいろな人とコラボしている。

新人なのにこりゃまたすごいよなぁ。まぁ彼女自身いろんな人と交流するのが好きらしいけど、それでもこの3年間、最初の1回しかちゃんとコラボをしていない私からすれば、本当にすごい事だと思う。

また、枠を超えてコラボしてきたおかげか、「レオレイン」を名前だけ知ってる人でも「青宮 晴」というVTuberは知っているという人も多い。


んん?待てよ、こんなコラボ上手、いや、コラボプロの青晴だったら、もしかしたら私の口下手も上手くフォローしてくれるのではないか?

⋯ふふふ、我ながら天才か?

もうこの際、コラボして登録者が増えるのだったら、後輩でも、なんかいろいろ抜かされてたとしても、関係ない。

よーし、早速今日の話し合いで、青晴とコラボしたいって言お〜!言っちゃお〜!


目標を突破する未来がもう目の前にあると思うと、テンションが上がる。

しばらくの間、この気持ちのまま配信を聞いていると、私はふと配信を開いた本来の目的を思い出した。


「そういえば私、青晴の告白場面見に来たんだった⋯!」


急いでマウス横にあったスマホに手を伸ばす。

開いたままのトゥイッターには、スワイプして見つけた「青晴 告白」というハッシュタグのついた、一番古い投稿が表示されている。

その投稿がされた時間帯を確認し、配信を数分遡って見てみる。



「あー、ほんとに実感無いなぁ〜いやぁ、超えちゃったなぁ」


〈コメント欄〉

「超えたって何?」

「壁の話かい?」

「30万人おめでとー」


「いや、そういう⋯うーん、まぁいっか!なんか変なこと言っちゃいそうだし!」


〈コメント欄〉

「なになに!」

「気になるんだが」

「言っていいぞ、ワイが受け止める」



コメントでは、まだ告白に触れている人はいない。巻き戻しすぎちゃったかも。

⋯ていうか、あれ、酔ってる?さっき見た時はこんなに酔ってなかったんだが!朝から大丈夫なのか、これは⋯

もしかしなくても、告白ってこれ、酔った勢いで言ったのでは⋯⋯

うっ、私も配信中にお酒飲む時は気を付けよ⋯

そう自分に言い聞かせながら、配信とコメントを交互に見続ける。



「青晴って次はどんな目標立てるの、ってぇ?えへぇ〜そうだなぁ。うーん、あの人⋯じゃなくて、えっと、とりあえず40万人突破したいかな」


〈コメント欄〉

「あの人って誰?」

「40万人か!応援する!」

「あの人とは、ちと詳しく求む」


「うっはぁ〜やっばぁ、やっぱ流されてくれないかぁ。えぇ〜これ言わなかったら週刊誌に取り上げられちゃう感じぃ?きゃ〜怖いー」



これはだいぶ酔いがきてるなぁ⋯

それにしても、今言った「あの人」が告白に関係してるのかな⋯?

ていうかやっぱ配信が上手いっていうか、どこか落ち着いてるっていうか、少なくとも私がこの状況だったら焦り散らかして配信切ってそう⋯



「えぇ〜まぁ、ねぇ、私ずっと追いかけてる人がいてさ〜、今回30万行ったらちょっとは意識してくれるかなぁ〜って」


〈コメント欄〉

「もっと詳しく」

「目標の人がいるわけか」

「その人に追いつきたいってこと?」


「いやぁ、追いかけてるってのは、ずっと配信追ってるってこと〜」


〈コメント欄〉

「あぁ、そっちね」

「誰だろ、レオレインかな?」

「もっと詳しく」



へぇ〜青晴にも好きな配信者がいるのかぁ。

うーん、VTuberなのか?それとも、ゲーム実況者とか?あ、最近はスマホで配信できるアプリもあるからなぁ、もしかしてそれかも⋯って、多すぎて分からん!



「ん〜?もっと詳しく?んー、まぁ、その人はVTuberかな。」


〈コメント欄〉

「なるほど、相手はVか」

「青晴も俺等と同じオタクだったのか」

「にしても青晴が推してるVTuberって誰だろ」



なるほど同業か!

もしかして、私が会ったことある人かも⋯って、それは無いだろうな。片手で数えられるくらいしかいないし。

それにしてもあの青晴が推してるVか⋯⋯私も推してみようかな。ご利益ありそうだし。



「んん〜?推してはいないよ」


〈コメント欄〉

「ん?」

「そうなのか?」

「どういう?」


「普通にガチ恋。誰にも見られたくないから、推してはいないかなぁ」


〈コメント欄〉

「え」

「んん?」

「おっと、これは⋯」



⋯⋯あ、これか!!!!!

驚きすぎて一瞬固まっちゃったよ!

告白ってこれか!これだよな!?

ははぁ〜あの明るくて元気モリモリ!みたいな青晴が、まさかのガチ恋勢だったとは。

いやぁ、世の中何があるか分かりませんなぁ。



「ん〜あれ、なんかコメント流れるの早くない?ん?「ガチ恋」「告白」⋯⋯って、え。⋯⋯⋯もしかして、言った?」


〈コメント欄〉

「言ったよ」

「ガチ恋勢ワイ、どうすればいい」

「↑一緒に青晴応援するぞ」


「⋯⋯やっば、酔い覚めたわ。え、私もしかしなくても言っちゃった⋯感じだよなぁ。あー、まじかーーー!!!⋯⋯⋯よし!もうこの話は終わり!うん!何話す?おっけー、好きな食べ物の話しよっか!」


〈コメント欄〉

「こんな焦ってる青晴初めて見たわ」

「焦ってて可愛い」

「大丈夫だよ、ワイらは青晴応援するで!」


「もう皆、早く好きな食べ物教えてよー!!」



マウスを動かし配信を止め、椅子の背にもたれかかる。

⋯⋯なるほど、だからラーメンの話してたのか。にしても、あんなに焦ってる所、初めて見たな。

でも安心してくれ、青晴ちゃん。きっと、いや、絶対、私の方がもっっっっっと焦るから!!!

うん、もうすぐさま配信切るよ。だから配信やめなかった君は偉い!すごいよほんと!

幸い、さっきのトゥイッターの感じからも、炎上とかはしていないし、青晴のリスナーのほとんどは青晴を応援している感じだ。一部ガチ恋勢はショックを受けているけれど⋯⋯


にしてもそっかぁ〜改めて誰なのか気になるな。

まぁ多分、ガチ恋っていうくらいだから、話し上手でゲームも上手くて、いろんな人とコラボもしてて⋯って、あれ、青晴じゃね?いやいやいや、流石に自分にガチ恋ってのは⋯⋯あるのか?青晴ならまぁ、何があってもなんか納得しちゃいそうだけど。

うん、まぁ少なくとも好きになるくらいだ。きっと完璧な人で、私とは雲泥の差なんだろうなぁ。


そう思いつつ、配信画面を閉じる。

無事に告白シーンが見れて何よりだ。きっともうすぐ切り抜きも投稿されるだろうなぁ。いや、もうあるかも⋯

まぁトレンドになった時点で炎上もしてなかったし、逆にトレンドにもなったことで話題をよんで、登録者がもっと増えるのでは⋯⋯

すぐに遠くに離されてしまう未来が容易に想像できて、もう嫉妬の思いすら出てこなくなった。


「あぁー。⋯まぁ、私は私のペースで頑張るって決めたし!」


昨日決めたことを口ずさみ、椅子から降りる。

飲み終わった野菜ジュースを潰してゴミ箱に入れ、私は1時から始まる桜見さんとの話し合いにむけ、準備を始めた。



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