第25話
⋯この不安はなんなんだ、どうして消えないんだ⋯?
ほんの少し残っていたお茶を捨てた後、食べ終わった食器を洗ったり、ソファに寝転んでダラダラとテレビを見たりしたものの、未だに頭の片隅にある“もや”が消せないでいた。
「友達と一緒に食べに行く」、青乃さんがそういった時に私の体は重くなった。
⋯もしかして私は嫉妬しているのか?
一緒に食べる友達がいる青乃さんに?⋯いや、青乃さんと食べに行くその友達に、なのか?
……もう分からん!なんなんだこの感情は!今まで人と触れ合ってこなかったせいか対処法が思いつかん!!
⋯ていうかなんだよ、友達に嫉妬って。だって私にとって青乃さんは可愛い後輩じゃん!私のことが恋愛的に好きって言っても、私にとって可愛い後輩には変わりなかったじゃん!私は青乃さんをそういう、恋愛的な目では見てないし、だから普通に友達の所に行ってくるって言った青乃さんを笑顔で送り出せる。…はずだったのに、なんで、できなかったんだろう、
ソファの上で自問自答を繰り返していると、ふとあることを思い出した。
「あ、秋咲さん」
そういえばコラボの誘いが来てたんだった。
そんな重要なことも忘れるくらい、今抱えてるもやは、大きいのかもしれない。
コラボについて、青乃さんは別になんとも思っていなかった。
コラボの話を切り出した時のことを思い返す。少し黙り込んだ後、なんとも無いようにいつもの笑顔で「行ってらっしゃい」と言われたことを思い出す。
すると、今まで止んでいた、あのヤンデレ部分が再び出てきそうになったので、急いで別のことを考え始める。
「⋯…にしても、コラボかぁ」
同じ配信画面に、私と秋咲さんの2人がいる事を考える。
うっ、隣りに座る人の貫禄が凄い⋯⋯
でも、この人とコラボしたら絶対に登録者数が増える。
実際、青乃さん――青宮 晴とコラボした結果、急激に登録者数が増えた。たった一夜にして1万人も増えた。いや、凄いな人気V効果…!!
初めてトレンドにも入ったし、私の映った切り抜きも、今までより断然に増えている。まぁそのほとんどが、あの告白シーンなんだけど、まぁそりゃ切り抜かれるわなぁ。
私は、最初に掲げた目標を思い出した。
“登録者数30万人を突破して、3D配信をする”
この目標を突破するためには、やっぱりコラボが一番らしい。今回のでそれは証明されたし、秋咲さんとのコラボは絶対にやったほうがいいのは重々分かっているんだけど⋯⋯つい、青乃さんがちらついてしまう。
って、だからなんで青乃さんが出てくるんだ!?確かに「あれ、そんなあっさり?」とはちょびっと思ったけど、別にあり得ることじゃん!だってあの子優しいし、いくら恋敵だったとしても、私の意見を尊重してあんなに笑顔で見送ってくれるんだよ!?
そうじゃん!きっとそうだよ、青乃さん、優しいもん!
よーし、そうと決まったら、秋咲さんとコラボしよう!そして、
──彼女の背中に少しでも追いつきたい
最初は同期と、と思っていたが、気づけば彼女とも肩を並べたいと思うようになっていた。
さっそく私は桜見さんに電話をかけた。
最初は偽物ではないかと疑っていた桜見さんは一度私との電話を切り、知り合いであるという、秋咲さんのマネージャーに電話をかけた。
その後、コラボの話が本当だと知ると、特に断る理由もないと、私の気持ちを尊重してくれ、無事にコラボ許可も取ることができた。
ホラーは絶対しないようにと口酸っぱく言われたけど⋯…
電話を切り、無事にコラボが決まった事に安堵した私は、再びソファにダイブした。そして、もうすぐ12時を指す時計を眺めながら、段々と襲い来る睡魔に負けた私は、再び眠りに落ちた。




