第23話
「レオレイン所属VTuberの秋咲 薫です。怜様の配信を拝見しまして、是非ともコラボの誘いをお願いしたく、メールさせていただきました。ご検討の程、よろしくお願いします。
追記 体調大丈夫ですか?」
…これは、本人なのか?
配信とは違う文体に困惑する。しかしよく見てみると、確かにメールは“秋咲 薫”から来ているものの、追記のさらに下に、マネージャーと思われる人の名前が書いてあった。
あっ、なるほど、解釈一致かも。
レオレインに入るにあたり、秋咲薫の名前は私の耳にも当然入っていた。配信も少しは見たと思う。当時は雲の上の存在として、所属してもコラボすることは無いだろうとあまりこの人の配信を見てこなかったものの、まさか今になってコラボのお誘いが来るとは…
しかも、告白の後って!!!
いや、告白なのかはまだ分からないけど私にとっては告白も同然だよ…!!
……うーん、コラボを受けるべきか受けないべきか。私が今コラボしても話すことがあるだろうか。青晴はまだ可愛い後輩だったけど、今回は喋ったことの無い大先輩だ。もし失礼なこと言った暁には、炎上するかもしれない…!
そうなったら人生詰むよぉ!!
……青乃さんはどう思うだろう。
青乃さんは大丈夫なのかな、他の人とコラボしても………って、何考えてんだ私!!
なんでここで青乃さんが出てくる!普通そこはマネージャーの桜見さんだろ!?
……まぁでも、うん。人気Vの意見を聞いてみるのはありかもしれない。
とりあえず、今日はもう遅いし、メールの返信も、桜見さんに伝えることも明日でいっか。
スマホの電源を切り、枕元に置く。
そして私はこの時、大切な事を忘れていた──
「──はっ!!!」
目を覚ました私は今の時刻を確認する。
9:10と書かれたスマホのホーム画面をスワイプし、目覚ましアプリを起動する。
………目覚ましかけるの忘れてた!!!!!
起き上がり、辺りを見渡すも青乃さんの姿が見当たらない。帰ったのかな、そう思ってレインを開いて確認しようとすると、リビングの方から音が聞こえた。
オーブントースターの音だ…!
ベッドから降りて、急いでリビングに向かう。
リビングの扉を開けると、元気な声が聞こえてきた。
「あ、四宮さん!おはようございます!」
声のしたキッチンに目線を向けると、Tシャツと黒のスウェットパンツを着ている青乃さんが、朝ごはんを作っているところだった。
「お、おはよう!」
挨拶をして、キッチンに駆け寄る。青乃さんの隣に行き、覗き込むとそこには、目玉焼きが乗った食パンと、コーンスープが出来上がっていた。
「すみません、勝手にキッチン使っちゃって、、1回聞こうと思ったんですけど、四宮さんがぐっすり眠っていたので、起こすのが申し訳なくって…」
そう言って斜め下を向く彼女に
「いや、私がアラームをセットしてなかったのが悪いし、朝ごはん、ちゃんと食べててくれて安心したよ、、私のせいで抜きとかになるとそっちの方が辛いし。」
と言う。するとまた、チーン、とトースターの音が鳴った。
「あ、青乃さんの分も作りましたけど、食べます?」
トースターに駆け寄った彼女が、中身を確認したあと、私に向かって笑顔で言う。
「あ、ありがとう!食べる…!!」
そうして彼女は、慣れた手つきで目玉焼きを乗せた。
その隣で私はコーンスープを作る。と言っても、コーンスープの素とお湯を混ぜるだけなのだが。
──トンッ
軽く方が触れ合う。
ドキッと心臓が脈をうった。
その理由がなんなのか。深く考える前に、私は目の前のコーンスープに全神経を集中させた。
初めての友達の手料理は、とても美味しかった。目玉焼きに塩コショウがかかっているのか味が濃く、濃い味が大好物な私の口にはとても合った。
それに比べ、全力を注いだはずのコーンスープは見事に味が薄かった。
2人ともが食事を食べ終えた頃、私はふと夜のことを思い出した。そして、彼女にそのことを伝えることにした。
「…あの、青乃さん。ちょっと、いいですか……?」




