第22話
「えー、それって黒宮っちのお胸触った感じ?」
「むっ!胸は触って⋯ないですよ!!」
「何今の間、うち気になるんだが〜」
あっ、ちょうどここか!
にしても、この青乃さんのまんざらでもないような言い方⋯⋯やっぱ何かしたのか?
いやいやいや、助けてもらったのにその考えはダメだよな。多分、その行為にもなにか理由があって⋯⋯あったのかな?
⋯⋯まぁいっか、続き見よ。
「にしてもさぁ、青ちゃんって黒宮っちのこと好きなんだよね?」
「はい、好きです、大好きです。」
んん!!?
いきなりその話題来るのか!?ていうか青乃さんもそんな真剣な声色で言わなくても!!
でもまぁ、確かに気になるわな。盛大に告白してたし⋯
⋯ていうかこの子、大先輩相手にあんまり緊張してなくない!?凄いよほんと!!
⋯やっぱり分からない。なんでこんなに凄い子が私なんかを好きになったのか。
いや、凄く好きなのは伝わってくるんだけど、その、どうしてそこまで好きになったのか、知りたい――
この気持ちは、普通、だよな⋯⋯?
「おぉっ!いいじゃんいいじゃん!!」
「でもまだ、これからです。思いは伝え終えたんで、あとは惚れさせるだけです」
「いいねぇ、初々しぃ〜――でもね、私、さっきの配信見てて思ったんだ」
「どうかしました?」
「⋯⋯黒宮っち、可愛いね」
「うえっ!!?」
思わず声が出てしまった。
え、え、え、ななななんで!?え、ちょっ、ま、まっってくださいよ!!
「んん⋯」
隣で寝ていた青乃さんが目をこすりながら言う。
急いでスマホの電源を切り、仰向けのままベッドに身を委ねたものの、青乃さんはそのまままた眠りに落ちていった。
⋯ふぅ、危ない危ない。危うく起こしてしまうところだった。
⋯にしてもあれは、驚くでしょ!!!
え、だから青乃さんは見せたくなかったのか!?ていうかこれ、私二人からす、す、好きって言われてるってことか⋯!?
いやいやいや、でも秋咲さんと私、一回も絡みなかったし、え、あの配信で好きになったのかな?
いやでも、まだ分からない。さっきの「好き」はきっと、普通に一ファンとして好きになったということだろう。
そうじゃん!そういうことかぁ。ならまぁ納得できる。
「⋯⋯どういうことですか」
いつもより低い声で少し驚く。怒っ、てるなぁ、、、
「ん?いや、なんか青ちゃんには渡したくないっていうか」
あ。
――確定演出来たかもです。
⋯いや、これはもう、確定ですかね。自意識過剰かもしれないけど、これはもう確定でいいんじゃないですか。
つまり、事務所の大先輩 → 私 ← 人気絶頂中の後輩、ということになりますかね。
⋯⋯⋯いやなんで私なんだよ!!?
さっきも思ったけどさぁ、なんで二人して私のことが好きなの!?ねぇ、ここに来て一生分の恋愛運使ってる!!?
こんな地味で根暗な陰キャで、人見知りするし、配信もいまだに緊張しちゃうような私を、なんで寄りにも寄ってこの二人が好いてるんだ⋯!!?
あ、コメントがめっちゃ早い。
⋯つまり青乃さんはこれを聞かせたくなかったのか。
にしても私、明日からどうすればいいんだ⋯?二人の思いに応えるべきなのか?
⋯秋咲さんには悪いけど、会ったことないからなぁ⋯。でも、青乃さんは実際に会って、一緒に配信して、一緒に寝て⋯⋯
でもやっぱりまだ私の中では可愛い後輩な気がする。
でも、この思いを伝えてしまったら、今のような関係に戻れるのだろうか。始めてできた友達、始めて一緒にお泊りもした。
――崩れるのが怖い。
⋯⋯まぁ、すぐに答えは出さなくてもいいのか?青乃さんも聞いてこなかったし。秋咲さんだって、実際には言われてないし。
⋯まぁ、今日はもう寝よう。
そう思い、動画アプリを閉じる。
すると、一件のメールが来ていたことに気がついた。
―――え?
そこには、“一緒にコラボしませんか?”という言葉とともに、“秋咲 薫”という名前が書かれていた。
なななんと!あの秋咲さんからコラボの誘い――!?
次回、四宮はどうするのか!!?




