第21話
私がミノムシと化した後、そういえば二人ともまだお風呂に入っていないことに気づき、先に青乃さんに入るように言った。
青乃さんの一緒に入ろう、という熱心な誘いを断った私は、私の番がくるまで、何かできることがないか考え、寝る準備を始めることにした。本当なら、配信が終わる9時頃には始めていたかったけどぶっ通しで寝ていたのでしょうがない。
にしてもほんと、晩御飯は各地で食べてくる事にしといて良かったと心から思う。
じゃないと、夜中にご飯を食べることになってたからなぁ。最近少し太ってきたのを日に日に自覚させられるよ、ほんと。
ズボンのチャックは閉めづらくなるし、風呂場の鏡に映る自分の腹は前よりもポヨポヨになってきてる気がするし⋯⋯
そんな事を考えていると、洗面所からリビングまでの廊下から、鼻歌交じりの足音が聞こえてきた。
「四宮さ〜ん!タオル、ありがとうございました!」
勢いよくドアを開けた青乃さんが、タオルで髪を拭きながらこちらに歩いてきた。
いつものセットした髪が、水を浴びてぺしゃんこになっている。新しく見る、彼女の一面。大人っぽさが薄まり、幼さが増した彼女に、私の心臓は少し速くなった。⋯これは、友達の新しい一面が見れて嬉しいから!と、鼓動が速くなった事に何かしら理由をつけようとしたが、上手くつけられない。とりあえず⋯⋯
「⋯私もそろそろ、お風呂入ってこようかな」
「分かりました!⋯って、なんでソファに枕を?」
「え、あぁ、今日私ここで寝るから準備を、と」
「えっ、寝室で一緒に寝ないんですか!?」
「あれシングルベッドだよ!?」
シングルベッドで一緒に寝るって事は、めちゃくちゃくっつくという事だ。無理無理!恥ずかしいって!!いびきとか、寝相とかもさぁ、悪いかもしれないし!
「寝ましょう!」
「寝ませんって!」
「…だめ、ですか?その、私、一人で寝るのが怖くて、、」
青乃さんが、服の裾を両手で握り、俯きながら言う。それがまるで寂しがりな子犬のように見えて、結局放っておけずにOKを出してしまった。
私って案外ちょろいのかもしれない。
お風呂から上がると、ソファに置いてあった枕が無くなっていた。
「四宮さん、寝る準備は整いました!いつでも寝れますよ!!」
「早いなぁ」
ドライヤーと歯磨きを終え、私は青乃さんと一緒に寝室へ向かった。
そして布団に入り、自分の体をできるだけ壁側によせ、少し経った頃、私は思った。
…あれ、青乃さんって私の事好きなんだよな?もしかして、一緒に布団に入るということは……
恐る恐る右隣にいる彼女の顔を伺う。
──寝てる!?
「はぁ…」
一瞬最低なことを考えた自分に呆れつつ、彼女が本当に寝たのか確認する。
体の向きを変えてみても動かず、一向に起きる気配がない。
青乃さん、ごめん……さっきのことを思い出しながら彼女の後ろ髪に触れる。
…サラサラしてる。私と同じシャンプー使ったよね?これが髪質の違いか、、などと思いながら少し弄ったあと、俯きになった私はスマホを開いた。
明るさを調整し、事前にポケットに入れておいた有線イヤホンを取り出す。
気づくともう12時を回っていた。
じゃあ見ますか。
私は動画アプリを立ち上げ、検索をかけた。




