第13話
「そ、そろそろ考えましょう!」
「⋯そうですね!」
パンケーキを食べ終えた青乃さんが大きく頷いて言う。
クリームが少し頬についていたので軽く拭き取り、話し合いを始めることにした。
「ーーーって、どうしたんですか⋯?」
「いっ、いや、その⋯なんか、甘やかされてるなぁ、と」
「⋯あっ、もしかして触られるの嫌だった!?ごっ、ごめん!!」
「いや、嫌じゃなくて!逆にうr⋯⋯大丈夫ですから!」
「良かったぁ、、私、実は妹がいてですね、なんか青乃さんに重なっちゃって⋯⋯」
「そうなんですか!20歳くらいなんです?」
「そうですね⋯あ、4月でちょうど22歳ですね」
私には年の近い妹がいる。名前は四宮 伊織。
3つ違いで、私と違い、ドジ属性が強く、そして周りに人が集まるタイプ。愛されキャラ的な感じかな?
まぁそんな妹だが、同業でもあるんだなこれが。
大手VTuber事務所「レオレイン」に匹敵する人気を誇る大手VTuber事務所「えがおプロダクション」略して「えがぷろ」は、女性ライバーのみで構成されている事務所であり、そこで伊織、いや“華城 優”は王子様キャラで活動している。
" 華城 優-kashiro yu えがおプロダクション:5期生 登録者数 63万人 "
今年で活動2年目だっけ。
でもレオレインよりも所属するVが少ないから、リスナーに多く見られやすかったり、可愛いライバーが多い中、活動当初はガチのイケメン枠が彼女一人だったことから、活動3年目の私よりも登録者数が上なんだよなぁ。
⋯えがぷろかぁ。あそこの子、皆可愛いよなぁ。なんかキャッキャしてるっていうかキラキラしてるっていうか。いや、レオレインもそりゃ面白いけど、女の子のみのあの空間は、レオレインとはどこか違うんだよなぁ。
⋯⋯あれ、ていうか私、青晴がえがぷろとコラボしてる所、1度も見たことがないぞ?
他の事務所とはコラボしてるけど⋯あ、もしかして新人だからかな?いやでも社長が今の波に乗らないっていうのは考えづらいし⋯もしかして、不仲なのか!!?
⋯もしそうだとしたら、今ここで妹の話をしては危ない⋯!
「あ、あー、それにしても、何しようかー。うん、私はゲームがいいな。」
「なんですか?その喋り方。ていうか四宮さん、ゲーム苦手じゃないですか。」
「えっ、よく知ってるね」
「だから、ファンなんですって」
「いや、知ってるけど、やっぱりまだ実感が⋯」
「まだ言ってるんですか、まぁこれから痛いほど分かりますよ。」
「そ、そうなんだ、なんか怖いな⋯」
「うーん、なら最初は雑談とかどうです?」
「無理無理、それは無理!私ぜんっぜん話盛り上がらないよ!?」
顔を左右にぶんぶんと振りながら言う。初手で雑談は、早々にリスナーが去る未来が見える⋯!
⋯しょうがない。苦手だけど、やっぱりここは⋯
「ゲ、ゲームしましょう!やっぱり、ゲームを最初にしましょう!」
「⋯まぁでも確かに、ゲームがいくら下手だとしても逆にそこが面白いってなりますもんね」
うっ、やっぱ下手なのか。いやまぁゲームプロ並みの青乃さんから見たらそうかもしれないけどさ⋯いや、素人目でも十分下手か⋯⋯
いくらプレイしても上がらない自分の実力に対し、なんとも言えない微妙な気持ちになる。
この後は普通にゲームの内容を話し合い、最初は戦闘はやめとこうという事で、2人で協力できる脱出ゲームをすることになった。まぁ多分ほとんど攻略は青乃さんがやってくれるだろうけど。だって医学部卒じゃん。
「いやぁ〜無事に決まりましたね!じゃあ後は私がさくちゃんに連絡しときますよ。」
「あ、ありがとうございます!⋯なんか、楽しいですね。私、コラボってこれまで全然したことなくて、だから内容決めるだけでもこんなに楽しいんだって知れて、なんか嬉しいです。本番、緊張しますけど、頑張りましょう。」
今日は本当に楽しかった。初めてのV友と、っていうのもあったと思うけど、それ以外にも、自分が事務所所属のVTuberで、コラボできる人が事務所の中にもまだたくさんいて、最初に事務所に入った時のあの、ワクワク、キラキラな期待の気持ちがまた湧いてきた。
なんかもう、今日はぐっすり眠れそう〜!
少しずつ芽生えてきた、新たな出会いに対する期待で胸を膨らませ、私はその夜、爆睡した。