第12話
「⋯⋯って、あっ!まだ内容決めてません!」
しばらく時間が経過したあと、私はふと思い出した。コラボの内容を決めるために、今回カフェに集合したんだ。
でも、普通に楽しいしこのまま談笑続けてても⋯って思ったらどんどん引き伸ばされてしまう!初コラボ、必ず成功させるためにもここはちゃんと決めておかねば⋯!!!
そう決意した矢先、談笑で私の気が緩みきっていたのか、ゆったりと時間が流れる2人の空間に、私のお腹の音が鳴り響いた。
「あっ、そのっ⋯!!」
「やっぱり何か頼むべきですよ!ほら、いろいろありますよ!」
軽く微笑みながら答える青乃さんがメニューを渡してくれた。
お腹が空いているのは事実なので、私も何か注文することにした。
「おまたせしましたー、パンケーキになりまーす」
「あっ、ありがとうございます!」
店員さんにお礼を言った後、私の目の前に置かれたパンケーキに視線を移す。
想像していたよりも大きく、食べごたえがありそうだ。
焼き立てのパンケーキに少し溶けたバターとクリームの香ばしい香りが、もともとあった食欲をより一層引きずり出してくる。
「ん〜めっちゃいい香りですね!私もそれ頼もうかなぁ、いや、でも他にも気になるものが⋯!!」
私のパンケーキを見て食欲が湧いた青乃さんは、ジュースにプラスして何かガッツリ食べれるものを探している。
このパンケーキを頼むか、それとも他のものを頼むか、とメニューを葛藤している青乃さんに、私は食べていた手を止め、一つ提案をした。
「あの、一口あげましょうか?食べかけですけど⋯」
「えっ!?いいんですか!?ありがとうございます!」
食べかけなので遠慮されるかもと思っていたけど、あんまり彼女には関係ないみたいで、即答された。
握っていたナイフでふかふかのパンケーキに切込みを入れ、もう片方で握っていたフォークを使いとろけたバターとクリームをトッピングする。にしても、ご飯分け合うってなんか友達みたい〜!ひゃー、楽しい〜!!
「えっ、そんな、いいんですか!ありがとうございます!じゃあ、いただきーーーーーへ?」
急に青乃さんが固まった。
どうしたんだろう?あ、もしかして“あーん”は子供っぽかったかな?うっ、ついはしゃいでしまった⋯!
パンケーキを出していた手を引っ込める。
「あっ、えっと、食べます!“あーん”でください!」
すると、彼女が強くそう訴えてきた。
えっ、いいの!?もしかして青乃さんもはしゃいでるのかな?それともそんなにお腹が空いているのか⋯まぁいっか!
引っ込めた手を、もう一度差し出す。
「いただきますっ」と言いながら体を前に倒し、パンケーキを口に頬張る。
「んん〜、んーんーんんん」
何を言っているか分からないけど、彼女が美味しそうに口いっぱいにもぐもぐしているのを見て、私も自然と頬がゆるむ。
今日は何回癒やされたか⋯可愛い後輩って恐ろしい⋯⋯
「よし、決めました!私もパンケーキにします!」
パンケーキを飲み込んだ後、彼女は宣言するかのごとくそう言った。
店員さんを呼び注文をする姿を見ながら、私はパンケーキを黙々と食べ続ける。
注文し終えた青乃さんがこちらに視線を移す。頬杖を着き、愛おしそうに眺めている。
多分、さっき食べたパンケーキの味が恋しいんだろう。分かる。これは美味しい。
そう解釈し、私はバターの染み込んだクリームたっぷりのパンケーキを頬張った。




