私だけが貴方の愛の重さに気づかない
ちょっとした言葉と何気ない行動で感じる愛
愛重め同級生男×違和感無し女
執着愛★★★★☆
それでも良い方どうぞ↓
私の世界は、妹を中心に回っている。
可愛くて、周りからチヤホヤされて育った妹に叶えられなかった願いはない。
妹も、叶えられて当然だと思っている。
「お姉ちゃん、私、ソレ欲しい。良いよね、もらって。」
私の宝物ですら、遠慮なく奪っていく。
どれだけ拒否しても、全ては妹のためだと取り上げられていく。
私のモノなんて、一つもない。
もう、残っていない。
「…………。」
「凪!」
いや、一つだけ残ってる。
「宗一郎……おはよ。」
「おはよ!朝から凪に会えるなんて、今日めちゃくちゃ幸先良いな!」
「大げさだなぁ。」
学校生活を送る中で、欠かせない人。
私の唯一無二の“彼氏”だ。
「な、な、今日バイトは?」
「休みだよ。」
「お!?じゃあさ、じゃあさ、この前話してたパフェ食べに行かね?」
「行きたい!」
「決まりな!じゃあ、迎えに行くから教室で待ってて。」
「うん、わかった。」
明るくて、元気で、学年の人気者。
そんな彼に告白された時は、なんの間違いかと思ったけど……。
『私と仲良くなっても、妹と接点はもてませんが。』
『へ?妹??なんで妹??』
『???妹に声かけたくて私に告白してきたんじゃないの?』
『え、違う違う!!俺の渾身の告白、そんな勘違いで終わらせんのやめて!!俺ちゃんと、好きなの!!』
『ご、ごめん……。』
『ごめん!?そ、そうよな……やっぱ、俺みたいなタイプは嫌いでしたか……。』
『ち、ちが……!!勘違いしてごめんって意味で!!』
『え、じゃあ俺のこと好き??』
『大好きです!!……あ。』
『よっしゃー!!!!』
始まりこそグタグタだった私達も、付き合って一年とちょっと。
下の学年に妹が居るから、妹と接点を持つために私を懐柔しようとする連中が多くて人間不信になってた自覚はある。
だからこそ、本当に申し訳なかったし、嬉しかった。
「なぁに笑ってんの?」
「宗一郎に告白された時のこと思い出してた。」
「あー……アレはマジでショックで寝込むかと思ったわ。」
「う……ごめんね、本当に。」
「良いよ。俺もタイミング悪かった自覚はあるし。」
宗一郎が楽しげに笑う。
その横顔を見つめているとつくづく思う。
どうして、私なんかを選んでくれたんだろって。
「宗一郎、私のこと大好きだよね。」
「な、なんだよ。藪から棒に。」
「私、無愛想だし、外見的にも目を引くものない自覚あるし、突出した特別な何かがあるわけじゃないから。私は私があまり好きじゃないけど、宗一郎はそんな私でも好きって言ってくれるから、不思議だなぁって。」
「は?そりゃあ、人は見た目が百パーセントとか言うけど……。」
戸惑った様子で私の顔を見たかと思えば、照れたように顔を逸らして口元を抑える。
「ごめん、俺には凪が世界一可愛く見えてるから参考になることなんも言えねぇ。」
耳まで真っ赤になってる宗一郎にこっちまで恥ずかしくなって。
「バカ。」
ペチンとその肩を叩くことしかできなかった。
放課後になって、教室まで迎えに来てくれた宗一郎と並んで学校を出る。
「お?なんだ、二人揃ってデートか?」
「そーだ、羨ましいか?」
「いや別に。」
「あ?」
「こえぇよ、ガチギレすんなって。藪蛇つつく根性ねぇだけだっつうの。」
「ならよし。」
「いいのかよ。 」
同級生たちにからかわれつつ、目的の店へと向かう。
目的の店は人気店だからか、少し列ができていて。
これは三十分くらいは待つことになりそうだなと肩を竦める。
「あちゃー、この時間はやっぱり混んでんなー。」
そうだねと同意をして、視線を周囲に向ける。
「……宗一郎は本当、人気者だね。」
「俺じゃなくて凪だろ。」
「いやぁ、コレは絶対に違うと思うわ……。」
集まる視線、かけられる声。
すべて、宗一郎に向けられたもの。
「凪可愛いのに。」
「ソレは宗一郎にしか言われたことない。」
「そりゃあそうだろ。」
「…………。」
「俺の凪なんだから、他のヤツらが褒める必要ねーし?」
それに……と、宗一郎が私の耳に触れる。
「俺しか凪の良さ知らねぇって、俺だけの凪って感じで、嬉しい。」
ニッと無邪気に笑う宗一郎にドキッとする。
「……もう。」
何か言い返したいのに、何も言えなくて。
本当に、私にはもったいない彼氏だ。
「あれ?お姉ちゃん?」
呼ばれた気がして、顔を動かせば。
「わっ!」
「うをっ!?」
「ちょ、近くない!?」
何故か、宗一郎の顔が目の前にあって。
「照れてる凪を目に焼き付けようと。」
「ば……っ。」
思わずその頭を叩く。
「イテェ。」
「ご、ごめん。」
「凪って照れると叩こうとするよな。コレが世に聞く愛のムチってヤツ……?」
「いや、違うと思う。」
私が言うのもなんだけど。
宗一郎から視線をずらし、周囲を確認するけど妹の姿は確認できなくて。
気の所為だったのかと、叩いた宗一郎の頭を撫でる。
「…………。」
「宗一郎?」
急に静かになった宗一郎を見上げる。
「…………なぁ、凪。」
「ん?」
「……………………頼むから俺以外にしないでくれな。」
目元を覆い隠す宗一郎は耳まで赤くなっていて。
ソレに小さく笑う。
「宗一郎って、他人前で平気な顔してキスとかしてくるのに、こういうの恥ずかしがるよね?変なの。」
「やんのは良いけど、やられんのはなんかこう……気恥ずかしいっつうか……て、そういう凪だって俺の頭撫でてんじゃん。キスできねーのに。」
「いや、ハードルの高さが違う。」
「一緒だろ?」
「絶対違う。」
そんなくだらない会話をしている間に列はどんどんと前へと進んで行って。
「こちらのお席へどうぞー!」
元気な声とともに店内へ案内される。
「どれにする?季節限定?」
「そのつもりだったけど……、悩む。」
「どれ?」
「コレ……と、コレ。」
「んじゃあ、俺がどっちか頼むからシェアしよーぜ。」
「良いの?」
「俺も悩んでたから。それに、今日食べれなくてもまた来れば良いだろ?」
また来れば良い。
その何気ない一言にキュンとする私は、単純なのかもしれない。
「じゃあ……こっちのチョコのが食べたい。」
「りょーかい。」
呼び出しベルを鳴らして、きてくれた店員さんに注文の品を伝えるとバックヤードへと消えていく。
「宗一郎は……。」
「ん?」
「宗一郎は、私に甘すぎると思う。」
「んだよー、不満??」
「ちょっと。」
「え。」
「私はすごく嬉しいけど、宗一郎が我慢してるなら、甘やかさないで欲しい。」
そう訴えれば、目をパチパチと瞬いてふにゃりと笑う。
「凪は本当、良い子だなぁ。あとめちゃくちゃ優しい。マジ好き。」
「真面目な話してるんだけど?」
「俺も真面目だって。凪のそういうところ、好きなんだよ。」
「は??」
「わかんなくて結構です。」
だらしない笑顔のまま、俺の彼女マジ最高とか呟かないで欲しい。
ほら、隣の奥様方が微笑ましくこっち見てるから。
「おまたせしました〜。」
笑顔の店員さんが、パフェを二つテーブル二置く。
「ご注文は以上でお揃いですか?」
「はい。」
「ありがとうございます。」
お辞儀をして立ち去っていく姿を見送る。
「美味しそう……。」
「だな。」
「いただきま……あ、宗一郎、写真撮ってもいい?パフェの。」
「ん?おぉ、もちろん。俺も撮ってくれて良いぞ?」
「それは遠慮しておく。」
「なんで。」
「恥ずかしいから。……っし、撮れた。ありがと、宗一郎。」
「どーいましまして。」
「いただきます。」
期間限定のイチゴたっぷりパフェにスプーンを入れる。
切り分けられたイチゴが甘くて美味しい。
「美味しい?」
「うんっ。」
「一口頂戴。」
「ん。」
スプーンにすくっていたソレを差し出せば、目をパチパチと瞬いて。
「……、サンキュ。」
「どーいたしまして。私も一口もらって良い?」
「ん。」
スプーンにすくわれたソレをありがたくいただく。
ほんのりビターなチョコがバニラアイスによく合う。
「美味しいね。」
「ん。」
「宗一郎?」
「…………緊張しすぎて味しねぇ…。」
そう呟いたかと思えば、咳払いを一つして。
「なぁ、凪。」
「なぁに?」
「頼むから、俺のこと殺しにかかるのやめてくんね?」
「何言ってんの?」
意味のわからないことを口走る宗一郎に怪訝な顔をすれば、苦笑とともにパフェを頬張る宗一郎。
一体何が言いたいんだ、彼は。
「いや、わかるよ?わかる。俺も正直、そういうの狙ってた。狙ってたけど、そうサラッと天然無自覚にやられると普通に弱いっつうか、気づいてないみたいだから俺もまぁいっかみたいな気持ちになるっつうか……。」
「はあ。」
「わかってねーだろ。」
「全く。」
「…………凪が食べ物シェアするのって俺以外に誰がいる?」
「妹。」
まぁ、アレはシェアというより強奪だけど。
「あ、やっぱりお姉ちゃん!宗一郎さん、こんにちは!」
「おー、妹。」
血の繋がりがあるのかと疑うレベルで顔が良い妹。
愛想は良いし、愛嬌がある。
私とは違ってあらゆる人に愛されるキャラ。
「わ、宗一郎さんのチョコパフェ美味しそう!一口ください!」
「悪いな。凪とシェアする用だから、自分で頼んでくれ。」
「えー!そう言わずに!一口だけだから!」
宗一郎にねだる妹に息を吐き出す。
「人のを欲しがらない。というか、誰かときてるんでしょ?早く戻りなさい。」
「友達チョコ食べないしー、このパフェが美味しそうなんだもんー。」
「じゃあ自分で頼むのね。」
「お姉ちゃんのケチ!」
「ケチって……アンタね……。」
私が何かを言う前に、宗一郎がパフェを妹の方に差し出して。
「そんな欲しいならソレやる。他の客に迷惑だから、持って行って食え。」
「一口だけで良いのに……。」
「そうか。」
「それに、スプーンも……。」
「新しいの店員に言ってもってきてもらえ。凪、もらって良い?」
「うん、良いよ。」
「サンキュ。」
宗一郎が話は終わったとばかりにスプーンでアイスをすくう。
「ごめん、宗一郎。パフェ頼もう?私、払うから。」
「良いよ、コレで。どうせ味わかんねーし。次一緒にくる口実にもなるし。」
「でも……。」
「ソレに、パフェなんかより良いもんもらったあとだし。」
「?何かあげたっけ?」
首をかしげれば、スプーンをくわえてニヤリと笑う。
「間接キス。」
「!!!?」
「お。やっぱ気づいてなかった?」
今更ながら、私ってばなんてことを……!!
「さっき言いかけてたのって……っ。」
「そ。ハハッ、凪って本当そういうとこ抜けてるよなぁ。可愛い。」
「かわ……っ。」
「パフェ、美味い?」
「味、わかんなくなった。」
さっきまで感じてた甘さすら、わかんなくなって。
恥ずかしくて、顔を覆う。
「宗一郎さん、お姉ちゃんのことすぐ可愛いって言うよね。」
「まだ居たのか。早く席戻れよ。待ってんぞ、オトモダチが。」
「……っ、お姉ちゃんのどこが可愛いのかわかんない。私のほうが断然可愛いし。皆もそういうのに。」
「良いよ、わかんなくて。凪の良さは俺だけわかってればソレで良いから。」
宗一郎が何食わぬ顔をしてスプーンですくったアイスを差し出してくる。
軽く睨むも、溶けて落ちるからと急かされ、諦めて口を開く。
……、味がしない。
「ただ言えんのは……俺の凪だし、凪の宗一郎だから。」
宗一郎が優しく笑って、私を見る。
ただそれだけでキュッと心臓が締め付けられる。
「だから、ソレ以上は何も言わずに席もどろうな?」
優しく頭を撫でられる私。
ちょうど腕の影になっていて、宗一郎の顔が見えなくて。
「凪の妹だから、大目に見てるだけなんだからさ。そこんとこ、勘違いしないようにな。」
「…………っ。」
机に当たったのか、蹴ったのか。
大きな音とともに立ち去っていく。
「おーおー、過激だなぁ。パフェちょっと溶けちゃったし。ガトーショコラ、良い感じにアイス染み込んでて美味そうだぞ、凪。」
「う、うん。ね、宗一郎。」
「ん?」
「ごめんね。」
「何が?」
「妹が迷惑かけたから。」
「あぁ……凪が謝る必要ねーよ。凪とのせっかくのデート水を差された感は否めねぇけど。」
溶けててもウメェと笑顔を浮かべる宗一郎に申し訳ない気持ちになる。
「凪。」
「はい。」
「そんな気にしてくれんなら、お詫びに今度俺の買い物付き合って。」
「!そんなんで良いの?」
「良いんだよ。んじゃあ、次は買い物デート決定だな。見たいところ考えておけよ?」
「うん……て、宗一郎の買い物なんだから、私の行きたいところなんて別にいらな────」
「買いたいもの決まってるから、そう時間かかんねーよ。だから、余った時間は、凪の見たいものみよーぜ。」
あぁ、本当に。
「…………宗一郎は、優しすぎると思う。」
「凪限定でな。」
「甘すぎる。」
「惚れた弱みだな。」
「宗一郎は本当、私のことが大好きだね……?」
「当然だな。」
宗一郎が力強く頷く。
「俺の惚れた女がいい女だったってだけだ。あんま気にすんなそこは。つーか、改めて言うな、照れるから。」
「ふふふ。宗一郎って、私に弱いね。」
耳まで真っ赤になってる姿に笑えば、パフェからイチゴをすくって、ズボッと口に放り込まれる。
突然のことに驚きつつ咀嚼する。
「しゃーねーだろ。俺は、凪の全部が好きなんだよ。」
唇の端を指先で拭うと、困った顔をして笑った。
読んでいただき、ありがとうございます
感(ー人ー)謝