第八章54 【覇王杯/オーバーロード・カップ1回戦/第2試合】14/【転生】対【ジャスト・ブック】4
【ユーリー/殺人教師】は、次の転生のための自殺として、窒息死を試してみたがこれも二度とやりたくない方法だと後悔した。
このままではトラウマを増やして行くのでは無いかと不安に思った。
初代【レオン・スウィニー】は何でこんな作品を考えたんだと文句を言いたくなった。
死なないと転生出来ないので、死に方を探す事になるのだが、死ぬのがこんなに苦しくて嫌な物だとは全く思って居なかった。
【教師(男)】というキャラクターと同期させているため、実際に死ななくてはならない事がこんなに辛いのかと【ユーリー/殺人教師】は思った。
【ユーリー】は、マルチ格闘家である。
世界中の様々な格闘技を極めようとしてきた。
その過程では死にそうな目にもずいぶんあってきた。
だが、実際に死んだことは無い。
死にそうな目にあうのと実際に死ぬのはこんなにも違うのか?と彼は驚愕したのだった。
だが、死んで生き返らなければ異能は得られない。
そこで、泣きながら何度も死んで生き返るのを繰り返した。
60回を超えた時、さすがに気持ちが折れた。
もう、自分では死を選びたくないと思ったのだった。
その62回目の転生をした時残っていた異能は以下の5つである。
(1)【影分身を30秒間だけ作り出せる能力】、
(2)【息を止めている間、物をすり抜ける事が出来る能力】、
(3)【爪を弾丸として発射する事が出来る(リロードの代わりとなる爪の復活まで5分必要)能力】、
(4)【空気を雪の様に固めて投げる事が出来る能力】、
(5)【触った物を一度に最大5つまでトラップ化させる事が出来る能力】、
となっている。
正直、【ユーリー/殺人教師】にとってベストな異能とは言えない。
だが、死ぬのは嫌な彼はこれで良しとした。
この5つの異能を使って【尚三/小学6年女子】を殺しに行くことにした。
対して、【尚三/小学6年女子】は黙って隠れている訳ではない。
【ユーリー/殺人教師】が自殺と転生を繰り返し、異能を得ていく間にも【秘密の図書室】をあちこちで作って【ジャスト・ブック】を探していたが、【ユーリー/殺人教師】を倒す方法の書かれた【ジャスト・ブック】は残念ながらまだ見つけられていない。
ただし、【ユーリー/殺人教師】をかく乱するための【ジャスト・ブック】はいくつか見つける事が出来た。
【ジャスト・ブック】とはそれを実現する事が可能であると記された【本】である。
それが例え、実際には実現不可能な事であっても【ジャスト・ブック】に載っていてそれを実行出来れば可能となる。
例えば、【自分の偽者を作るジャスト・ブック】と言うのを【尚三/小学6年女子】は三冊か手に入れている。
やり方は全て異なるが、全て、自分の偽者、つまり影武者を作る方法が記されている。
その内の1冊に書かれている事は、
【家庭科室に保管されている小麦粉をまいてそこに水をかけると自分の分身が作れる】となっている。
実際にこんな事をして分身が作れれば世話無いのだが、この【ジャスト・ブック】を持ち出して、家庭科室へ行き、小麦粉を見つけてまいて、そこに水をかけた時、【尚三/小学6年女子】そっくりの偽者が出て来て勝手に動き回った。
この偽者は【ユーリー/殺人教師】の目を誤魔化してくれる囮になってくれるのはすぐにピンと来た。
ただし、このやり方は1体のみであり、同じ事をもう一度やっても偽者は作れない。
また、【大鏡の前でにらめっこをするとその内、鏡の中で大笑いした偽者が出て来て走り出す】という【ジャスト・ブック】を取り出し、試すと同じように偽者が作り出せる。
これも、また1体のみだが、こうやって複数の偽者を作り、学校内を逃げ回る事様にしている。
そのため、【ユーリー/殺人教師】側からすると本物を見つけにくくなるということになる。
もちろん、これだけじゃない。
【足跡の落とし穴を作るジャスト・ブック】を見て、透明な落とし穴を作ったりして、そこを通ると下の階に落ちるという罠も作ったりしている。
この世界観では大規模な罠は作れないがそう言うちょっとしたトラップを作って戦うと言うことになる。




