第八章29 【覇王杯/オーバーロード・カップ1回戦/第1試合】26/【ミッション07】/【テストパイロット兼開発設計提案】ミッション2
【綾碕 希望】が関わっているミッションは【メカニック・イート】の新機能の開発だけではない。
テストパイロットも同時に行っている。
主に彼女が考えた新機能を搭載させた【プロトタイプメカニック・イート】を操り、その機能が適正に作用するかどうか見るというミッションである。
当然、その開発が成功したと実感出来ればミッションクリアとなる。
この【メカニック・イート】の世界では、【希望/美娃】側には新機能の提示は無く、彼女が新機能を考えてこの世界に提示する事になる。
そして、その機能が適正に作用すれば、ミッションクリアなので当然、出した案の数だけテストパイロットとしてのミッションが追加されることになる。
彼女は7つの案を出したので当然、7種類のテストパイロットの任務が与えられる。
だが、彼女は多くの案を出した事に墓穴を掘ったとは思っていない。
例えば彼女が1案だけ出してその1案に対するテストパイロットを務めて成功しても彼女は満足しないだろう。
なぜならば、たった1つだからだ。
自分が楽をするためにたった1つの案にしてそれをクリアしても彼女は自分のプライドを傷つけることになって満足しない。
そうではなく、彼女が全力で案を出して、その案に対するテストを全部成功させて初めて彼女は勝利を実感出来るのである。
面倒臭い女と思われようが何だろうが、それが彼女にとっての正義であり絶対のルールだった。
楽して勝利するため、手を抜くなど彼女の辞書にはない。
そんな事をして勝利しても彼女にとっては何の価値もない。
そうではなく、全力で向かい合って勝利してこそ、彼女にとって価値があるのだ。
失敗したとしても後悔は無い。
それが解っていて、【能活】は彼女をスカウトしている。
彼女が勝負に手を抜かないという事も含めて彼女を評価している。
【能活】にとっても、もし彼女が手を抜いて勝利する様な人間だったなら彼女を評価せず、スカウトもしなかっただろう。
それが解っているからこそ、【能活】は彼女の才能を認めているのだ。
日和見主義の弱者に用はない。
彼女もこんな事で【能活】に黒星をつけさせる訳にはいかないので全力で成功させてポイントを取りに行く。
絶対に成功させる。
その強い意思で彼女は信念を持って行動しているのだ。
そんな彼女が挑むテストパイロットミッションを1つだけ紹介しよう。
彼女が挑んだのは、彼女が出した案の1つ、【スレイブ・ロック】のテストである。
【スレイブ・ロック】とは【メカニック・イート】の【サブ・アト・ブロック】には【メイン】となる【コア・アト・ブロック】に対する服従回路が搭載されているが、【スレイブ・ロック】という機能を使うと、敵の【サブ・アト・ブロック】の【マスター・コード】をロックさせて、自機の【コア・アト・ブロック】に服従させるという画期的な【装備】となる。
これが、仮想敵として用意した【メカニック・イート】に対して、ちゃんと機能するかどうかを見るテストとなる。
【希望/美娃】は、
「かかっておいで坊や。お姉さんが可愛がってあげるから」
と言った。
相手のテストパイロットは、
「おおぉ、お願いします」
としどろおどろだ。
美人に誘われて舞い上がっている様だ。
【希望/美娃】は、
「遊びじゃないのよ、悪いけど」
と言った。
「す、すみません」
「じゃあ、行くわよ。手加減しないでね」
と言う感じにテストが始まったのだった。
残念ながら彼女の活躍についても以上となる。
続きはご想像にお任せする。