プロローグ 物語を読む前に、導入を添えて
この文だけ読んで、帰ろうとしているそこの貴方。
もう少しお待ちください
早速だが実際に異世界転移、異世界転生をしてみたいと思う人は必ずいるのではないだろうか。
幼き頃にヒーローの物真似をし、実際に技を放てると思っていた時期があると同様に。
誰しも夢物語のような夢を一度は夢に見ているのだ。
異世界転移――異世界の人間が魔法を使って勇者を呼び出す儀式をした結果、現実世界からふと招かれるように、生きている間になんらかの事象をきっかけに異世界にいってしまう人間の末路を異世界転移と称する。
対して異世界転生――自殺あるいは事故をきっかけに死亡した人間が、異世界で姿形違う見た目の人間に生まれ変わる末路を称する。その中には死なずとも転生するケース、また異世界の魔王が死んで何百年後の異世界に転生するケースも存在しているが数としては少ない。
そして異世界転生者には何かしらの特殊能力を持ち合わせているケースが付随するのが一般的だ。チートスキルなどは耳にタコが出来る程に聞く話ではある。
一方、異世界転移では第三者から能力を貰う等のイベントに遭遇しなければ、無能のまま異世界を過ごす事になる。
異世界転移と異世界転生を比較するなれば、異世界転生の方が能力も立場も優位な所に位置すると言えるだろう。
だが、なんだかんだ異世界転移や転生をしても柔軟に対応して人間関係を構築し、苦難を乗り越えるのが主人公だ。
しかし果たして、実際に夢に見た事が現実に起きた時、人は故郷の世界に郷愁を抱く事すら忘れて異世界ライフを楽しむ事ができるのだろうか。
意図してない行為で、現実世界に戻され、異世界に転移され、それが毎日続いたらどういう考えになるだろうか?
今は現実世界にいたいのに異世界に行ってしまう、逆も然り。
こんな運命に翻弄されては溜まらない。二つの世界の日常を同時に歩むなど前代未聞の話だ。
この物語は、その状況下に立たされた一人の少年の紡ぐ物語。
一人の少年をきっかけに交わるはずのない、異世界と現実が交錯する物語。
今、彼が目を覚ました。
さて、彼の答えはいかがなものだろうか。それを皆で見届けよう。
昨日は夜中の0:00に年越しそばを食べた