プロローグ
風になびく赤い髪。
血まみれの男たちの上に座って、今宵の満月を眺めている。
使い古したボロ雑巾の様なスーツを着た男が、赤髪を睨む。
「なぜだ、なぜお前は俺たちに雇われようとしない!」
男は強烈なダメージに衰弱した体を震わせながら言った。
「…決まってんだろ?お前らの出す仕事には、興味ないからだ。」
赤髪は退屈そうに答えると、黒く光るリボルバーを男に向けた。
一声の発射音と共に、男はその場で崩れ落ちた。打たれた箇所は太もも。真っ赤な血が、開けられたら穴から吹き出している。
「安心しな、俺の下のコイツらも峰打ちだ。直に政府の犬どもが迎えにくる。…じゃあな。」赤髪は闇の中へ消えていった。
「…流石『流星の殺し屋アクト』。いくら…いくら俺たちが一斉にかかろうと、傷一つつけられな…い…。」
アクトはリボルバーを真っ黒なコートの中にしまい、携帯電話を取り出した。
『今回の仕事はうまくいったか?』
「…ああ。しかし、俺の名もすっかり有名になってしまったようだ。ターゲットが雇ったマフィアたちが、早速俺を雇おうとしてきた。俺の名は知っていても、政府側の人間だとは知らないようだ。断るやいなや、襲いかかってきたから返り討ちに合わせた。」
『そうか…。お前は殺し屋であっても、ただの殺し屋ではない。国を守るための殺し屋だ。我々は、お前の味方だ。』
アクトは静かに瞼を閉じた。
「御意。」