物語No.89『VSバハムート第二陣』
バハムートは十月の脇腹を喰らった。
十月を覆っていた砂鉄は全て影魚に行く手を阻まれていた。
(私の自動バリアを封じやがった……)
十月は砂鉄の剣をバハムートへ浴びせるが、砂鉄の剣はバハムートを貫通する。というより通り抜けた。
その時バハムートの牙も十月の脇腹へ刺さっていたが、十月はすり抜けるように牙から逃れた。
「なるほど。そういう能力……」
十月はバハムートのからくりに気付いた。
だからといって脇腹を喰われ、俊敏な身のこなしはできないでいた。
「まさに死地。だから面白い」
十月の笑みは消えていない。
十月は自身での移動をやめ、足場を砂鉄にし、砂鉄に乗って戦場を移動することで腹部への刺激を最小限にとどめた。
それでいて魔法剣へ魔力を込め、砂鉄を産み出す。
時折影魚が砂鉄を喰らい、消費される。
それに負けじと砂鉄を生産し、影魚を葬ることも欠かさない。
だが十月の魔力も無限ではない。
魔力ももう少し使えば底を尽きてしまう。
(今のこいつは攻撃を通さない状態へ変化できる。だが常に攻撃を通さないわけでもないんだろ。恐らくあの瞬間を狙えば攻撃は通る。だがそれはハイリスク。じゃあやめるって?)
「ナンセンス」
十月は砂鉄に乗ってバハムートへ突撃を仕掛ける。
バハムートは十月を喰らおうとしていた。
間もなく十月がバハムートの牙に噛まれる。
「今だ」
十月はバハムートの腕を噛まれると同時、幾つもの砂鉄の剣をバハムートの背後から突き刺した。
「てめえ、他人に触れる瞬間は自分も他人から触れられるんだろ。ここでお前を仕留め……」
十月は視界に映った光景に目を見開く。
バハムートの背後から突き刺した砂鉄の剣が全てすり抜け、地面に突き刺さった。
「なっ……!」
バハムートの牙は今も尚十月の腕に突き刺さっている。
十月の読みが当たっていたならば、バハムートは無数の剣に貫かれていた。
だが、失敗に終わる。
「そうか。私の負けか」
バハムートは再度大きく口を開き、十月を丸飲みにしようとしていた。
死の間際でも尚、十月は笑みを浮かべる。
「私は負けたんだ。お前ほどの強敵に殺されるのなら、本望ッ!」
強く言い放ち、死を受け止めた。
──が、稲妻が駆け抜け、バハムートへ直撃した。
バハムートは稲妻に気圧され、後ろへ下がる。
「今際の際に救いはあったか」
十月は振り返り、崩落した体育館の壁から現れた少年少女を見る。
一国百、二月銀、四葉夏恋、五蝶嵐、八神夜、竜胆威吹、周防雛守、夏目揺。
「ここから先はボクらが引き受ける」
一国の背には電気で刻まれた魔法陣が出現する。
「気をつけろよ。あの龍はパズルの魔法、他にも幾つかの魔法を使える。それに私の砂鉄による攻撃はすり抜けた。まあお前の稲妻は当たったところや影のようになっているところから推測するに、光が鍵を握る」
そう告げ、十月は一国らの横を通って後ろへ下がる。
「なるほど。となると夏恋ちゃん、私たちが常時奴を照らす必要がある」
「任せてください」
四葉はしゃがみ、両手で花の形をつくる。
「発光花園」
校庭には幾つもの光が出現する。
それはさながら花のようだった。
全身が影のように単一の黒だったバハムートの身体から、徐々に鱗が見え始める。
「始めるぞ。ドラゴン退治」




