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一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章5『憎しみの黒薔薇』編
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物語No.84『退屈な少女』

 その頃、屋根の上にいた十月撫子は次々と影魚を倒していた。

 彼女が手に握るのは魔法剣。

 彼女はソードクイン家との接続者であり、ソードクイン家は魔法剣を製造する一族である。


 撫子が持つ魔法剣は二つ。

 その内の一つ、逆万磁(さかさまんじ)


 その剣に魔力を流し込むことで磁力を持った小さな砂鉄が出現し、それらを自在に操り攻撃する魔法剣。

 その剣によって生成される砂鉄には特殊効果があり、砂鉄は魔力と対極の関係となり、砂鉄は魔力によくくっつく。


 撫子は剣を軸に大量の砂鉄で自身の周囲を覆っていた。

 影魚が撫子へ飛びかかるが、砂鉄が針状に隆起し、影魚を次々と貫いていく。


「この程度か。魔法十家の一つである黒廻家、その魔法の如何様を楽しみにしていたが、大したことはない。ただの雑魚の群れか」


 撫子は退屈そうに影魚を観察し、その間にも砂鉄が影魚を葬る。


「これ以上雑魚の相手をするのは面倒だ。さっさと本体を狩ろうか」


 撫子は屋根を走って体育館へ向かうが、


「……っ!」


 突如突風とともに放たれた漆黒の槍。

 槍は撫子を貫く軌道にあったが、砂鉄が魔力に吸い寄せられて自動で集まり、分厚い壁となって槍の一撃を防いだ。


「今のは……」


 撫子は槍が飛んできた方角を見る。

 そこからヒト型の影が槍を手もとに戻しつつ、近寄ってくる。


「あの容姿、集められた接続者の中にいたな。だが見た感じ影でできている」


 撫子は口角を大きく上げ、ニヤリと笑う。


「良かった。楽しめるギミック持ってるじゃん。黒廻ちゃん」


 撫子は腰に下げたもう一つに剣には触れず、今手に構える漆黒の剣──逆万磁を構えて五蝶の影と対面する。


「ん?」


 撫子は砂鉄の違和感を感じ取る。

 砂鉄は魔力に引き寄せられ、そのため五蝶の影の方角へ砂鉄がわずかに引っ張られている。

 そしてもう一方、背後にも砂鉄がわずかに引っ張られている。


「挟み撃ちかな」


 ニヤニヤと背後を振り返る。

 そこには三つの影があった。


 四葉の影、竜胆の影、八神の影。


「さすがにムズいか。いや、イケるね」


 撫子の笑みは最高潮。

 彼女の目は確かに敵を見据える。


「さっさと始めようか。殺し合いッ!」

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