物語No.84『退屈な少女』
その頃、屋根の上にいた十月撫子は次々と影魚を倒していた。
彼女が手に握るのは魔法剣。
彼女はソードクイン家との接続者であり、ソードクイン家は魔法剣を製造する一族である。
撫子が持つ魔法剣は二つ。
その内の一つ、逆万磁。
その剣に魔力を流し込むことで磁力を持った小さな砂鉄が出現し、それらを自在に操り攻撃する魔法剣。
その剣によって生成される砂鉄には特殊効果があり、砂鉄は魔力と対極の関係となり、砂鉄は魔力によくくっつく。
撫子は剣を軸に大量の砂鉄で自身の周囲を覆っていた。
影魚が撫子へ飛びかかるが、砂鉄が針状に隆起し、影魚を次々と貫いていく。
「この程度か。魔法十家の一つである黒廻家、その魔法の如何様を楽しみにしていたが、大したことはない。ただの雑魚の群れか」
撫子は退屈そうに影魚を観察し、その間にも砂鉄が影魚を葬る。
「これ以上雑魚の相手をするのは面倒だ。さっさと本体を狩ろうか」
撫子は屋根を走って体育館へ向かうが、
「……っ!」
突如突風とともに放たれた漆黒の槍。
槍は撫子を貫く軌道にあったが、砂鉄が魔力に吸い寄せられて自動で集まり、分厚い壁となって槍の一撃を防いだ。
「今のは……」
撫子は槍が飛んできた方角を見る。
そこからヒト型の影が槍を手もとに戻しつつ、近寄ってくる。
「あの容姿、集められた接続者の中にいたな。だが見た感じ影でできている」
撫子は口角を大きく上げ、ニヤリと笑う。
「良かった。楽しめるギミック持ってるじゃん。黒廻ちゃん」
撫子は腰に下げたもう一つに剣には触れず、今手に構える漆黒の剣──逆万磁を構えて五蝶の影と対面する。
「ん?」
撫子は砂鉄の違和感を感じ取る。
砂鉄は魔力に引き寄せられ、そのため五蝶の影の方角へ砂鉄がわずかに引っ張られている。
そしてもう一方、背後にも砂鉄がわずかに引っ張られている。
「挟み撃ちかな」
ニヤニヤと背後を振り返る。
そこには三つの影があった。
四葉の影、竜胆の影、八神の影。
「さすがにムズいか。いや、イケるね」
撫子の笑みは最高潮。
彼女の目は確かに敵を見据える。
「さっさと始めようか。殺し合いッ!」




