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一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章5『憎しみの黒薔薇』編
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物語No.83『双方向攻略』

 一国、四葉、周防、夏目は二月の影と対峙する。


「『王雷(エクレシウス)』」

「『王雷(エクレシウス)』」


 既にコピーされた『王雷(エクレシウス)』を中心に使う一国。

 稲妻同士がぶつかり合うが、一国の威力の方が優勢だった。


「やはり影であろうと王家魔法は完全にコピーできないよな」


 稲妻だけで押し切ることもできたが、それはあくまで他の介入がない場合。

 二月の影が劣勢になると、周囲から影魚が襲いかかる。


(二月だけならまだしも、魚を使って臨機応変に対応してきやがる。簡単には倒せない──)


「『魔拳』」


 四葉、周防、夏目は魔法は使わず、拳に魔力を集中させて影魚を殴る。


「──とでも思っているのか」


 影魚の対処は四葉らが行い、決して影魚を百へは近づけさせない。


 一国百は一定範囲内であれば自由に稲妻を出現させることができる。

 二月の影を囲むように稲妻をいくつも出現させる。


「『王雷囲みサラウンド・エクレシウス』」


 稲妻が影を襲う。


「影へ潜ろうにも稲妻の光で影はなくなる。逃げ場がないのなら全て命中する」


 百が勝利を確信した。

 ──刹那、


 全ての稲妻が反射して四方へ飛び散る。


「くっ、そうか……」


 自分達の方へ飛んできた稲妻は百が稲妻で撃ち落としつつ、二月の影をその目で捉える。

 二月の影は全身を円形の鏡で覆っていた。


「あれは、私の……」


「やはり二月は『反射鏡(ルミラー)』をコピーしていた……」


 百は険しい表情で二月の影を見る。

 影は百へ向けて両手を花の形にして向ける。


「まず……っ!」


 眩しい光を直視し、百は一時的に視界を奪われる。


「『王雷囲みサラウンド・エクレシウス』」


 間髪いれず稲妻が百を襲う。

 全身に稲妻を受け、百は口から煙を吹く。

 全身を魔力で防御したものの、大量の稲妻を受けて大ダメージを負ってしまった。


 追い討ちをかけるように影が稲妻を飛ばすが、反射鏡に跳ね返されて影の横を通りすぎる。


「大丈夫ですか」


 四葉と周防が駆け寄る。

 一国は心臓を押さえつつ、言葉を紡ぐ。


「今、奴の稲妻を受けて分かったことがある」


「何ですか」


「たくさんの稲妻で攻撃されたものの、その威力はせいぜい稲妻一つか二つ分。奴の魔力出力はそこまで高くない。つまり奴が稲妻を分割すればするほど、その一つ一つの攻撃力は減っていく」


 背後には影魚がいるが、夏目が孤軍奮闘して戦っている。

 四葉は百に治癒魔法を施す。


「四人で四方向から攻撃すれば、奴が『王雷(エクレシウス)』を撃とうと魔力で防御すれば死ぬことはない。それに、一点集中で来たならば周防の魔法で跳ね返せば問題ない」


 百は稲妻を受けた上で、そう策を提案する。


「良い案だね。それでも良いと思う」


 四葉が頷く横で、周防は少し考え込む。


「ねえ、魔力防御じゃ少しのダメージは受ける。ならさ、一点集中の攻撃じゃなくても、私が全部弾き返すよ」


 周防は宣言する。


「だが稲妻の攻撃を全て捌ききれるか」


「確かに私のポイントはせいぜい10ポイント程度です。今まで異世界との戦いでは誰かに頼ってばかりでした。でも、今のままじゃ駄目なんです。私も戦わないといけない。皆が命懸けで戦っているって分かったから」


 周防は顔を上げる。


「私、今までの稲妻はちゃんと見ていました。だから捌く自信はあります」


 周防の覚悟を受け取り、百は改めて作戦を組み直す。


「夏目、集まれ」


 夏目は背後の影魚を倒しつつ、百のもとまで戻ってくる。

 すかさず影魚へ稲妻を放ち、一掃する。


「作戦を伝える。全員で極力広がって、真正面から攻める。その間に浴びせられる全ての攻撃は周防に任せる。最後、間近で四葉が発光により目眩ましをし、そこへボクが稲妻の拳を叩きつける」


 全員が頷き、いざ二月の影へと駆ける。

 廊下のど真ん中を百が走り、その少し右後ろを四葉が、左後ろを夏目が走り、最後尾を周防が走る。


 二月の影は背後から四つの稲妻を飛ばす。

 それら全てを、『反射鏡(ルミラー)』で反射し、二月へ返す。

 しかし二月も同様の魔法で稲妻を反射させつつ、新たな稲妻を放って八つの稲妻が襲いかかる。


 跳ね返した稲妻も跳ね返される。これ以上稲妻が増えれば捌ききれない。

 咄嗟に二月の影へ跳ね返すという選択は捨て、全て壁に反射させる選択をとった。


 既に百は二月のすぐそばまで迫っていた。


 二月の影は渾身の魔力を一つに集約し、稲妻を百に向けて放った。

 至近距離からの稲妻だったが、二月の影の攻撃を予測していた周防は、稲妻が放たれたと同時に反射鏡を出現させていた。


(さすがだ周防。この稲妻は確実に防げる。この短距離での軌道変更は不可能)


 疾走する百。

 彼は視界に入った何かに違和感を抱き、ふと目を横に向けた。


 百の目に映ったのは──




 その頃、二月は一国の影を圧倒していた。

 二月の手札は『王雷(エクレシウス)』、『反射鏡(ルミラー)』、『発光(ルミナス)』、そしてもう一つ。


 一国の影の稲妻が二月を襲う。

 すかさず二月は自身の周囲に水玉を出現させる。

 稲妻は並べられた水玉に沿って移動し、外へ逃げていく。


「一国は強いが、手札が増えれば増えるほど私が圧倒できる」


 二月はありったけの魔力を込めて稲妻を放った。

 直後、一国の影を反射鏡で囲む。


「面白いよなそれ。魔法による攻撃だけじゃなく物理攻撃も弾かれる。だったらそれに閉じ込められたら逃げ場はない」


 二月が放った稲妻が一国の影を直撃し、周囲へ離散する電気も反射鏡によって一国の影へ戻っていく。


「稲妻の檻」


 一国の影は大ダメージを負い、消えていった。

 その後、二月は周囲へ光を放ち、影に吸い込まれていた五蝶らを救い出した。


「一国の影は倒したが、当然私の影もどこかに出現しているのだろう。無事だと良いけど……」




 二月は一国の影を倒した。

 だが一国は二月の影が放った稲妻に身体を撃ち抜かれていた。


(そうか……。水玉で軌道を逸らしたのか……)


 確かに周防は一国の前方に反射鏡を出現させた。

 この短距離での軌道操作は不可能だと一国も確信していた。

 その予想外、水玉により稲妻の軌道を逸らし、一国の身体を稲妻が直撃した。


「一国!?」


「とまッ……ルな!」


 全身に激痛が走る中、一国は叫ぶ。


「『王雷(エクレシウス)』」


 一国は稲妻を放つが、二月の影の前方には反射鏡。


「最初から狙いはお前じゃねえ」


 稲妻の軌道は最初から二月の影を狙うものではなかった。

 稲妻は二月の影の頭上、天井を直撃し、崩落させる。


「後は頼んだ」


 一国はその場に倒れ、行く末を見つめる。

 四葉、夏目、周防は走る。


(治癒魔法や対電気魔法は使えない。使えば敵に手数を与えるだけ。だから仕留めるなら今しかない)


 四葉は一国を心配しつつも、夏目と周防がついてきているかを確認する。

 前方では瓦礫が崩落し、二月の影が半身を影の中へ潜らせているところだった。


「させない。『発光(ルミナス)』!」


 四葉の手から目映い光が放たれ、二月の影が浮き彫りになる。


(魔拳で仕留める)


 四葉と夏目は拳に魔力を集中させ、二月の影へ飛び込む。

 だが二月の影はそれを読んで後ろへ飛んだ。


(駄目だ。今逃げられたら……)


 今以上の好機が訪れるとは限らない。

 だからこそ二人はここで仕留めるつもりだった。

 しかし二月の影は後方へ逃げ──


「っ!」


 四葉は微笑む。


 二月の影が逃げた後方、そこには反射鏡が顕現していた。


「最高だよ。周防ちゃん」


 後方へ飛んだスピードそのままに、前方へ身体を吹き飛ばした二月の影。

 そこへ四葉と夏目の魔力を纏った拳が炸裂する。


「「魔拳ッ!」」


 二つの拳を受け、二月の影は形を保てなくなって消失した。


 勝利の拳が影に魔力を刻む。

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