物語No.78『間もなく始まる世界を夢見て』
「黙示録の魔術は九十九の悪魔で構成されている。それら悪魔全てに契約者をつけたんだ。その契約の内容は俺が決めてある」
「それって魔神が全ての悪魔に認められたから?」
「ああ。全ての悪魔をボコボコにした。だから全ての悪魔を無条件で従わせることができた」
巨大な龍によって風穴が空いた黒薔薇学園を遠くから見る二人。
魔神零と一国千代。
「でも悪魔の能力って契約者の魔力量に依存するでしょ。そこのところ大丈夫なの」
「既に五蝶楓夏を使って確かめていてね。ある手段を用いれば悪魔の力を最大限引き出すことができる。それに、契約させたほとんどが魔法の才能を持っている者だ。それでも弱かったら最終手段を使うけど、まだ二ヶ月ちょっとの接続者にぶつけるにはちょうど良い相手になるよ」
魔神は微笑む。
「じゃあ、彼女の他にも悪魔との契約者が目覚めているってこと」
「そうだね。まあほとんどが大人しくしているだろうけど、中には魔鍋綺羅のように暴れる者もいる」
「彼女の契約した悪魔は何ですか?」
「彼女が契約したのは〈魚影の悪魔〉。九十九の悪魔の中でも、上位の強さを持つ悪魔だ。そう簡単には負けないと思いたいけどね」
魔神は学園を見つめる。
その学園、黒薔薇学園において、巨大な龍が出現した。
九メートルの巨大な龍は、学園中に無数の魚を泳がせていた。
真っ黒い魚が学園中を泳いでいる。
水もないただの空間を、まるで水中を泳ぐように。
「あれは……」
「バハムートの能力だね。バハムートは影がある限り無限に魚を産み出せる。それらの魚は全て肉食、人を見つければ無尽蔵に喰らってくる」
「見えるだけでも千体はいますよ」
学園の外を無数の黒い魚が囲んでいる。
魚は様々な形状をしており、メダカやトビウオのような見た目のものから、サメやクジラといった見た目をした魚もいる。
「魔力を込めずに影だけでも一般人は余裕で殺せる魚が産まれるが、魔力を込めれば込めるほど、強力な魚が産まれる」
魔神は黙示録の魔術を把握している。
そのため、九十九の悪魔全ての能力が頭の中に入っている。
「確かに。ただの影だけの魚の群れで、奈落は倒されてましたからね」
「まあ奈落が悪魔を召喚しなかったってのもあるからね」
「そういえば異世界との接続時以外は魔法を使ってはいけなかったんでしたっけ」
十星騎士団へ反逆を試みた事件の後、奈落の危険性を鑑みた十星騎士団によって魔法の行使に制限が設けられていた。
異世界との接続時以外の魔法行使の禁止。
それを破れば今度こそ奈落魔宵は異世界流しの罰を受けることとなる。
「ただの魔力操作だけでよく粘った方だよ。まあ魔鍋を攻撃する度胸があれば簡単に倒せたんだろうけどね」
「…………」
千代はじっと魔神を見る。
「なんだ?」
「いえ、あなたの奈落に対しての対応の意味が分からなくて……」
千代はあることを知っている。
だからこそ、魔神の奈落に対する態度が理解できなかった。
「その時になったら教えるさ。だがそれは今じゃない」
「そうですか……。分かりました」
千代は引っ掛かることはあったものの、結局それを拭うことはできなかった。
「さて、間もなく接続者が動く頃だろうね」
「楽しみですね。彼らがバハムートに対抗できるか否か」
千代は笑顔で言った。
「これを機に彼らは悪魔との契約者の存在を知る。その時、魔法家との接続者VS悪魔との契約者という対立構造が表面化する」
「そうなれば多くの魔法使いが悪魔の契約者との戦いへ動き出す」
「その機会が増えれば増えるほど、魔法使いを殺す機会も増えてくる」
魔神は展望を思い描き、心の内からわき上がる喜びに笑みをこぼす。
「さあ始めよう。接続者VS契約者の世界を」




