物語No.76『混沌』
六月一日。
日向穂琉三12ポイント、瀧戸愛六18ポイント。
「ポイント結構減っちゃったね」
「うん。でも他の接続者がどれくらいポイント稼いでいるかとか、他の学園はどれくらい異世界と接続するかとか分からない以上、自分達がどれくらいの順位にいるかは分からないよね」
愛六の呟きに、穂琉三はそう疑問を呟く。
「今の神妹なら教えてくれるかな」
「どうだろ。訊いてみてもいいかもね」
人気のない第三校舎の空き教室で、二人は冗談混じりに笑い合う。
「でも命の危機には何度も遭って来てるからさ、しんどいよね」
「大変なのだな。接続者は」
話を聞いていた稲荷はボソッと口にする。
「そうだね。でもまあ、最近は戦いに慣れてきたし、魔力の使い方も分かってきたから以前に比べて格段に戦いやすいけどね」
愛六は拳に魔力を集中させてみる。
「愛六のところは二月さんと四葉さんだっけ。二人とも魔力の使い方はどうやって知ったの?」
「二人とも契約した魔法家から教えてもらってるんだって」
その答えを聞き、穂琉三は少し考え込む。
「僕らって異世界に繋がる扉を見つけて、そこでヒルコやミナカに会って契約したわけだけどさ、他の接続者ってどうやって契約したんだろうね」
「ああ、確かに」
「一国や奈落さんはイレギュラーな契約らしいけど、普通はどんな契約方法があるんだろうね」
「今晩二人に聞いてみるよ」
愛六はそう言いながら、ふと気になることがあり、隣に浮かぶ青い光球へ目を向けた。
「ねえミナカ、なんであの扉からミナカが出てきたの? 神妹に仕込まれてたって感じ?」
「ああ、それは神妹との契約上言えないんですよ」
「ヒルコも同じ感じだっけ」
「そうだな。自分たちのことは極秘事項だってことで言えないようになってる。だからいくら詮索しようと何も出ないぞ」
「そっか……」
穂琉三のそばにいた赤い光球の話を聞き、二人とも唸ることしかできない。
「そういえば穂琉三さ、奈落さんと一緒に住んでるの?」
「い、いや、違うよ。あくまでも部屋が隣同士ってだけで、一緒の部屋で暮らしてるわけじゃないよ」
穂琉三は必死にそう説明する。
「ふ~ん。まあどっちでもいいけどさ。ってか学校はそのまま黒薔薇学園に通ってるんだ」
「うん。まあ……そうだね」
「一回だけ見たけどさ、よく部屋の外の花壇でイチャイチャしてるよね」
「え、えっと……いや、ま、まあ水やりを一緒にしてるかな」
「ふーん」
穂琉三は少し恥ずかしそうに言う。
「もう放課後だし、奈落さんがもうすぐ帰ってくるんじゃない」
「そういえば冷蔵庫の中身なくなってたんだ。晩ごはんまでに買っとかないと」
「晩ごはんって一緒に食べてるの?」
「うん。奈落さんと一緒に料理して、それで一緒に食べてるかな」
「へえ、仲良」
「…………」
愛六は穂琉三もじっと見て、何か違和感を感じていた。
「ねえ、最初から不思議に思ってたんだけどさ、なんで穂琉三って奈落さんとすぐに仲良くなれたの?」
「それは……」
穂琉三は口を閉じ、続く言葉を口にしない。
愛六は何かあるなと思っていた。
それを探ろうと口を開いたところで、神妹境娘が教室に入ってきた。
「げっ、神妹じゃん」
愛六は一瞬嫌そうな表情を見せたが、気さくに手を振る。
神妹は一度まばたきをし、愛六と穂琉三へ視線を向ける。
「緊急事態が発生しました。黒薔薇山のとある学園にて、巨大な龍が出現しました。既に数名の生徒が死亡し、十星騎士団が現場へ向かっていますが、生徒を人質にとり、迂闊に攻め込めない状況です」
「何それ……? ってかこんな時間にモンスターが出現したってこと……!?」
「十星騎士団の見立てでは、出現した龍は黙示録の魔術により召喚されたものと推測しています」
「黙示録の……!?」
神妹の言葉を聞き、穂琉三は呆然とする。
「ところで、その学園ってどこ……?」
固唾を飲む穂琉三へ、神妹は淡々と告げる。
「場所は黒薔薇学園。報告によると、その龍は一人の女子生徒の指示に従い、動いているそうです」




