物語No.66『囚われの少女』
十三の山が連なる山脈地帯。
そこには異境山や百花山があり、その一つに黒薔薇山があった。
黒薔薇山の廃墟地帯は現在居住者はおらず、人から恐れられた地として恐怖されている。
そこに奈落魔宵はいた。
そばには、背中に星座が刻まれた白服を着た男が二人いた。
一人は両目は純白、両目の下には王冠マークがあり、耳には華麗な耳飾りをした金髪の男。
もう一人は青い髪をし、ネックレスのようのトライアングルをぶら下げている。
二人とも十星騎士団だった。
暗い廃墟の一室で、二人は奈落魔宵の監視を行っていた。
「異世界流しまであと四日か。面倒だしさっさと流そうぜ」
金髪の男が青髪の男に言う。
「上の決定に反するのは却下だ。さすがに殺されたくない」
「お前の洗脳でなんとかできねえのか」
「俺の洗脳は触れなきゃ発動しないって言っただろ。あんな化け物連中に触れるなんて奇跡が起きても無理だろ」
「まあな。ってかてっきりこいつの自首は洗脳魔法にかかったのかと思ったが、どういうわけで自首したんだ。てめえは」
金髪の男は後ろを見る。
彼の背後、そこには柱に鎖で縛られた少女がいた。
奈落魔宵は誇らしく微笑んだ。
♤♡♧♧
奈落魔宵は今でも思い出す。
自分が生まれた家での日々を。
生まれて間もなく、魔宵が夜泣きをする度に、父親は魔宵を殴った。それでも泣き止まない場合は風呂に沈め、呼吸を奪う。
母親は必死に止めようとするが、その度に母親は父親に殴られる。そんな日々が続き、魔宵が中学生になった頃、母親は亡くなった。
魔宵は宙に浮かぶ母を見て、ただ思った。
「知っていたよ。お母さんがそうしたいんだってことを」
魔宵にとって、それは特別驚くことじゃなかった。
むしろ自分もそうしたいと思っていた。
やがて母親の葬儀が行われ、父親一人で魔宵は育てられた。だが毎日父親からの暴行は続き、それでも魔宵は耐え続けた。
だって、
「どうせ死ねば一緒でしょ」
いざとなれば死ねばいい。
そう魔宵は思っていたから、父親からの暴行にだって耐えることができた。
やがて父親が家を出た。
家にはお金もなく、高価な物は全てなくなっていた。
しばらく経っても父親が帰ってくることはなかった。
魔宵は結局一人になった。
その後、魔宵は行き場を失い、死に場所を探していた。
そんな彼女の前に現れたのが、魔神零だった。
「君の目は死んでいる。もし君が望むなら、生きることに希望を持てる、そんな能力を授けてあげるよ」
彼女が選んだのは──
「私は力がほしい」
「良い目をするじゃないか」
魔宵の目は漆黒に染まっていた。
魔神は魔宵を歓迎した。
「さあ、ともに世界を終わらせよう」
そして魔宵は黒廻家と契約を交わし、黙示録の魔術を手にした。
そこで黒廻冥と接触したわけだが、魔宵にとって黒廻冥は母親のような存在だった。
冥は魔宵に魔法を教えた。
その後も魔宵が異世界からわざわざやって来て、魔宵のいる世界で家を見つけ、冥は家を魔法を使って手にした。
冥は魔宵の面倒を見続けた。
だからこそ、魔宵にとっては母親だった。
しかしそんな日々も長くは続かない。
花園での事件をきっかけに、魔宵と冥に容疑がかかった。
それによって冥は魔宵を突き放した。
魔宵は母親を失いたくはない。
そんなある日、魔宵は穂琉三の母親に出会った。
魔宵は問いかけた。
「母親は娘の成長を喜ぶものなのか」
それに穂琉三の母親は答える。
「もちろんだ」
だから魔宵は決めた。
魔宵は冥に喜んでもらいたいから。
彼女は成長したんだ。
踏み出せなかった一歩を踏み出した。
それはつまり、罪を引き受けること。
だから彼女は告げた。
「花園での事件は、私が引き起こしました」
そして少女は囚われた。




