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一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章4『魔法十家と黒い薔薇』編
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物語No.65『一国百の答え』

 ボクの正義はあの日、潰えたんだ。


 あの日、姉は異世界流しに遭った。

 でも仕方がない。

 姉は掟を破ったんだから。


 ボクはルールを破る人間が嫌いだ。

 だから、姉も……


 ボクの正義は正しかったのかな。

 今でも考えている。

 いや、とっくに答えは出ているんだ。


 ボクは正義なんていらない。

 ボクのそばには姉がいてほしかった。

 ボクがルールを信じたのは、理不尽に不幸になる未来から遠いと思ったからだ。

 でも、それは悪用もされる。

 全てを裁けるわけじゃない。

 ボクの姉はそのせいでいなくなった。


 だから、変わるべきなんだ。


 変わらなきゃ、大切な人を失ったあの日ままだ。

 またボクは同じことを繰り返してしまう。


 日向穂琉三。

 ボクもお前のように戦い続けるべきだったんだ。

 異世界に流された姉を救うために、あの男たちと。


 力がなければ……。

 部分的に間違っていたか。

 お前のように仲間がいれば、ボクも姉を救えたのかな。


 まだボクはやり直せる。

 まだ道はある。


 だからお姉ちゃん、待ってて。

 必ずお姉ちゃんに会いに行くから。



 ♤♡◇♧



 一国と穂琉三らとの戦いは終わった。

 一国はしばらく床に仰向けになり、空虚を眺めていた。

 やがて彼は答えを見つけた。


「なあ、日向」


 一国のそばには穂琉三、二月、夏恋、愛六がいる。

 既に穂琉三と二月は夏恋の支援魔法によって傷を治していた。


「何だ?」


「ボクも協力してやる」


「……え?」


「だから、ボクも奈落の救出に手を貸すって言ってんだ」


 驚いたのは穂琉三だけじゃなかった。

 二月も夏恋も、一国の言動の変化に驚いていた。


「どういうつもりだ」


「考えが変わったんだ」


「ねえ、君は言っていたよね。誰を信じようと、誰を守りたいと思おうと、全部無駄だって。君の過去に何があったの」


 穂琉三は見抜いていた。

 一国の抱える苦しみを。その涙を。


 一国はしばらく考え、重い口を開いた。


「ボクの姉は十星騎士団によって異世界流しに遭った」


 全員が驚愕する。


「姉は掟を破ったけど、その掟を伝えられていなかった。あの時、すごく辛かったんだ。苦しかったんだ。でも、どうしようもなかったから。あの時のボクは接続者じゃなかったから。だから、救えなかった」


 一国の口調からどっと後悔が伝わる。


「それなのに奈落を救おうとする日向を見て、嫌だったんだ。ボクは姉を救えなかった。なのにもし奈落が救われたら……、あの時のボクは何だったんだって…………、そう思ってしまうから……」


 一国の痛切な思いの吐露を見て、全員が一国に対しての敵意を失っていた。

 一国の敵意の意味を知ってしまったから。


「力がなければ世界は変えられない。それが嫌いだったから、ますます救おうとするのが嫌だったんだ。力が全てなんて……そんなの、残酷だ」


 一国の瞳からは涙が溢れる。


「でも、力を合わせれば、きっと……。ボクは今まで、他人が嫌いだった。ルールを守らない、悪を振りかざすだけの他人が嫌で嫌で仕方がなかった。だからこそ、見ようとしていなかったんだ。その中にも、正義を貫こうとしている者がいることを」


(本当は気づいていた。ずっと前から……。でも、気づかないようにしていた。見ないようにしていた。言い訳にしていた。でも、いい加減それを捨てるべき時が来たんだ。変わるべき時が来たんだ。救える人になりたいのなら)


「日向穂琉三、ボクは正義の味方になりたかったんだよ。ボクの正義は失くなった。けれど君には正義がある。だからボクは、君の味方になる」


「ありがとう。一国百」


 穂琉三は一国に手を差し出した。

 一国は一度手を引っ込めるも、穂琉三の手を掴む。


「奈落を救おう。みんなで力を合わせて」

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