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一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章4『魔法十家と黒い薔薇』編
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物語No.63『VS一国』

 対峙する一国百と二月(きさらぎ)銀。

 一国は王家魔法を解放し、膨大な魔力での大威力の魔法を放つ準備を整えた。

 二月は黒い瞳で一国を凝視する。


 二月は模倣魔法を習得している。

 模倣魔法で重要なことは魔法を見ること。

 その点において、二月は優れていた。


 二月はアイズ家と契約直後、魔眼が発現した。

 彼女の魔眼は魔力の流れを正確に捉え、発動しようとしている魔法を読み取ることができる。


『魔女の魔眼』


 その魔眼により、彼女は相手が魔法を発動する前に魔法のコピーが可能である。


 魔眼は捉えた。

 一国の魔力が魔法へ変換されるのを。


「『王雷(エクレシウス)』」


 魔法の出現先を二月は捉えていた。

 すぐさま後ろへ飛ぶ。

 直後、頭上から降る雷が先ほどまで二月が立っていた場所を焦がす。


「ちっ」


「『王雷(エクレシウス)』」


 一国の頭上に雷が出現し、降る。


「『王盾(イージウス)』」


 しかし一国の頭上には黄金の盾が出現し、雷を防いだ。


王家魔法(アルス)は王家が使っている時のみ真価を発揮する。お前がボクの魔法をコピーしようと、それは劣化版にしかならない」


 事実、一国と二月の『王雷』では明らかに一国の威力が勝っていた。


「『王雷(エクレシウス)』」


 再度、二月の頭上から雷が降る。

 二月は咄嗟に左へ回避するが、雷が地を這う軌道で曲がり、二月へ直撃した。

 全身を魔力で覆うことで威力を軽減したものの、完全に防ぎきることはできなかった。

 身体には痺れが走り、動きは鈍る。


「次だ。『王雷(エクレシウス)』」


 再び雷が二月を襲う。

 二月も同じく雷を放ち、雷同士をぶつけた。

 二月の放った雷は霧散し、威力は分散しながらも一国の雷は二月のそばに落ちた。


「模倣魔法は確かに脅威だ。でも王家魔法相手に模倣魔法は意味をなさない。どう足掻いてもそれは劣化版にしかならないからね」


 二月は拳に魔力を集中させ、身体が痺れながらも一国へ飛びかかる。

 動きは遅く、一国の魔力を纏った拳が二月を吹き飛ばす。


「模倣魔法は複数の魔法をコピーした時脅威足りうる。だが今のお前では微塵も脅威にはなり得ない」


 戦況は一国が優勢。


「そろそろ終わりにするよ」


 一国は特大の魔力を込めて魔法を放つ。


「『王雷(エクレシウス)』」


 今まで以上の特大の雷が二月へ降った。

 身体に電気が走り、敏捷性を損なっていた二月が回避することは不可能。


「──は!?」


 だが一国の背後に回り込んでいた二月の拳が一国を襲う。

 咄嗟に魔力で背中を覆ったものの、同じく魔力を纏った拳を受け、宙を舞って地面に転がる。


「どういうことだ。痺れているはずだろ」


 一国は驚いたが、すぐにからくりに気づく。


「そういうことか」


「助かったよ夏恋」


 夏恋は支援魔法を使える。

 彼女は二月に電気耐性、敏捷性向上の魔法を付与していた。そして二月はその魔法をコピーし、二重の強化を行った。


「先にお前から死んどくか」


 一国は夏恋の頭上から雷を降らせようとしていた。

 だが──


「っ!」


 起き上がった一国のすぐそばには、炎を纏った拳を強く握り締める穂琉三がいた。


「『火拳槌(カグヅチ)』」


 炎の拳が一国の腹を直撃する。

 その一撃は一国を軽々と吹き飛ばした。


「僕は奈落さんを助ける。その邪魔をするなよ」


 怒りの拳を受け、一国は地面に倒れたまま悶絶する。


(ふざけるな。奈落魔宵は罪人になったんだ。それを阻止しようだなんて……)


 一国は怒りに震えていた。

 全員が一国から放たれる狂おしいほどの殺意を感じた。

 鱗を剥ぐような戦慄が肌に伝わる。


「ここからは、全力で殺す」


「なんだ……!?」


 二月はその目で見ていた。

 一国の膨れ上がる感情とともに、増幅する魔力を。


「『王雷纏いチャージ・エクレシウス』」


 一国の全身を電気が覆う。

 電気は砂を弾きとばし、纏うだけで砂嵐を引き起こす。


 一国の肉体は電気により活性化する。


「王家の魔法を見せてやる」


 次の瞬間には三人は一国を捉えることができなくなっていた。

 素早い動きに翻弄され、気づけば二月の背後。


(私の魔眼でも魔力を追いきれな──)


 一国の手が二月の背中に触れる。

 直後、手を介して二月の全身を、身を引き裂くような電気が襲う。


「ああああああああ!!」


 二月は口から煙を吹いて倒れる。


「お前らも地獄行きだ」


 一国の目は穂琉三を捉える。

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