物語No.63『VS一国』
対峙する一国百と二月銀。
一国は王家魔法を解放し、膨大な魔力での大威力の魔法を放つ準備を整えた。
二月は黒い瞳で一国を凝視する。
二月は模倣魔法を習得している。
模倣魔法で重要なことは魔法を見ること。
その点において、二月は優れていた。
二月はアイズ家と契約直後、魔眼が発現した。
彼女の魔眼は魔力の流れを正確に捉え、発動しようとしている魔法を読み取ることができる。
『魔女の魔眼』
その魔眼により、彼女は相手が魔法を発動する前に魔法のコピーが可能である。
魔眼は捉えた。
一国の魔力が魔法へ変換されるのを。
「『王雷』」
魔法の出現先を二月は捉えていた。
すぐさま後ろへ飛ぶ。
直後、頭上から降る雷が先ほどまで二月が立っていた場所を焦がす。
「ちっ」
「『王雷』」
一国の頭上に雷が出現し、降る。
「『王盾』」
しかし一国の頭上には黄金の盾が出現し、雷を防いだ。
「王家魔法は王家が使っている時のみ真価を発揮する。お前がボクの魔法をコピーしようと、それは劣化版にしかならない」
事実、一国と二月の『王雷』では明らかに一国の威力が勝っていた。
「『王雷』」
再度、二月の頭上から雷が降る。
二月は咄嗟に左へ回避するが、雷が地を這う軌道で曲がり、二月へ直撃した。
全身を魔力で覆うことで威力を軽減したものの、完全に防ぎきることはできなかった。
身体には痺れが走り、動きは鈍る。
「次だ。『王雷』」
再び雷が二月を襲う。
二月も同じく雷を放ち、雷同士をぶつけた。
二月の放った雷は霧散し、威力は分散しながらも一国の雷は二月のそばに落ちた。
「模倣魔法は確かに脅威だ。でも王家魔法相手に模倣魔法は意味をなさない。どう足掻いてもそれは劣化版にしかならないからね」
二月は拳に魔力を集中させ、身体が痺れながらも一国へ飛びかかる。
動きは遅く、一国の魔力を纏った拳が二月を吹き飛ばす。
「模倣魔法は複数の魔法をコピーした時脅威足りうる。だが今のお前では微塵も脅威にはなり得ない」
戦況は一国が優勢。
「そろそろ終わりにするよ」
一国は特大の魔力を込めて魔法を放つ。
「『王雷』」
今まで以上の特大の雷が二月へ降った。
身体に電気が走り、敏捷性を損なっていた二月が回避することは不可能。
「──は!?」
だが一国の背後に回り込んでいた二月の拳が一国を襲う。
咄嗟に魔力で背中を覆ったものの、同じく魔力を纏った拳を受け、宙を舞って地面に転がる。
「どういうことだ。痺れているはずだろ」
一国は驚いたが、すぐにからくりに気づく。
「そういうことか」
「助かったよ夏恋」
夏恋は支援魔法を使える。
彼女は二月に電気耐性、敏捷性向上の魔法を付与していた。そして二月はその魔法をコピーし、二重の強化を行った。
「先にお前から死んどくか」
一国は夏恋の頭上から雷を降らせようとしていた。
だが──
「っ!」
起き上がった一国のすぐそばには、炎を纏った拳を強く握り締める穂琉三がいた。
「『火拳槌』」
炎の拳が一国の腹を直撃する。
その一撃は一国を軽々と吹き飛ばした。
「僕は奈落さんを助ける。その邪魔をするなよ」
怒りの拳を受け、一国は地面に倒れたまま悶絶する。
(ふざけるな。奈落魔宵は罪人になったんだ。それを阻止しようだなんて……)
一国は怒りに震えていた。
全員が一国から放たれる狂おしいほどの殺意を感じた。
鱗を剥ぐような戦慄が肌に伝わる。
「ここからは、全力で殺す」
「なんだ……!?」
二月はその目で見ていた。
一国の膨れ上がる感情とともに、増幅する魔力を。
「『王雷纏い』」
一国の全身を電気が覆う。
電気は砂を弾きとばし、纏うだけで砂嵐を引き起こす。
一国の肉体は電気により活性化する。
「王家の魔法を見せてやる」
次の瞬間には三人は一国を捉えることができなくなっていた。
素早い動きに翻弄され、気づけば二月の背後。
(私の魔眼でも魔力を追いきれな──)
一国の手が二月の背中に触れる。
直後、手を介して二月の全身を、身を引き裂くような電気が襲う。
「ああああああああ!!」
二月は口から煙を吹いて倒れる。
「お前らも地獄行きだ」
一国の目は穂琉三を捉える。




