物語No.60『奈落魔宵の処遇』
五月二十五日。
授業中の穂琉三はずっと空ばかりを見ていて、そんな穂琉三の違和感を愛六は感じ取っていた。
放課後、愛六は穂琉三のもとへ行く。
「ねえ穂琉三、何かあったの?」
「…………」
穂琉三は力なく机に上体を倒す。
「ねえ愛六、奈落さんがいなくなっちゃった」
穂琉三は目に涙を浮かべながら愛六に訴える。
「奈落さんって確か、黙示録の魔術の使い手だったね」
「……うん」
「いなくなったってことは、今は夜の異世界との接続は二人で戦ってるってこと?」
「……うん」
「そっか」
穂琉三は力なく倒れながらも、何とか返事をする。
「確か奈落さんは黒薔薇学園に通ってたっけ。一応あの学園に知り合いがいるから聞いてみる」
「……うん」
愛六は穂琉三の無気力感を見て、穂琉三にとっての奈落の重要さを理解した。
だが同時に疑問もある。
たった数日。
どうしてそんな期間で穂琉三は奈落を大切に思ったのだろうか。
愛六は気になりつつも、言葉にはせず、屋上へ行った。
屋上に行った愛六のそばには青い光球が浮かんでいる。
「ねえミナカ、少し気がかりなんだよね。神妹ってさ、黙示録の魔術の使い手二人を森の悪魔の容疑者と疑っていたでしょ。そして今回その容疑者が失踪した」
「何かしら関係はありそうですね」
「もしかして……」
「何かひらめいたのですか」
ミナカの問いかけに、愛六はしばらく黙ったまま考えていた。
「ミナカ、これはあくまでも私の推測なんだけどね──」
愛六は花園で奈落や黒廻を見た。
その場面だけで二人がどのような性格をしているかを多少なりとも知った。
だからこそ、彼女はある考えに至った。
♤♡◇♧
二十四時。
異境学園には現れた接続者は一国と穂琉三の二人。
稲荷は元気のない穂琉三を心配そうに見る。
「おいお前、たかが女一人いなくなったくらいでへこたれてんのか」
一国が煽るように穂琉三を見る。
「…………」
「はあ。無回答か。こりゃ駄目だな」
一国は呆れたようにため息を吐く。
「まあ仕方ないか。あの女にはもう会えないだろうからな」
「……は!?」
穂琉三は顔を上げ、飛び上がって一国に迫る。
「どういうことだ」
「は? 知らないのか? 奈落なら花園での事件の自首をして捕まった」
「奈落が……?」
穂琉三は動揺する。
(あの犯人は奈落ではない。つまりは冤罪……?)
穂琉三は頭の中で必死に考える。
なぜ奈落が捕まったのか。
「既に異世界裁判で判決が下った。奈落魔宵は意図的に異世界の存在を一般人に知らしめる行為を行い、また最悪の場合一般人の大量虐殺にも繋がりかねない行為を行った。そのため、奈落魔宵には次の刑が下ることになった」
一国は淡々と語る。
「五月三十日。奈落魔宵は異世界流しに処す」




