物語No.53『出会いと──』
魔神零が去った花園。
神妹境娘は集まった十一人の少年少女を見る。
「あなた方はまだまだ弱い。故に、この先の脅威に立ち向かえるように強くならなくてはいけません」
「そんなことは分かっています。だからって今すぐに強くなれるわけありません。あれはボクたちより長く生きたから、その分強い」
白髪の少年は魔神に手も足も出なかったことに苛立ちつつも、神妹への敬意を忘れずに答える。
「ええ。ただし個々の力は敵わなくとも、手を取り合えば対抗できる力となる」
「まさかここにいる奴らと手を組まなければいけないのですか。手を取り合うっていったって、ボクの足下にも及ばない奴らばかりです」
「あんただって魔神の足下にも及んでいなかったけどね」
「ちっ。うるせえな」
白髪の少年と模倣魔法の少女が睨み合う。
神妹は平然とその光景を見つめる。
周囲にいた少年少女は話に置いていかれていた。
「いずれにせよ、私の指示に従っていただきます」
「はい。そうしましょう」
「…………」
模倣魔法の少女は笑顔で返事をし、白髪の少年はやるせない気持ちを抱えながら沈黙する。
「それで、どうするんですか」
「私はあなた方に連携がとれるという強さを身につけてほしい。と同時に、強い者が弱い者を導いてもらいたい」
「なるほど。じゃあ私みたいな強い子が弱い子に魔法の使い方を教えるってことね」
模倣魔法の少女は神妹の意図を汲み取り、瞬時に説明した。
「これから私が伝える三人組でチームを組んでいただき、その三人でこの先異世界との戦いを行ってもらいます」
「そうなると全ての学園に今まで通り接続者が行けないわけだけど、そこはどうするの?」
「チームを組む者の学園に出現する扉を、一つの場所に集めます。そのため、最大三つの扉をチームで閉じることとなります」
「なるほど。まあ今まで通り一人一つ分の扉ってわけだけど、連携を取ったら楽だよねって話か」
模倣魔法の少女がボソッと呟く。
「ではこれより、チーム分けを行います」
神妹は十一人の少年少女にそれぞれチーム分けを伝えた。
一人足りないため、一つだけ二人のチームができる。
穂琉三がチームを組むことになった相手は、黙示録の魔術の奈落魔宵と王家魔法の一国だった。
「ちっ。お前かよ」
一国は穂琉三を見て怪訝な顔を浮かべる。
「この先、そのチームで異世界と戦ってください。当然、協力するのを忘れずに」
神妹はそう言った。
穂琉三は愛六へ目を向ける。
愛六のチームは模倣魔法の少女と支援魔法の人物だった。
愛六は既にチームの人とコミュニケーションをとり、交流を深めていた。
穂琉三も意を決して口を開く。
「あのー、自己紹介しませんか」
「しないな。ボクはもう帰る。後は二人で好きにやってろ」
そう言うと、一国は穂琉三と奈落に目を向けることなく花園を去ってしまった。
この場には二人が取り残されるだけ。
穂琉三は振り絞った勇気がかき消され、落ち込み気味に。
「あのー、奈落魔宵です。よろしくね。日向くん」
落ち込む穂琉三へ奈落が自己紹介をした。
「ぼ、僕は日向穂琉三。よろしくね」
日向もすかさず自己紹介をした。
しばらく沈黙が続く。
奈落はじっと日向を見つめる。
「ねえ、さっきはどうして私を庇ってくれたの?」
「似てたから」
「……え?」
「い、いや、なんでもない。なんとなく君がやってないと思ったから。だから思わず庇ったんだ」
「ありがとね。日向くん」
穂琉三は感じていた。
奈落という少女はまるで──
「ねえ日向くん、君はどれくらい魔法を使いこなせるの?」
「僕は基本的に魔法は精霊にやってもらってるかな。自分じゃまだ魔法を使えなくて……。でもなんとなく魔力の感覚が掴めてるから、精霊が拳に纏わせてくれた火を少しだけ操ることはできるんだ」
穂琉三は思わず早口で話した。
喋り終わった後でそのことに気付き、言い直そうとしたが、
「そっか。じゃあ私が魔力の感覚を教えてあげる」
奈落は穂琉三の手を不意に掴んだ。
手と手が触れ合い、穂琉三はドキドキする。
「ほら、感じるでしょ」
奈落は上目遣いで目線を送る。
穂琉三は奈落の目をじっと見れず、目を逸らしてしまう。
「あれ? 感じなかった? 私は今手に魔力を集中させてたんだけど」
「あ、えっと……、ごめん。集中してなかった」
「そ、そっか」
奈落は顔を赤らめる穂琉三を見て、自分も恥ずかしくなる。
異性の手に触れられた感触に、穂琉三はドキドキが止まらずにいた。
「ご、ごめん。次は集中するから」
穂琉三は深呼吸をし、今度は穂琉三から奈落の手に触れた。
「あ、まだ手に魔力を……」
不意の接触に奈落は思うように魔力を操れず、ただ互いの手が触れ合う。
そんな二人を遠巻きに見て、愛六は呟く。
「全く、何やってんだか」




