物語No.51『集う魔法使い/魔法十家』
五蝶は悪魔を討伐し、楓夏と再会した。やがて楓夏は消え、五蝶は眠るように意識を失った。
近くにいた穂琉三と愛六はすぐさま駆け寄る。
「やはり限界だったか」
「とはいえこれで悪魔は倒れた。あとはこの包囲を抜けるだけだけど」
愛六は自分らを囲む大量のモンスターを見る。
「てっかコイツらはどこから来たんだ。異世界へ繋がる扉はどこにもないのか」
穂琉三は周囲を見渡して、扉がないことに違和感を覚える。
本来モンスターは異世界と繋がる扉を通って現れる。
では目の前にいるモンスターはどこから現れたというのだろうか。
「とにかくモンスターを倒さなきゃここでみんな死んじゃうよ」
悪魔は倒された。
だが四方を囲むモンスターはまだ二百以上残っている。
圧倒的な数を前に、穂琉三と愛六は汗をかく。
「やるしかない。こんなところで死ぬわけにはいかない」
穂琉三は拳に炎を纏わせ、いざモンスターへ飛びかかろうとしていた。
「『王雷』」
突如何もない空から雷が出現し、地上にいた多くのモンスターを焼き払った。
雷は尚も継続し、全てのモンスターを焼き払うまで止まない。やがてモンスターを全て消し去ると、雷は消失した。
不意の出来事に穂琉三と愛六は言葉も出ず固まった。
そこへ一人の少年が姿を現した。
色素が抜け落ちたような白髪、目も色を奪われたように真っ白だった。
「君たちがフェリアの申し子か。随分と弱いんだね。それじゃあこの先モンスターと戦い続けるなんて到底不可能だ」
冷徹に、見下すような口調で言う少年。
穂琉三と同年代くらいだが、その威圧感は穂琉三を遥かに上回る。
「力がないなら異世界は諦めろ。お前らじゃ世界は守れない」
少年の言葉から、少なくとも自分と同じ接続者であることを穂琉三と愛六は悟った。
先ほどの雷も彼の仕業だと理解する。
「あなたが何者か知らないけど、異世界を諦めるなんてするわけない。それにこの先強くなっていけば良いんだ」
怖じ気づく穂琉三を背に、一歩踏み出した愛六が少年に臆することなく言い放つ。
「分かってないな。弱いくせに力を持つなよ。お前よりも才能を持つ者はいくらでもいる。そういう奴にその力を渡した方が賢明だと思うけど?」
「初対面のお前に私の才能がはかれるのか」
「できるさ。ボクはキングだぞ」
「キング? 裸の王様か?」
「不愉快だ」
少年は拳を握ると、手には電気が纏われる。
愛六は戦闘になると察知し、即座にビー玉サイズの水玉を少年の眼前に出現させた。
愛六と少年の距離は1メートルほど離れている。
少年が一歩を踏み出した瞬間、拳は愛六に届いた。
「……はっ?」
次の瞬間、同じく拳に電気を纏わせた金髪の少女が少年の拳を掴んでいた。少女が拳を掴んでいなければ愛六に直撃していた。
「アイズ、邪魔だ」
「今は魔法使い同士で争っている場合じゃないでしょ」
少年は少女へ鋭い視線を向けるが、少女は一切動じず少年へ瞳を返した。
「そそそ、その通りだと思う……。今回の騒動を止めてくれたのは……、か……、彼らなわけだし、そんな彼らに拳を振るうのは、ままま、間違ってると思う」
分厚い本を抱き抱える少年が、なけなしの勇気を出すようにして発言した。
気づけば彼だけでなく、他にも数名の人物がこの場に集っていた。
集う彼らを見て、少年は拳を下ろした。
それに呼応し、少女も拳を収める。
やがて少女の拳に纏われた電気が霧散するとともに、金髪は黒髪に変貌する。
「揃ったね。魔法十家に選ばれた者が」
少年は集まった少年少女を一人ずつ見ていく。
「にしてもボクらを集めたってことは、やはり今回の一件が意図的なものであるようだ。そしてその者の始末をするを行うつもりか」
少年は冷静に分析する。
この場には十一人の少年少女がいる。
「私たちは当主に呼ばれたから来たわけだけど、もしかしてこの中にいるのかな。それとも他の有象無象の氏族の中にいるとか?」
「いずれにせよ、ボクらを集めさせた者が出てこない限り話は進まないわけだけど……」
少年は気配を感じ取り、眠っている五蝶嵐へ視線を向けた。
「……っ!?」
少年は五蝶嵐のそばに立つ人物を見て、反射的に膝をついて敬意を示した。
他の少年少女も同様に膝をつき敬意を示した。
穂琉三、愛六を除き。
穂琉三と愛六は他の少年少女がその人物に敬意を示すのを見て、むしろ困惑した。
少年は頭を下げ、彼女の名を口にする。
「まさかあなた様が来られるとは。神妹様」
穂琉三は神妹境娘が敬意を示されるのを見て、神妹という者が普通の学生ではないことを理解する。
「やっぱりあんた、いろいろ隠してたってわけね」
愛六も理解し、神妹の正体を考えていた。
「そろそろあなたたちにも詳細を話しましょう。この世界は常に様々な場所で異世界と接続します。それらを管理し、守護すると同時、選別のために利用している」
「選別?」
「異世界には様々な魔法家が存在します。百以上存在するそれら魔法家から、たった十、選ばれし魔法家を決める。彼らは魔法十家と呼ばれ、無数の魔法家の上に立つ」
「なるほどね……」
「ではどのようにして決めるか。それはこの世界で生きる者に魔法を与え、より多く異世界の脅威を排除した者を選んだ十の魔法家を魔法十家とする」
「俺たちも魔法家から選ばれたってことか」
「ええ。現在魔法十家の一つであるフェリア家からあなた方は選ばれました」
穂琉三はその答えを聞き、微かに喜びを露にする。
「そしてこの場に集まっている十一人の少年少女は皆魔法十家から選ばれた者達です」
それを理解し、穂琉三は集まった子らを見る。
自分以外にもたくさんの魔法使いがいることに驚く穂琉三。
対して愛六は先ほどの白髪の少年の一件もあり、敵意を向けている。
「魔法十家はあらゆる魔法家の代表であり、誇りでなくてはいけません。
王家魔法を司るアルス家。
魔導書魔法を司るグリモワール家。
精霊魔法を司るフェリア家。
模倣魔法を司るアイズ家。
条件魔法を司るアイエフ家。
詠唱魔法を司るアリア家。
支援魔法を司るヒーリング家。
魔力操作を卓越させたアタナシア家。
召喚魔法を司るラストリゾート家。
黙示録の魔術を司る黒廻家。
魔法家全体の象徴であるこの十の魔法家の中に裏切り者がいます」
「裏切り者!?」
一人が驚き、聞き返す。
「これより、その裏切り者への処罰を下します」




