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一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章1『日向穂琉三の葛藤』編
21/110

物語No.20『いつか君に会った日のため』

 僕は正式に不思議写真同好会に入部した。

 三浦さんが転校したことで部員は撮鳥さんと僕の二人になった。

 部長はそのまま撮鳥さん、副部長は空席、僕は部員として入部した。


「いつか戻ってくると良いね」


「だね」


 撮鳥さんは未来に希望を馳せる。

 いずれ三浦さんが帰ってくることを願って。


「そういえば日向って三浦のこと好きだったんだよね」


「……う、うん。まあ……」


 さすがに顔を見て言うことはできず、伏し目がちに答える。


「気持ち、伝えられると良いね」


「……うん」


 伝える機会はあった。だが伝えられなかった。

 今度会った時伝えられるように、勇気がほしい。


「ねえ撮鳥さん、告白したことってある?」


「わ、私!? 私はないかな。ってかまだ恋をしたことがないよ」


 撮鳥さんは照れながらも答えてくれた。


「でも告白ってのは勇気のいることだから、一回や二回失敗したくらいで落ち込むことはないと思うよ。明日の自分は今日の自分より勇気のパラメーターが強化されてるかもしれないからね」


「なるほど。確かに。成長すればいいもんね」


 僕は真摯に受け止める。

 また三浦さんに会う時までに勇気のパラメーターを上げておかなければ。


「勇気ってどうやったら強化できるのかな」


「挑戦だよ」


 挑戦か……。

 非常に苦手な分野だ。


 僕が難しい顔をしていると、撮鳥さんは指を立てる。


「些細なことで良いんだよ。授業中に発表した、とか。落とし物を届けた、とか。そういう行為の積み重ねが自信に繋がって、それが勇気になるよ」


「僕にもできそう……」


「行動あるのみだよ。すぐに三浦に会うかもしれないんだし」


 確かにそうだ。

 もしすぐに会えたなら、その時僕は告白できないだろう。

 今の僕では告白する勇気のパラメーターは到達していない。

 撮鳥さんの言う通り、行動あるのみだ。


「よし。今日からでもやってみる」


「ファイト!」


 そっと撮鳥さんに背中を叩かれる。

 少しだけ勇気を分けてもらえた気がした。



 ♤



 部活も終わり、撮鳥さんと別れ、帰路についていた。途中で神社にお詣りでもしようと思い、いつもランニングをしている森の中へ入っていく。

 森には神社がひっそりとあり、まるで神社が神隠しにでも遭っているような空気感だった。


 鳥居をくぐると、二匹の狐の像が迎えてくれる。

 その間を通り、賽銭箱へ。

 自ずと足は止まる。

 賽銭箱の前に見知らぬ少女が立っていた。


 巫女の服を着ており、よく見ると腰から狐の尻尾のようなものが生えている。茶褐色の髪からは狐耳が生えている。耳も尻尾も時折動いている。


 僕が固まっていると、彼女は僕に気付き、振り返る。

 しばらく目が合う。


「お前、私が見えるのか?」


「……うん」


 少女は驚いた様子で、だが声は元気溌剌に問う。

 この少女は一体……。


「そうか。お前が例の二人の接続者の一人なのだな」


「……っ!?」


 接続者だとバレている!?

 尚更この少女は何者だ。


「私は()()()から助っ人を頼まれたのだ。この先、この学園がモンスターの手から守られるように」


 少女は胸を張り、告げる。


「私は稲荷。今宵からお前らの助っ人をしてやるのだ」


あとがき


こんにちは。総督琉です。


これにてこの物語に一旦区切りをつけることができました。

これまで読んでいただきありがとうございます。

第一章はまだ続きます。

次は瀧戸愛六がメインの話となる予定です。

その間にEX物語を挟みます。


この物語はタイトルの通り、一人一人に物語があります。

一人一人の登場人物に着目しながら、世界の真実に迫っていく物語です。


ここまでの物語が面白かったと思ったら、是非感想など送っていただけると嬉しいです。

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