物語No.20『いつか君に会った日のため』
僕は正式に不思議写真同好会に入部した。
三浦さんが転校したことで部員は撮鳥さんと僕の二人になった。
部長はそのまま撮鳥さん、副部長は空席、僕は部員として入部した。
「いつか戻ってくると良いね」
「だね」
撮鳥さんは未来に希望を馳せる。
いずれ三浦さんが帰ってくることを願って。
「そういえば日向って三浦のこと好きだったんだよね」
「……う、うん。まあ……」
さすがに顔を見て言うことはできず、伏し目がちに答える。
「気持ち、伝えられると良いね」
「……うん」
伝える機会はあった。だが伝えられなかった。
今度会った時伝えられるように、勇気がほしい。
「ねえ撮鳥さん、告白したことってある?」
「わ、私!? 私はないかな。ってかまだ恋をしたことがないよ」
撮鳥さんは照れながらも答えてくれた。
「でも告白ってのは勇気のいることだから、一回や二回失敗したくらいで落ち込むことはないと思うよ。明日の自分は今日の自分より勇気のパラメーターが強化されてるかもしれないからね」
「なるほど。確かに。成長すればいいもんね」
僕は真摯に受け止める。
また三浦さんに会う時までに勇気のパラメーターを上げておかなければ。
「勇気ってどうやったら強化できるのかな」
「挑戦だよ」
挑戦か……。
非常に苦手な分野だ。
僕が難しい顔をしていると、撮鳥さんは指を立てる。
「些細なことで良いんだよ。授業中に発表した、とか。落とし物を届けた、とか。そういう行為の積み重ねが自信に繋がって、それが勇気になるよ」
「僕にもできそう……」
「行動あるのみだよ。すぐに三浦に会うかもしれないんだし」
確かにそうだ。
もしすぐに会えたなら、その時僕は告白できないだろう。
今の僕では告白する勇気のパラメーターは到達していない。
撮鳥さんの言う通り、行動あるのみだ。
「よし。今日からでもやってみる」
「ファイト!」
そっと撮鳥さんに背中を叩かれる。
少しだけ勇気を分けてもらえた気がした。
♤
部活も終わり、撮鳥さんと別れ、帰路についていた。途中で神社にお詣りでもしようと思い、いつもランニングをしている森の中へ入っていく。
森には神社がひっそりとあり、まるで神社が神隠しにでも遭っているような空気感だった。
鳥居をくぐると、二匹の狐の像が迎えてくれる。
その間を通り、賽銭箱へ。
自ずと足は止まる。
賽銭箱の前に見知らぬ少女が立っていた。
巫女の服を着ており、よく見ると腰から狐の尻尾のようなものが生えている。茶褐色の髪からは狐耳が生えている。耳も尻尾も時折動いている。
僕が固まっていると、彼女は僕に気付き、振り返る。
しばらく目が合う。
「お前、私が見えるのか?」
「……うん」
少女は驚いた様子で、だが声は元気溌剌に問う。
この少女は一体……。
「そうか。お前が例の二人の接続者の一人なのだな」
「……っ!?」
接続者だとバレている!?
尚更この少女は何者だ。
「私はある方から助っ人を頼まれたのだ。この先、この学園がモンスターの手から守られるように」
少女は胸を張り、告げる。
「私は稲荷。今宵からお前らの助っ人をしてやるのだ」
あとがき
こんにちは。総督琉です。
これにてこの物語に一旦区切りをつけることができました。
これまで読んでいただきありがとうございます。
第一章はまだ続きます。
次は瀧戸愛六がメインの話となる予定です。
その間にEX物語を挟みます。
この物語はタイトルの通り、一人一人に物語があります。
一人一人の登場人物に着目しながら、世界の真実に迫っていく物語です。
ここまでの物語が面白かったと思ったら、是非感想など送っていただけると嬉しいです。




