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一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章5『憎しみの黒薔薇』編
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物語No.95『強くなった接続者』

 六月二日。

 真夜中の異境学園で、穂琉三と愛六は戦闘を繰り広げていた。


「『火拳槌(カグヅチ)』」


「『水槽の君』」


 炎の拳がモンスターを吹き飛ばし、水玉が相手の顔を閉じ込める。

 次々とモンスターが倒されていく。


 それを稲荷と神妹はじっと観察していた。


「明らかに強くなったのだ」


「はい。さすがは未来の希望ある接続者ですね」


 穂琉三と愛六は四月に比べて明らかに強くなっていた。

 モンスター一体を倒すことのさえ苦戦していた彼らは、今ではどんなモンスターに対しても柔軟な対応を見せている。

 たとえ相性が悪い相手が現れたのなら、即座に引き下がり、仲間に戦闘を託す。

 それでも倒せないのなら、二人で協力して敵を倒す。


 二人は扉の近くへたどり着く。

 だが扉のそばには二足歩行の牛がいた。

 牛の全身は牛毛に覆われ、指先には鋭い爪がついていた。


「『水槽の君』」


 愛六は牛の背後に水玉を出現させ、そのまま牛の頭を覆った。

 しかし牛は後頭部に水玉が触れた瞬間に前進し、鋭い爪を愛六へ向けて振るった。


 二人は左右へ飛び、牛の魔物を挟み込んだ。


 愛六は拳に魔力を集中させ、穂琉三は拳に火炎を宿す。


「『魔拳』」

「『火拳槌(カグヅチ)』」


 両脇から拳が牛の魔物へ炸裂した。

 しかし牛の魔物は怯むことなく、腕を乱雑に振るって愛六と穂琉三の腕に傷をつけた。


「毛皮が想像以上に硬い」


「僕の炎も完全には通らなかった」


 二人は再び牛の魔物から距離をとる。


「『水槽の君』であれば否応なく奴は倒せる。だが奴の素早さはそれを容易に回避することができる」


「となると、ひとまず奴の動きを封じる必要があるな」


「封じるってどうやるの? 別の方法を模索するのもありじゃない?」


「まあ攻撃が通りにくいってだけで、通らないわけじゃないからね」


 穂琉三は自身が拳を打ちつけた部位を見る。

 牛の魔物の脇腹には一部だけ黒く変色した場所がある。


 微かに穂琉三が敵を見据える中、遠くから見つめる神妹は呟く。


「ねえ稲荷、二年後の彼を想像できる?」


「うーん、難しいのだ。だって成長スピードが早くて、どれだけ強くなるのか未知数なのだ」


「ええ、確かにそうですね。日向穂琉三だけじゃない。瀧戸愛六、一国百、二月銀、その他にも多くの接続者がいるこの世界で、彼らが今どれほどの"ランキング"にいるか、そろそろ伝えてもいいでしょう」


 神妹の視線の先。

 そこでは穂琉三が拳にありったけの魔力を集めていた。


「未だ魔弾は習得できていない。だが拳サイズであれば、そこへ魔力を集中させることだってできる」


 拳に纏った魔力全てを使い、炎へ変換する。

 穂琉三の拳を燃え盛る炎が覆う。


 牛の魔物が地面を蹴り、勢いよく穂琉三へ突撃する。

 その素早さに穂琉三が対応できるかは賭け。

 穂琉三へ爪が届く寸前、水玉が牛の魔物へ覆い被さった。

 咄嗟のことに牛の腕が大きく空振りし、空いた胴体へ穂琉三は力強く拳を叩きつけた。


「『火拳槌(カグヅチ)』!」


 牛の魔物を覆う毛皮も黒く燃え、毛の隙間から炎が魔物の身体を焼く。

 牛の魔物が嗚咽を漏らして膝をつくが、その間も水玉が覆い続けていた。

 重い一撃を受けた牛の魔物はすぐには動けず、水玉の中でもがくように溺れた。


 牛の魔物が絶命の後、穂琉三が鍵を扉へ差し込んだ。


 やがて学園中のモンスターが全て光の柱に貫かれて消滅した。

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