物語No.94『クリスタルの推理』
異世界にて。
クリスタル・アルスは自身の書斎で考え事をしていた。
そこへアルス家に仕えるメイドが入って、そばに置かれたカップに紅茶を注ぐ。
「今日もまた考え事ですか」
メイドはクリスタルへそう問いかける。
「少し、気になることがあってな」
クリスタルはカップを手に取り、紅茶を一口飲む。
「最近の黒廻家に関してですか」
「ああ。その事でずっと考えていることがあったんだ」
クリスタルはカップを置き、口を開く。
「奈落魔宵に聞いたところ、黙示録の魔術に関する書があるそうだ。向こうの世界で黒廻冥が住居としていた場所を捜索したが、黙示録の魔術に関する書物は見つからなかった。彼女は未だ口を開かないが、恐らくは魔神が隠し持っているのだろう」
クリスタルは既に調査を行っていた。
黒廻冥が確実に魔神の協力者であると判明し、それ以降黒廻冥の足跡を調べていった。
「その書を隠した理由は黙示録の魔術を知られたくなかったからだろう。ではなぜ知られたくなかったのか」
クリスタルは既にある結論に至っていた。
「今回の事件で出現した龍は、恐らくは黙示録の魔術によるもの。奈落魔宵はそう言っていた。そして以前起こった花園での事件、あの少女も黙示録の魔術の悪魔と契約していた。そのことから考えるに、魔神が引き起こそうとしていることは──」
そこから導き出される結論はたった一つ。
「魔神は黙示録の魔術の悪魔全てを契約させ、それらを使って今まで以上のことを引き起こそうとしている」
クリスタルは今の結論がほぼ百パーセント魔神の狙いであると確信していた。
「随分と物騒なことを魔神は考えているのですね。後々この世界にも何かを仕掛けるのではないかと不安です」
「その可能性も十分あるだろうな。だが向こうの世界とは違い、この世界は完全な魔法社会。奴が何を仕掛けようと、この世界中にいる魔法使いが奴を逃すことはないだろう」
「だから魔神はこの世界へは来ず、向こうの世界で計画を起こそうとしているのですね」
「我が弟、シュヴァルも向こうの世界へ行かなければ殺されることはなかった」
「シュヴァル様……」
メイドは悲しそうにシュヴァルの名を呼ぶ。
「そういえばお前は、元々シュヴァルの専属だったな」
「……はい」
「シュヴァルはよく悪巧みをしていて、その度にお前が注意してくれていたっけ。懐かしいな。もうあれが見れなくなると思うと」
クリスタルはかつての光景を思い出していた。
「必ずシュヴァルの仇は討ってやる。私は必ず魔神を殺す」
クリスタルの決意は固く。
やがて相対するその日まで。




