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一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章5『憎しみの黒薔薇』編
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物語No.93『間もなく闇』

 六月二日。

 黒薔薇学園での騒動後、穂琉三にはずっと気がかりなことがあった。


「ねえ奈落さん」


「…………」


「えっと……奈落さん?」


「……ん? あ! ごめん。ボーッとしてた」


 奈落さんは驚いて穂琉三に身体を向ける。


 穂琉三の部屋で、机一つ挟んで奈落さんを見る穂琉三。

 奈落さんの様子は明らかにおかしかった。


 穂琉三はなんとなく予想がついていた。

 その原因が魔鍋綺羅であることを。


 だが穂琉三はそれを聞けずにいた。

 なんとなく、それが聞いてはいけないことだと感じていた。


「もし困ったことがあったらなんでも相談してね」


 彼女から打ち明けてくれることを待つしかない。


 しかし奈落には打ち明けられない理由があった。


 夜、彼女はいつものように黒薔薇学園へ向かい、異世界との接続を待っていた。

 既に三人一組での共闘は終わり、再び一人での学園戦闘が開始していた。


 奈落のそばには黒い光球が浮かんでいる。


「ねえミタマ、私、今黒い心を持っているんだ」


 奈落は胸に触れる。


「なんとなくだよ、この心はこれ以上育てちゃいけないと思うんだ」


「なら日向穂琉三に相談でもすればいいんじゃねえか」


「駄目だよ。だってこの心は、きっと周りをも黒く染めてしまうから」


「早めの相談なら大丈夫だろ」


「そうだね……。でも一番の理由は、私が日向くんにこんな心を持っていることを知られたくないから……かな」


 奈落魔宵の中には闇がある。


「でもさ、ミタマだけは私の黒い心も知っていてね。もし私が闇に落ちた時、助けてほしいから」


「それこそ日向穂琉三の方が良いだろ」


「……そうだね」


 奈落は遠くを見つめる。


 間もなく学園は異世界と接続する。

 多くのモンスターが学園中に跋扈する。


「あの日以来、私は一度もディアボロスを召喚していない。でもなんでだろう。今日だけは少し、冒険したくなっちゃった」


 奈落は手を組み、祈る。

 やがて彼女が召喚した悪魔は──


「お願い。〈闇龍の悪魔(ディアボロス)〉」


 闇の悪魔が学園で咆哮する。


 その轟きに、少女はうっすらと微笑を浮かべて。

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