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第七話

 一つ深呼吸をしてからドアをノックする。


「ジェーンはいる?」


 夕方にジェーンの部屋を訪ねると、ジェーンは私の訪問にたいそう驚いたようだった。


「ローズ様!? どうして私の部屋が分かったのですか?」


「管理人に聞いただけよ」


 普通に聞いた場合に管理人が生徒の部屋番号を教えてくれるのかは分からない。

 しかしナッシュが、公爵が管理人に金を握らせている、と言っていた。

 それなら私のお願いであれば聞き入れてもらえると考えたのだ。

 思った通り、管理人は簡単にジェーンの部屋番号を教えてくれた。


 あまりにもプライバシーが保護されていないため不安になったが、今は都合が良いと思っておくことにした。

 そんなことよりも今考えるべきは、ジェーンの安全だ。


「ねえジェーン。私の部屋に泊まりに来ない?」


「ローズ様のお部屋に!? 私が!?」


「そうに決まっているじゃない。あなたの部屋にあなた以外を誘いには来ないわ。どうかしら?」


 どうして私は乙女ゲームの世界で女の子を口説いているのだろうと思いつつも、全力で口説きにかかる。

 なにせジェーンの命がかかっているのだ。


「友だち同士はお泊まり会をするものだと聞いたわ。だから私たちもやってみましょう。だって私たち、お友だちでしょう?」


「私とローズ様がお友だち……?」


 ジェーンは信じられない言葉を聞いたと言わんばかりに目を白黒させていた。

 先程ジェーンは、私が高貴過ぎるから地面に這いつくばって中和するなどとわけの分からないことを言っていた。

 そんなジェーンが果たして私の部屋に来てくれるだろうか。

 来てくれないと、とても困るのだが。


「ありがたいお言葉ですが、私にはまだ刺激が強すぎます。ローズ様と、お、お、お泊まり会だなんて!」


 やっぱり駄目だったか。

 でも想定内。作戦変更。次は泣き落としだ。


「実は私、お友だちができたことがないの。だからもしお友だちが出来たらお泊まり会をしようってずっと夢見ていたのよ。ねえジェーン、どうしても駄目かしら。私をお友だちにはしたくないかしら?」


 俯きながら鼻をすすってみせる。

 咄嗟に涙を流せるほどの演技力は持ち合わせていないから、目は目元に手を当てて隠した。


 さあ、どうだ。

 ローズのような美人に泣き落としをされて落ちない人間がいるだろうか。いやいない。

 少なくとも私なら落ちる。

 瞬きする間に落ちる。


「うっ……ローズ様、お顔をお上げください。お泊まり会、お泊まり会、は、ですね……」


 ジェーンも例に漏れず美人の涙に弱いタイプだったらしく、心がお泊まり会に傾いているようだった。

よし、あと一押し。


「ジェーンは私のお友だち、よね?」


 涙までは出なかったものの潤んだ瞳で上目使いをしつつ、可愛らしく首を傾けてみた。


「ぐふっ!?」


 妙な声を上げながら、ジェーンが崩れ落ちた。

 どうやら私は、どの攻略相手よりも先にジェーンを攻略してしまったようだ。



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