○≧≫8≪≦● 【この状況を受け入れる】
≈≈≈
≈≈≈
オレたちは、もう一度ベッドと床の上にそれぞれ座り直して、改めて紡の身に起こった現象について検証してみることにした。
ベッドに腰かけ腕を組みスカートのまま半跏趺坐の紡に、花柄カーペットに胡座をかき腕を組んだオレが話しかける。
「……『きっかけ』というか、透明になる条件は両手のキツネさんでチュー?」
オレの口から『チュー』という言葉を聞いて紡が露骨にイヤそうな顔をする。
オレだって、こんな事件に巻き込まれなければ一生言わない言葉だ。『両手のキツネさんでチュー』なんて。
「そうね。もっかいやってみるわね」
そう言うと、紡は躊躇いなく両手で作ったキツネさんをチューさせた。
オレももうすでに『両手のキツネさんでチュー』を当たり前のひとつの表現として受け入れつつある。
両手のキツネさんをチューさせた途端に、またしても紡はオレの目の前から忽然と姿を消した。
「やっぱり『コレ』がきっかけで間違いないみたいね」
この現象によって自らに降りかかる『かもしれない』リスクとか全く考えずに紡は、オレの目の前で消えたり出現したりを繰り返す。
この現象に、オーラとかMPとか魔素とかの消費はないのだろうか?
どうやら、両手で作った『キツネさん』を『チューさせている間だけ』紡は透明になれるらしい。そして、左右の『キツネさん』を離せば透明化が解ける。
このやり方で透明になる原理はオレにはさっぱりだが、こいつ(紡)の身にならなにが起きても不思議ではない、とオレは思った。なにせ、幼なじみの男の部屋に自分の部屋から屋根伝いで来るような女なのだ。むしろ『こいつ(紡)には、いつか何かが起こるのでは?』とすらオレは考えていた。
「コレって考えようによっては便利なのかも」
と自分の身に降りかかった理不尽な運命を全く悲観せず、紡は早くも受け入れつつある。ほんとに幼なじみ(紡)のこういうところは歴史上の偉人並だ、とオレは思う。
オレにこの現象を見せたのも、おそらく『これ見せたら健太郎がビックリするだろうなぁ』くらいの気持ちが大きかったのではなかろうか。
いや、オレにはこの状況をすでに受け入れてるおまえ(紡)の方がびっくりだわ。
…To Be Continued.⇒9
≈≈≈
≈≈≈