○≧≫5≪≦● 【お約束とかフラグとかを回収して周る業者かなにか】
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突然バチンッ!という凄まじい破裂音がして、オレの左頬に今までの人生で食らったことのないほどの衝撃が炸裂した。
『顔の横のなんにもない空間がすごい音とともに突然破裂し、弾け飛んだ』。
そんなふうにしか、オレの主観には感じられなかった。
全く予期せぬ方向からの衝撃を受けたオレは、胡座をかいたまま上半身を右に傾けて右手を床に着ける。そして、フローリングの上に敷かれている花柄のカーペットを見る。
『紡の趣味じゃないから親の趣味かな?』
そんなどうでもいいようなことが、パチパチと光が明滅しているオレの頭の中に勝手に浮かんできた。
「……えっ?」
オレは胡座をかいたまま傾いた自分の身体を右手一本で支えながら、左手で自分の左頬を抑えて顔を正面に向ける。オレの目の前には紡がいた。紡は、消えた時と同じく空間から突然出現したとしかオレには見えなかった。
紡は腰かけていたベッドから立ち上がって、オレに向かって平手打ちを打ち終わったような姿勢で、はあはあと肩で息をしている。
どうやら、さっきの衝撃と破裂音はこいつの平手打ちらしい。
そして突然、紡の口から叫びが迸り出た。
「……ッ!こッこのドスケベ変態がぁ!」
『頭痛が痛い』みたいな表現でオレを罵倒した後で紡は、はぁはぁと息を荒げながら自分で自分の躰を抱きしめる。
さらに紡はオレに対する罵倒を続ける。
「おまえはアレか?お約束とかフラグとかを回収して周る業者かなにかなのか?おまえの目の前で忽然と姿を消した幼なじみは手を伸ばせばまだおまえの目の前にいるに決まっとるやろがい!」
無茶苦茶な理屈を吐きながら、紡はオレを怒鳴りつける。
でも言いたいことは分かるし、オレが紡になにをしてしまったのかも即座に理解した。
「……ごめん」
両手で自分の肩を抱きしめて真っ赤な顔で怒る紡に、横座りして痛む左頬を抑えているオレは素直に謝った。
…To Be Continued.⇒6
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